「かんぱーい!」



 ビールジョッキをぶつけて二人でぐっと飲む。夜はまだ寒いけど冷たいビールはいつでも美味しい。今日は誕生日だから特に美味しい。さらに言えば人の金で飲めるビールだから美味しく感じるとこもある。まあ、とりあえず、美味しいものは美味しい!



「今日は遠慮しないで好きなの頼んで!」

「やったー!栄純さん太っ腹!」

「かわいい後輩のためですからな」



 えっへん、と胸を張る栄純さんは年上だけどかわいく見える。そして素直に甘えようと思えるから不思議だ。私は遠慮せずにメニューを取ってテーブルの上に広げた。メニューには鮮やかな肉の写真が載っていてお腹が小さな音を立てる。とりあえずハラミと牛タンは絶対で、あとは何にしよう。



「ハラミと牛タンとー」

「カルビとー」

「栄純さんの胃袋若いですね」

「その発言ババくせぇな」

「だって私すぐ満足しちゃう」

「またババくせぇこと言っちゃって」



 メニュー表のつるつるした感触を指先で楽しみながらほんとだし、と笑う。



「最近燃費悪いんですよねぇ」

「なにそれ」

「すぐお腹一杯になるけどすぐお腹すく」

「あーでもそれ分かるわ」

「ほんとですかぁ?」

「米食わねぇとすぐ腹減る」



 それは私と違うけど、ビールを飲みながら真剣な顔でメニューを見ている栄純さんには言わないことにした。別に言ったところで栄純さんは笑うだけだし、そんな重要で広げなくちゃいけないような話題でもないし。そうですねぇ、と相槌だけ打って私もきちんとメニューを見ることにした。ハラミ、牛タン、カルビ、うーん。あ、久しぶりにサンチュ食べたいな。あとスープ。たまごスープ美味しそう。

 あまりにも栄純さんが真剣にメニューとにらめっこをしているせいで二人の間に沈黙が生まれる。私は自分が食べたいものが大体決まってるからただビールを飲む。そういえば二十歳になったころはビールなんて苦くて飲めるか!なんて思っていたのに年を重ねるごとに不思議と飲めるようになっていたな。最初はハイボールばっかり飲んでいたのに今は逆にハイボールを飲めなくなってきた。ビール飲んだら次は何を頼もう。もう一杯ビールいくか、レモンサワーにしようか。さっぱり口にしたいならレモンかなぁ。



「なまえちゃん決まった?」

「あ、はい。栄純さんは?」

「俺も大体」

「じゃあ店員さん呼びます?」

「うん」



 呼び鈴のボタンを押すと丁度隣の席に飲み物を持ってきていた店員さんがすぐに私たちのところに来た。私と栄純さんはそれぞれメニューを指差しながら注文をする。ハラミ、牛タン、カルビ、サンチュ、たまごスープ、ご飯、ピートロ、ミノ・・・。全部タレで、と付け足した栄純さんに慌てて私はレモンサワー!と付け足した。店員さんはメモ帳にさらさらと私たちが言った商品の名前を書いていって最後に繰り返して確認したあとバタバタと厨房へ戻っていった。焼肉屋は曜日関係なくいつでも忙しいみたいだ。・・・しかし、二人しかいないのに結構な品数頼んだ気がする。



「めっちゃ頼みましたね。食べれますか?」

「いけるいける。米あっからいける」

「絶対私より胃袋若い」



 でもたぶん二人で話してたらなんやかんや食べてしまうんだろうなあ。胃が〜、なんてふざけて笑いながら。少し先のことを考えてちょっとだけ笑う。



「でもなんやかんや食っちゃうと思うよ、たぶん」

「え?」

「話してたらあっという間だろうし」

「・・・おんなじこと考えてた」

「気ぃ合うね?俺たち」

「いまさら!」



 笑ってジョッキを持てば栄純さんもすかさず自分のジョッキを持つ。そして何も言ってないのに二人でもう一度「かんぱーい!!」とはしゃぐのだった。



20180411 s