着々と一定のスピードで進むときを知らせる時計の針は、待ち合わせの時間から二十分もオーバーしていた。たかが二十分、されど二十分。今日は善充くんと私の初デートの日なのだ。私は普段は穿かないようなスカートを穿いて待っているのに善充くんはなかなか現れない。もしかして何か悪いことに巻き込まれてるんじゃないだろうか。事故とか、なんてそこまで考えて善充くんが免許を持ってないことを思い出してため息を吐いた。こうやって悪いほうに考えてしまうのは私のダメな癖だ。直さないと。大方寝坊だろう。うん、そうだ。



「ごめん!」



背後から聞こえた声に振り向くとそこには少し息を切らした善充くんが立っていた。



「遅い」



ずんずん善充くんに近づいて腕時計を見せ付けるとあのふにゃっとした笑顔を向けてひげを引っ張る。



「昨日後輩にあげるエフェクター作ってたらなんか明け方になっちゃってて、急いで寝たら、はい」



やっぱり遅刻の原因は寝坊だったらしい。だけど厳しく怒れないのはその理由。優しい先輩の一面を見て胸がきゅんとした。



「ジェンガで負けたバツゲームでさあ」



・・・悪気がないのは分かってる。だけどその一言は余計だったと思うよ善充くん。



「今度から遅刻しないで!」

「はい、以後気をつけます」



ぺこぺこ頭を下げてそう言った善充くんの前で私は偉そうに腕を組んでよし、と頷いた。



「それじゃあ行こうか」

「まずどこに行く?」

「なまえクレープ食べたいって言ってたよね。買いに行こうか」



日常の何気ない私の言葉を拾ってくれてた善充くん。その言葉にはたくさんの愛が詰め込まれてる気がして、心臓がどきどきした。顔赤くなってないかな。酷くにやけてないかな。

両手で頬を押さえていると善充くんが笑いながらはい、と手を差し伸べた。私は緊張しながらその手を握る。



「普段なら恥ずかしいからこんなことあんまりしないんだけど・・・」

「罪滅ぼし?」

「・・・そんなとこ?」



言いかけてる途中でふわぁとあくびをした善充くんに体当たりをした。いくら眠くても私の前ではあくびをしないで!・・・と言いたいところだったけど、移った私もふわぁとあくびをしてしまった。実は私も緊張でなかなか眠れなくて寝不足気味。だからあくびは釣られてしまう。なのに善充くんったらもう一回大きなあくびをした。・・・もちろん私も釣られて大きな大きなあくびをした。

少し恥ずかしくなって視線を彷徨わせる。結局たどり着いた善充くんの方を見るといつ見ても謎な髪型の後ろがぴょこんと少しはねていた。見つけた寝癖が愛しくなる。



「善充くん、寝癖」



落ち着くように善充くんの髪に手櫛を通すけど髪はまたぴょこんとはねた。



「直った?」

「まだはねてる」

「急いでたからなあ」



そう言って繋いでないほうの手で自分の頭の後ろを撫でる善充くん。寝癖を手のひらで見つけるとはははと笑った。



初デート



あなたのそんなところも私をどんどん好きにさせるのです。



song by チャットモンチー