「手作りケーキって重い?」
「人によるけど基本は重い」
メモ用紙にチェックマーク。
「クッキーぐらいなら?」
「それは有りだろうな。まあやっぱり人によるけど」
メモ用紙に三角マーク。
「大体光舟ぐらいの年代の人って誕生日プレゼントなにが欲しいと思う?」
「それこそ人によるじゃろ」
そりゃそうだ。思わずメモ用紙に自分でつっこみを書いてしまった。私はボールペンをくるくる回しながらメモ用紙に書いてある文字を目で追う。手作り品は基本的に相手との関係性によるから三角、食べ物は特に。35歳の男が喜ぶようなプレゼントのヒントはもらえず、起動していたパソコンのグーグル先生の検索窓に打ち込んだ“35歳 誕生日 プレゼント”で明確な答えが出るはずも無く、私はため息を漏らす。
「なに、そんなに悩んでんの」
「結構悩んでる」
まずプレゼントを渡したい本人にこんな相談すること自体がおかしいけどこの方法のほうが情報を手に入れやすいと友達に聞いたなんでも鵜呑みにするタイプの私はすぐ実践しているわけで、まあそうそういい情報なんて手に入るわけも無く途方に暮れている。光舟が人が作ったものは食べたくない人間だってことは前々から知ってるし、なにが欲しいかなんてストレートに聞いたらサプライズの意味がなくなってしまう。喜ぶ顔が見たい。その一心で頑張ってはいるものの全体的に空振りしているような気しかしない。
「お前がそういうことで悩んでるって聞くのはじめてだわ」
「そう?」
「なに、好きなやつでもいんの」
いるよ、今電話してる人。なんて少女マンガのようなセリフを言ってみたいけど30すぎた独り身の女がそんなこと言っても寒いだけなのは分かりきっているから私はなんとなく濁した。落ち着かない手元はメモ帳にたくさんの歪んだ花を咲かせて、メモの内容が見えなくなってきている。こんなに動揺してるのが表に出るなんて光舟がいれば笑われるんだろうな。
私が考えたプレゼント、光舟が好きなもの。たくさん並べたけどただのOLの私には高くて手が届かないものばかり。買える!と思ったものはもう光舟が持っていたり、種類は似てるけどどこどこが違うなんて変なこだわりを見せるから簡単にはプレゼントできない。料理をするから家事グッズ、なんて思ったりもするけどそんなの女の子が好きな男の子にあげるプレゼントには色気が無さすぎる。っていうかもう私も光舟も女の子男の子なんてくくりじゃなくなってるけど。
「なにが欲しいんだろう・・・」
ぼそっと本音を呟いたら電話越しにうーんと悩んだ光舟があ、と声を上げた。
「フライパン!ステンレスのやつ。くっつかないやつ」
「え?」
「あれ超欲しいんだわー。前通販番組でやってたんだけどタイミング悪く金なくてさあ」
「ちょっと」
「誕生日、それよろしく」
今さっき家事グッズなんて色気が無いって考えたばかりだったのに光舟の口から出たのはフライパン。っていうか、なんでばれたんだろう!
「ちょっと待ってよ、誰も光舟の誕生日プレゼントで悩んでるなんて言ってな」
「俺ただ欲しいもん言っただけじゃん。誕生日にそれ買ってくれって言っただけであとは何にも言ってないけど」
しまった。
「わっかりやすいよな、お前」
返す言葉もございません。
黙り込んでいると光舟はしばらくうーんと唸ったあと一人で勝手にうんと呟いた。
「誕生日、俺ん家こい」
「え?」
「フライパン持って頭にリボン結んで」
「ちょ」
「はい35歳の男が欲しいプレゼントの出来上がり」
げらげら笑った光舟に怒鳴ると光舟は悪びれもせず笑いを堪えることも無く、だけどはっきりと本心だし、と言った。そう言われたら、私は、フライパンとリボンの入手先をグーグル先生の検索窓に打ち込むわけで。
「・・・いいフライパンと可愛い30過ぎの女の子が誕生日に家に来るからきれいにして待っててね」
「ぜーんぶきれいにして待ってるわ」
じゃあな。きられた電話の通話時間は二時間近くにも及んでいた。私はその携帯を胸に抱きしめて、検索結果が表示されたパソコンの画面も見らずにソファにもたれかかる。
ああ、リボンってどこに巻けばいいんだろう・・・。
Happy Birthday KOUSYU!!
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