「韓国のドラマってさあ」



砂浜にずぽずぽヒールを埋めながら歩くなまえは寒そうに肩をすくめてうぅ、と小さく呻く。俺はその後ろでなまえのヒールで空いた穴を踏みつけて歩いていた。冬の浜辺はそりゃもう寒い。海は濁っていて綺麗とは言えないし今日は生憎風も強い。それでも海に行きたいと言ったのはなまえだった。




「ん?」

「最終回、よく浜辺にいるのよ」

「ふーん」

「そんでいちゃこいてるやつ多いわけ」

「・・・ふーん」



そこまで言って会話が途切れる。ずぽずぽ相変わらずヒールを埋めて歩くなまえにその穴を踏んづけて歩く俺。しばらく黙っているとあーもうっ!と声を上げたなまえがコートにつっこんでいた赤い手でぐしゃぐしゃと頭をかいた。



「なんだよ」

「その経験を積みに積みまくった脳で分からない!?」

「はあ?」

「・・・分かってよ!」

「言わなきゃ分かんねえよ」



ぐっと押し黙ったなまえは俯いたあと何も言わずに俺に背を向けてまた浜辺を歩き出した。

別に分かってないわけがない。しばらくツアーやレコーディングで会えなくて、素直じゃないなまえが寂しがってることぐらいよく分かってる。遠まわしに何が言いたいのかも。
だけど意地悪をしたくなるっていうか、もう自分でもよく分かってる、俺の頭は小学生並だ。好きな子はいじめたくなるっていう真理がよく働く。本当は笑顔が見たいのに、泣き顔も怒った顔も見たいなんて欲張りな頭だ。



「なまえー」



もちろん返事はない。

俺は少し取っていた距離を一気につめてなまえの真後ろに立った。気付いたなまえはかわいげのない小さな悲鳴を上げてこっちを振り向こうとする。



「っ、よいしょっと」



膝裏と背中に腕を持っていって軽くなまえを持ち上げると次はなんかかわいい悲鳴を上げたなまえが反射的に俺の首に腕を持ってきた。所謂姫抱き状態になったことにまだ気付いてないなまえを抱き上げて俺はくるっと一週回ってみる。



「ちょ、たけ、」

「一緒に見たやつのラスト、姫抱きされてたよな。そういえば」

「あ・・・」



なまえの顔が真っ赤になっていく。



「素直に言えよな」

「だ、誰もお姫様抱っこしてなんて言ってない!」

「かわいげねーの。降ろすぞ」

「・・・」

「ん?」

「・・・やだ」



真っ赤な顔で小さい小さい声をあげたなまえがかわいくて思わず落としそうになった。



「・・・襲うぞ」

「・・・なんでそうなるの!」



ロマンティック



しばらく言い合いをしていたけどなまえの笑顔を見れたからどうでもよくなった。(でも襲う)



不完全燃焼