竜崎とコンビニ



今日は松田と当直。
私の背後にある時計が、かちりと動いて、午前二時半になろうとしている。
当直といっても、やることがない日は本当に暇だ。

「松田さあん、何やってるんですか?」
「え?一応、書類整理…だけど」
「ほうほう」
つまりはやることがないんだ。
私もそうだったから、お茶でも入れようと席をたった。

給湯室に入っていつものお茶の葉を探すが、どうやら切れてしまったらしく見当たらない。私はとってもルイボスな気分なのに。

「竜崎」
ひょいと顔をだして向こうにいるボスを仰げば、いつもどおりの隈の深いもやしが振り向いた。
「どうかしましたか」
「ちょっとコンビニ行ってきて良いですか?お茶、切らしちゃって」
どうぞ、という竜崎の声に被せて、松田がぼくも玄米茶!と叫んできた。


上着とマフラーを引っ掛けて、本部の外に出る。
此処は廊下までもが暖かい。運営費とか大丈夫なのかな、と毎回心配になってしまうが、そんなことは心配しない竜崎なんだろう。
窓の外を見ながらそう考えていると、背後で再びドアが閉まる音がした。

「…、竜崎?」
私に続いて出てきたのは、いつもの格好のままの竜崎だった。辛うじてスニーカは履いている。
「私も一緒に行きます」
「え。寒くないですか、それ」
「大丈夫です」
本人が大丈夫と言うなら大丈夫なんだろう。
私は苦笑いで頷いた。


歩いて三分もかからない最寄りのコンビニに入る頃には、私の両手は暖かいものを欲しがっていた。

「っはあ、肉まん食べよ肉まん、っげえ、」
あったか〜いのルイボスティーと玄米茶を引っ掴んでレジに並ぼうとしたところ、コートの襟を後ろから引っ張られて変な声が出た。
当然その犯人は竜崎で。
振り向けば、事もあろうに、アイスコーナーに佇んでいる。

「お勧め、ありませんか」
「竜崎、アイス食べるんですか…」
「ずっと部屋にいたので、少しのぼせて」
正気かこいつ、と思ったが半分くらい納得をしたので、私は迷わず水色のアイスに手を伸ばした。
「じゃあ、はい。がりがりくんです」
「…食欲減退色ですが」
「大丈夫です!」
もっとこう、クリーム的なもの…という目で見られたが、人にお勧めを訊いておいて、批難もなにもないだろう。にかっと笑ってがりがりくんを一つ摘まんで、レジに向かった。



外に出て歩くと近くに公園があったので、そこで食べていくことになった。

「あー肉まん美味しい幸せー」
「…なるほど、悪くないです」
隣のブランコがゆらゆら揺れて、小さくがりがりくんを褒める声が聞こえた。
「美味しいですよね!」
負けじとブランコを漕いで横を向けば、竜崎はあの座り方でアイスを咥えていた。ついでにとっても寒そう。そう言えば竜崎はこんな格好だった。なんで、選りによってこんなところで休んじゃったんだろう。
「…竜崎、帰ります?」
「何故ですか?」
「だって、寒いでしょう?」
「寒いんですか?」
「私は大丈夫ですけど…」
「ならまだ居ましょう」

さすがにその格好で外にいるのはまずいんじゃ、と反論すれば、アイスを食べる手がぴたりと止まって、彼はこちらを向いた。
「本部に帰れば邪魔な人間がいますから」

そういった竜崎は、いつもと違う笑顔を見せたかと思うと、また普段のかえる顔でがりがりくんに熱中してしまった。
それってどういう意味、という言葉はついぞ出せず、さっきより少しだけ暖まった身体にルイボスティーを流し込んだ。













prev next



-Suichu Moratorium-