タバコの煙が消えるように滝は私の前から消えていった。数本残ったタバコの箱を一つ置いて。



滝が置いていったタバコを持って近くのコンビニで百円ライターを買った私は家に帰るわけでもなく近所をぶらぶら歩くことにした。ちかちか光る蛍光灯の下を歩けば私も蛍光灯も無理してるみたいで少し距離をとった。今日は一ヶ月ぶりの満月で、雲もなく綺麗に見える。月明かりに照らされた道路は肉眼でも見えるぐらい明るくて無理する蛍光灯なんて要らないと思った。









「禁煙しないの?」

「そう簡単に出来たら困らないんだけどねぇ」



困った顔でそう言った滝は言ったそばから口にタバコをくわえて火をつけていた。紫煙は気を使ってくれて換気扇に吐き出してくれる。私が住んでる二部屋の狭いアパートに私と滝は半同棲していた。滝の荷物は少しずつ増えていくし二人の物も増えていく。シングルの布団一枚に二人で寝るのはさすがに狭いから安いダブルの布団を買ったのはつい最近だったような気がする。

私がいつも頃合を見計らってひっくり返す灰皿は滝がいつも気付けばきれいになってるね笑ってくれた。それが嬉しくて私は毎回それを繰り返した。だけど今はひっくり返すタバコもない。

ダブルの布団は広すぎるし場所を取る。置いていかれた茶碗もコップも邪魔だから処分しようと思うのになかなか捨てられない。せめて灰皿ぐらいは、と思ったけどステッカーが貼られた灰皿もいざゴミ袋へ入れようとしたら手が拒否するのだ。









慣れない手つきで数本だけ残っていた一箱からタバコを一本取り出して口にくわえてみた。百円ライターは一回か二回しか使ったことがないせいで火はうまくつかないしイライラする。タバコってめんどくさい。
やっと火がついたタバコを滝がしてたみたいに吸ってみた。最初の一吸いは勢いがよすぎたのか大きくむせてしまった。口から零れるように出ていく紫煙。煙は思った以上に目に沁みる。まん丸な満月の下、私はなにをしてるんだろう。

一本目は道路の上で靴の裏で踏み潰して持って帰ることにした。灰皿を使うためだ。箱の中にはあと三本ぐらい残ってる。家で全部すってやろうと思った。滝を消すためだ。滝が消えるころ、私はニコチン中毒になっているのだろうか。



恋をした、全力だった



そばにいたらバカだなぁって笑ってくれたかな



title by h a z y/song by チャットモンチー



20170517