長時間のデスクワークで私の肩は限界を迎えている。もう肩だけじゃなくて首もごりごりに凝ってるし、なんならこれのせいで偏頭痛がひどくなった。目も悪くなった。だけどやめるわけにはいかない。なのに自分の体のいたわり方を分かってない私は毎回毎回家でただひたすら眠るだけだ。



「どう考えても無理しすぎでしょ」



 ほとほと呆れた声でそう言ったのは和彦だった。ソファに沈んで動けなくなっている私に「お疲れさま」とか優しい言葉をかける前に「バカじゃん」と続ける手厳しい和彦に言い返す元気もない私は中指だけを立てて見せる。無理しすぎだと言われても無理をしないといけない環境にいるんだからどうしようもないに決まっているじゃないか。私だって無理はしたくない。だってきついもん。そんなの誰だってきついよ。だけどさぁ、私にもプライドってもんがあってだね。

 ・・・なんて私の気持ちを一ミリも知らないし知ったところで理解してくれないであろう和彦は一つため息をついた後部屋を出ていった。遠くで電気のスイッチが押される音が聞こえる。お風呂、寝室、まあどこだっていいか。私、今動けないし。体が重たくていうこと聞かないし。



「よい、しょっと」

「・・・え?」



 重たくていうことを聞かない体をひっくり返されたと思った次の瞬間、私はふわりと宙に浮いた。突然のことに一瞬頭がフリーズしたけど自分が普段見下ろしているところよりさらに下にある床に一気に恐怖心が煽られて思わず和彦の首にしがみつく。和彦はぐぇ、と苦しそうな声を漏らしたものの叩くわけでも下すわけでもなく文句を言うわけでもなく、ただ私を抱き上げたままリビングを後にした。

 最近ぎぃぎぃと軋む音が耳につく寝室のドアを軽く蹴って開けた和彦は数歩歩いた後普段の雑な扱いからは考えられないほど優しくベッドの上に私を下ろした。



「今日はもう寝ろ」



 大きな手が私の目元を覆う。その暖かさがじんわり瞼に広がって本当に眠りそうになる。いや待って、私まだしないといけないことがあるのに、今日のうちに終わらせたいことが―――



「はいおやすみ」



 ふに、とおでこに柔らかいものが落ちた。普段こんな恥ずかしいことしないくせに、とこっちが恥ずかしくなってきて、やけくそになってああもう眠ってしまえ!と強く目を閉じる。瞼が暖かい。



魔法の手



 どんどん力が抜けて呼吸が深くなる。とろとろした睡魔にさらわれた私はそのまま眠りについた。



「・・・いつもお疲れさま」



かずひこくんのおててはふかふかでおふとんみたいらしいです