女の子は儚げじゃないといけないのだろうか。細くてしなやかな体のライン、肌は白くて唇は桜色。目は大きく潤んでいて髪はさらさらストレート、笑う時には手を口元にあてて鈴が転がるような笑い声をあげる。そんな女の子を求める男が多すぎる。少なくとも私の周りの男はそんなやつらばかりだ。染めて軋んだ髪をした手をたたいて笑うような女は“女”としての枠から外されてしまうのだ。



「たくましすぎる腕だな」



 背がすらっと高くてモデルのようなスタイルをした岡峰さんが言い放った言葉が刺さって離れない。多分本人は悪気なんてなくて見たままのことを言っただけなんだろう。私が気にしてることなんて知らないんだから仕方ない。仕方ない、と何度も言い聞かせる。だけど胸が痛い。



「別に岡峰さんのことが好きだってわけじゃないんですけど」



 ビールを飲み干してそう言うと、唇の上にできた泡のひげを舐めた将司さんが小さく首を傾げた。私はiPadを手に取ってレモンサワーと牛タンを頼みながら薄い溜息を吐く。ぱちぱち鳴る炭は真っ赤に焼けている。



「やっぱりたくましすぎる腕とか言われたら傷つくじゃないですか」

「光舟が言ったの?」

「笑いながら」



 悪気がないことはもちろん分かってるんですけど、と手元のトングを鳴らしながら付け加える。それに対して特に明確な答えが返ってくるわけでもなく、将司さんはふぅん、とだけ言った。別に何かを求めていたわけではないけど、なんとなくさみしくなってテーブルに肘をついて炭火の熱を感じながらまた口を開く。



「やっぱり儚げな女の子が一般的な女の子なんでしょうね。私みたいなタイプは“女”枠からさえも除外されるってことですよね」



 普段思ってることがぼろぼろっと零れて何もない網の上で燃えていった。



「牛タン塩とレモンサワーです」



 小柄な女の店員さんが笑顔を振りまいて私が注文したものを持ってきたのとほぼ同時に将司さんがふと口元を緩めて笑う。



「別に儚げじゃなくても好きだけど」



 何事もないように焼かれないままテーブルに置かれていた肉にトングを伸ばす将司さんは焼かれた炭から受けていた熱とは別に顔に集中する私の熱を見透かしているくせにもうこっちを見ていない。暑い、そう呟いて冷たいレモンサワーを煽る自分はやっぱり儚いとは程遠い存在だけど、それでもいいと言ってくれる男の人が目の前にいる現実が、なんだかとても恥ずかしかった。



わたしもちゃんとおんなのこ



「ほかのやつらには好き勝手言わせとけ。俺だけ知ってりゃいいから」



 私の皿に肉を置きながらちらりと上目遣いで言った将司さんが不敵に笑う。ずるずる崩れ落ちる私は染めて軋む髪をかき上げながら唸ることしかできなかった。