「あ」
スマホのホーム画面に置いてあるアプリのアイコンをタップすればたくさんのマンガのタイトルがずらっと並ぶ画面が開く。その右下に書いてある新着の文字と数字に私の心は躍る。ソファに寝転んだまま新着をタップすれば私のお気に入りのマンガがまたずらり。グルメにギャグにエッセイに恋愛モノ、ホラーもほのぼのもたくさんの作品が揃ったページをスクロールして本日更新の印がついたエッセイのタイトルを開いた。
最近面白い本に出合えないとしつこく嘆く私に呆れた友達が教えてくれたのはpixivコミックというアプリだった。とにかくいろんな種類のマンガがあって面白いからと推されたけど、正直私はマンガより小説派だし結局のとこ有名なマンガ家とかじゃなくて素人が描いたマンガなんでしょ?と思いながらなにも期待せずに暇つぶしにでもなればとダウンロードしてみた、結果、どハマりしてしまった。そりゃもう片っ端から読み漁るぐらいには。
「なまえ・・・ってまた髪乾かしてない」
頭の上から聞こえたのは栄純の声で、画面から視線を栄純に向けると栄純はすでに髪をきれいに乾かして手には缶ビールを二本持っていた。
「風邪引くっつってんじゃん!」
「暖房ついてるからいっかなって」
「だーめ乾かしてきなさい」
「えー、マンガ読みたい」
「だー」
「栄純の好きな青野くん更新してるよ」
「あ、マジ?」
「うん・・・あ、ランキング三位だ」
「あーれ面白いもんね!」
私の言葉にころっと流された栄純はガラスのローテーブルに缶ビールを置いてテレビ台の上に置いていたスマホに手を伸ばした。ちなみに栄純も私がかなり推したおかげですっかりpixivコミックにはまっている。皮のケースを開いているのをちゃんと確認したあと私も読もうとまた体勢を整えていると
「髪」
とピシャリと言われてしまって、仕方なくスマホから手を離してドライヤーを置いている寒い洗面台へ向かった。
「青野くんどう?」
「今週もやっべぇ」
「マジか」
私のほうは見ずに正座をしたまま画面をスクロールしながら栄純はにこにこ笑っている。髪を乾かした私もやっと読めるとスマホに手を伸ばせば栄純は「あ」と言ってテーブルの上に置いていたビールを一本私に差し出した。優しい彼氏を持ったもんだ、とにやけそうな顔に力を入れながらビールを受け取ってソファに沈む。
「難解腐女子読んだ?」
「いやまだ、今古森くん読んでる」
「わー今日なまえが好きなやついっぱい更新してあんじゃん」
私は片手で、栄純はちゃんと両手でビールの缶を開けたあと乾杯は言わずに缶同士をぶつけた。炭酸がはじける今日のビールは深キョンがCMしていた華みやび。ハーブっぽい香りが鼻を抜けて気が緩む。目の前で栄純はいまだに正座をしてマンガを読んでいるから私は真ん中に座っていた体を端に寄せて空いた隣をぽんぽんと叩いた。
「栄純足痛いでしょ、こっちきなよ」
「あ、ありがと」
テーブルに手をついて立ち上がった栄純はすねの辺りをさすりながら私の隣に座る。元々体温が高い栄純の隣はぽかぽかしてとても気持ちがよかった。
「痛かったらソファに座ってたらよかったのに」
「いや、なまえ寝んのかなーって思って」
「寝ないよ」
「さっき寝てたじゃん」
そういえばそうだった。ごめんと呟くと栄純はきょとんとした顔で何も言わずビールをぐびっと飲んだ。
「まあいいじゃん」
「・・・いいのかなぁ?」
「いいのいいの!気にすることじゃねぇって」
にこにこ笑いながらそう言う栄純に最後は甘えて私はちいさくありがとうと呟いた。
ベリー幸せだよ
titile by 愛とかだるい
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