なるほどくんとコンビニ


 
「やっほーみなさん!って、あれ?」

お天気最高の昼下がり、紙袋二つ持って事務所を訪ねてみれば、なるほどくんだけが難しそうな顔をして法廷資料とにらめっこしていた。

「あ、久しぶり」
「久しぶり…真宵ちゃんは?」 
「ああ、いま、里に帰っちゃってるんだ」
「そうなんだあ。寂しいね」
「静かで困るよ」

真宵ちゃんがいないとなると、彼女の喜んだ顔が見えないけど致し方ない。私は手にした紙袋の一つを、なるほどくんに手渡した。
「はいこれ」
「え、ありがとう。何かのお土産?」
「うん!最近隣の県でずっと捜査してたから、そこの美味しいお菓子」
「へえ、随分立派だね。…トノサマンジュウだけど」
「ただのトノサマンジュウじゃないよ!プレミアム紫いも餡なんだから」
「…美味しそうだね」

じっと箱を見た後に、なるほどくんがお茶でもしてく?と訊いてくれたが、思いの外時間がなかったからやめておいた。

「この後、仕事なの?」
「いや、御剣さんにもトノサマンジュウあげるの」
「あ、ぼくもあいつに用事あるんだ。一緒に行って良い?」




冬の陽気の中、二人で並んで歩いていると、突然なるほどくんが、あっ!と声をあげた。
「な、なに?」
「ぼくも手土産くらい持っていこうかな」
「…袖の下?」
「なっ、人聞きわるいなあ」
そんなこと言ってるけど、彼の顔が引き攣ってるから、おおよそそんな感じなんだろう。嘘がつけないんだ。

「御剣、何がほしいかな」
「うーん、なんだろう?お菓子は私が買っちゃったし…」
二人で頭を悩ませながら検察庁に向かっていると、通りすがりにあるコンビニのノボリに目がいった。

「「…あ」」







「みっつるぎさーん!こんにちは!」
「お邪魔するよ」

「っ、ノックくらいしたらどうだ」

二人で上級執務室に突撃したら、御剣さんはリラックスモード全開って感じでお茶をしていた。
これはちょうどいい。

「御剣さん!はいこれ!」
「…むっ、これは…!」
「ふふん、カンシャしてくださいよ〜!隣の県限定のトノサマンジュウなんですから」
「礼を言おう。それと、来月の給与査定、期待していてくれ」
「やった!」
「トノサマンジュウでかよ!」


御剣さんが想像以上に喜んでくれて、うれしい。コドモみたいに目なんか光らせちゃって。
すかさず私は、なるほどくんに目配せした。

「あ、…御剣。これ…」
「なんだ?」

御剣さんが受け取ったコンビニの袋からは、ぺらりと一枚の透明の板が出てきた。勿論、トノサマンのだ。

「…トノサマン・丙の下敷き…」
「さっきね、コンビニで一番クジやってたんです!それで一等がフィギュアだったから、それ当ててって言ったんですけど、なるほどくんダメダメで…」
「そんなの無理だよ!クジの一等なんて!」

御剣さんが下敷きを見つめる。

私となるほどくんがそれを見て、大の大人にキャラクターの下敷きを差し入れるという失態を急に恥ずかしく感じ、お互いにギャースカ言い合っているときだった。

「非売品だ」

「「……え?」」

御剣さんの声が明るいからびっくりして振り向けば、なんとも言えない、嬉しさを隠した顔をしていた。

「これは、そのクジとやらでしか手に入らない、非売品なのだ」

ああ、御剣さん、なんて顔してるの。そう苦笑いしながらなるほどくんを見遣れば、彼も引き攣ったような微笑みを浮かべていた。





「良かったねー、喜んでもらえて」
「まさかだったよ」
「…御剣さんがあれを大事に使うんだろうなとか思っちゃうと、なんか複雑なのはなんでかな」
「明日の公判の証言内容も喋るほど上機嫌だった…」

なるほどくんの事務所に戻る道中、そんなことを喋っていると、彼の携帯が震えた。

「電話…って、御剣だ」
「え?」
私も近付いて耳をすます。


『成歩堂、さっきのだがな…真宵クンにも買っておくといい』


思わぬ言葉に、私となるほどくんは、本日何回目かの、目だけで驚きと笑いを交わして、思わず吹き出してしまったのだった。










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-Suichu Moratorium-