ライターを指先で弄びながら着替えを抱えて鼻歌を歌う彼女を目で追う。緩くまとめられた髪、揺れるピアス、淡い色に染まった爪にスーツのスカート。そんな彼女に重なって見えるのは制服を身に纏った女子高生で、指折り数えれば随分過去のことになるその姿はあまりにも鮮明に頭に残っていた。
「・・・何かついてますか?」
視線が突き刺さっていることに気づいたなまえが鼻歌を止めて怪訝そうな顔で俺を見つめる。
「・・・昔のかわいい彼女を思い出してた」
「はぁ!?」
語弊があるのは百も承知で、わざとらしくそう言えば大きな声をひっくり返してなまえが目を剥いた。私がいるのに!?と言いたいのだろう、口がパクパク動いている。その顔があまりにも面白くてたまらず吹きだしてしまえば着替えを思いっきり投げつけられた。キャッチできなかったブラジャーのホックが鼻先をひっかいて少しだけ痛い。
「ばあーか!!」
「バカはそっちだろ」
投げつけられた着替えをバスタオルで包んでまたなまえに投げる。それをうまいことキャッチしたかと思えばまたものすごいスピードで俺の元へ戻ってきた。不意打ちにキャッチする手が遅れて次は着替え全部をひとまとめで顔面に受ける。これが結構痛い。
「いってえ・・・」
「細美さんが全面的に悪いですからね!」
「なんでだ、よ!」
ドッヂボールか何かをしているんだろうか。着替えの投げ合いになりながらお互い変わったなぁと改めて思う。こんなんじゃなかったのにな、まだまだ初心な女子高生だったし、そんな女子高生に翻弄される大人だったのに。
でもこの関係も嫌いじゃない。
「かわいい彼女のこと教えてやろうか?」
「あーあー聞きたくない!」
「エロ本見て顔真っ赤にしてさ」
「うるさ」
「制服で」
「・・・ん?」
キャッチした着替えを投げ返す手が止まる。そして一拍置いたあと「・・・制服?」と呟いた。
「そうそう。いやー、背徳感あったわ、あれは」
「・・・かわいい彼女?」
人差し指で自分を指したなまえににんまり顔だけ返すと、一気に顔が赤くなっていった。その姿にあの頃のなまえが変わらず重なる。こういうところ、変わってねぇんだよなぁ。
「もうエロ本見ても赤くなんねぇのにな」
「・・・うるさいです・・・」
かわいい彼女は着替えに顔を埋めたあとそそくさとリビングを出ていった。ピアスが揺れる耳まで真っ赤で、思わず笑った。
おれの磨いた君なので
10周年リクエスト「いけない」の大人になった二人の話でした。nちゃんありがとー!!遅くなってごめんねー!!
title by さよならの惑星
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