欲しがりな


(下品*荒北→福富っぽい表現アリ。また "初期北"という単語が分からない方は戻りでお願いしたいです。何でも許せる方向け)










夕日が差し込む放課後の静かな教室。
珍しくというのか初めてというのか、言葉に迷うこの状況。荒北君が来期に向けた学祭のアンケート集計を頼まれた私を手伝ってくれている。いや、手伝うというよりは眺めているという表現が合う気がする。

一番窓側の席で少し入ってくる換気のための寒い空気。机の目の前の荒北君は寒いのか手の甲までジャージで覆っている。もうそろそろ寒いな、無言で立って窓を閉める私。

「…いーよ?荒北君部活行って」
「ンー、でもまだまだじゃナァイ?」
所謂萌え袖のまま肘をついて私をニヤついているのか笑っているのかどちらともとれる顔で眺めてきている。うーん、そりゃそうだけど、ほぼ荒北君は手伝ってないし結局手持ち無沙汰じゃない。本来なら一人でやっていても飽きるところだが、こう相手がいるだけマシなのかもしれない。

「…まつげ長いね」
暇つぶしにアンケート集計を始めて気付いた事を口にした。
「へぇ、よく見てんのネェ」
「ふふ、少し羨ましいかも」




「みょうじチャンも同じくらいじゃナァイ?ホラァ」
細長い指で私のまつげを軽く触る。まつげなんて触られたことも無くてビックリして反射的に目をギュッと瞑る。
「アハッ驚いたァ?」
先ほどと同じトーンで話す荒北君。
「…そりゃ、いきなりそれは誰でも驚くよ」
「イイ顔してたヨ?みょうじチャン」
「ハイハイ」
妖しく笑う荒北君の事をいちいち深く考えてたり構っていたら作業が進まない。

手元は忙しなく動かしながらアンケートをまとめていく。本当みんなに言いたい…無記名だからって自由に書くな!としか言いようがない。

「アハッこれいーネェ」
荒北君があるアンケートをアンケートの山からピラッと取り出す。
「ホラ、"ノーパン喫茶"ァ」
「いや、時代古くない?」
「ハッ ネタとしては最高ダロォ?」
「…そーですね」
それよりもまずネタコーナーじゃないからこれ。

「みょうじチャンのノーパンはソソるだろうネェ」
そんなアホな事言う人の顔が見たくなって、嫌な顔してゆっくりと顔を上げる。発言者はやはり口角を片方だけあげ笑う荒北君しかいない。
「…ふん、荒北君もノーパンで接客したら合うんじゃない?」
「みょうじチャンそんなの見たいんだァ?えっちィ」
笑う荒北君にため息だけで返してあげた。イラッとした気持ちを伝えてみたのだが効果がなかったようだ。
「擦れる感じが意外とイイかもネェ…。みょうじチャンもスースーしてイイ感じになるかもヨォ試さねェ?」
「一人で試して感想聞かせてくれたらね」
目の前のセクハラ男を睨むがヘラヘラしながら受け流された。








ここは3階、窓からは中庭がよく見える。荒北君は暇なのか私の手元だけじゃなく中庭も見始めた。とっとと部活に行きなさい、そしてその無駄な熱を外に出して来なさい。

ここぞとばかりに進める作業。しかし荒北君が見つめる先も気になってきた。なので、私もチラッと中庭を覗く。
あれはえーと、福富君?と女の子?
「…福チャンの告白シーンかなァ」
「…そうだね、モテるね福富君」
福富君はグイグイ押す系の女の子に少し戸惑っている感じだ。荒北君は一瞬笑みが消えて机に肘をついて伏せ目がちに机の上を見つめる。

「…ハッ、あのクソ女消えればいいのにィ。…つーか俺も妊娠できたらサイコォ」
「…ソーですね…」
衝撃的な発言に何を言ったらいいのか分からずどこかの番組のような受け答えになってしまった。
「人間って不便だよネェ、男女区別なく子宮と棒がありゃいいのにナァ」
妖しく笑いながら口に出される高度な疑問。しかしそれに簡単に返せるような高度な私でない。
「そーすりゃ少子化も改善じゃナァイ、なぁみょうじチャン?」
赤い舌をイタズラにペロッと出しながら言う荒北君。
「…同意求められても困るんだけど」
辛うじて返した言葉はこれだった。


「っ!」
そんな話で油断していたらピッと薄い紙が牙を剥いた。あーしまった、変な話に気を取られてた。指を少し切ってしまった。
スッと負傷した指を荒北が掴み、それを荒北君が舐める。
「っ!あら、荒北君!」
「ンー?」
赤い舌が私の指を這う。ヒリヒリとした痛みが指先に響く。本当何これ。
「さっきの話だけどォ」
「っなに!?」
「アハッ、ピクッとしたァ」
「あのね…」
「…男女区別なくヤれりゃ、みょうじチャンのこの濡れた指を俺のに入れる事だって可能なんだヨ。んで、みょうじチャンの棒も受け入れて孕むのォ」
いやもう訳が分からない私。濡れた指からジンジンと熱くなる身体は一体どうしたものか。変わらず妖しく笑う荒北を見つめる。
「福チャンもいーけどォ、みょうじチャンも捨てがたいんだよネェ…でもみょうじチャンも福チャンも孕ませたいしなァ…あぁ、福チャンも孕めばいっかぁ、それか俺が孕むかなァ…」
「…欲しがりすぎじゃない?」
私の指を咥えながら伏せ目がちな荒北君にそう言った瞬間指を噛まれた。
「っい!痛いんだけど?」
そんな私の抗議は聞き流されたようだ。

隣の席移動してきた荒北君が私の太ももに冷たい手を這わす。なぜ荒北君の手が冷たく感じるのかを考えたら負けであろう。
荒北君は膝から足の付け根までを何度も往復する。そんな往復する手に抗議をする事なく神経を集中させる。
足の付け根で手が止まる。ああ、もしかしたら下着が見えてるかもしれない。
「みょうじチャンも欲しがりじゃナァイ?」
チラッと見える赤い舌と白い歯に食べられてしまいそうだ。
「…荒北君ほどじゃないよ」
「ソォ?」