事が終わると微妙な甘ったるさが残る。気恥ずかしい雰囲気の中、事後処理をしている時とか尚更だ。そんな事で、一晩にして一線を超えてしまったけれど、オレ達の間に流れる空気感は変わる事がなかった。

「ねぇ、この前テレビで特集のとこ気になってるんだけど、今日連れて行ってよ」
「ア?ンなめんどくせェ事誰がするかヨ」
「ケチくさーーー!」
「ンなもん一人でいけヨ」
「全く気付かないの?カップル割引がめちゃくちゃお得なんだって!つーか単独で割引とかあるようなら誘うわけないから」
「てめェな」

昨日購入したロールパンで少し遅い朝食を摂りながら、ビシッとオレを指差して平然と横暴な要求してくるなまえ。まだ寝癖は残っているし、化粧もしてないが、昨日駅で思った通りにストライクに入る顔なのが腹立たしい。さっきまでオレの下でアンアン言ってた姿はより良かったけれど、今の方が安心は出来る。
ちょっと変わってしまった幼なじみとヤることヤッたからと言って、気になってしまうのはアウトだろう。それならヤれれば誰でもいいんだろ?と聞かれれば言葉に詰まってしまうからだ。

スマフォで料金ページを真剣に読み込むなまえがホラと画面を突き出してくる。ぶつかりそうになる位の眼前に。

「近ェヨ!」
「あはは、いいツッコミ〜〜」

ケラケラ笑うなまえがスマフォを引っ込める。結局、オレがそのページを見る事はなかった。こいつのアホな行動全てに真面目に答えていたら気が折れる。

「は〜、食べた食べた。昼ご飯どうしようね」

朝からガッツリと食ったこいつは、その場で仰向けに倒れた。ブラジャーを付けていない胸が僅かに上下に揺れる。…食ったもん全部胸に行ってんじゃねェ?とか言いたくなったが、言ったら負けだと思って睨みつけた。

「オイ、」
「へ?」
「さっさと着替えろヨ」
「え、どっか行くの?」
「〜〜っ、てめェさっきそこ行く言ったろ!?」
「マジで!?サンキュー靖友〜」

しょうがなしになまえのスマフォを指差す。すると飛び起きたと思えば、洗面所に向かうオレに向かって喜びながら背後から抱きついてきた。グニっと背中に押し当たる固まりに一瞬背中の感覚を研ぎ澄ませてしまうのは男の性だ。











「…オレァな、こーいうカップルウヨウヨしてンとこいにくいンだヨ!」
「はいはい、分かったから入りましょうね〜靖友クン」
「バカにしてンじゃねェヨ」

苛立つのは仕方ない。連れて行かれた先は遊園地で、ゲートはこれ見よがしにハートの形をしていた。その上周りはカップルだらけときたもんだ。苛立つオレが目立つらしく、遠巻きで"あそこのカップル喧嘩してる"という勘違いにも程がある台詞が聞こえてきた。なまえとは言うと、気にすることなく、何を乗るかを真剣に見ている。

「ね、アレ乗ろう」

良い笑顔で振り返って、オレの手を引くなまえ。連れられるまま、よく分からねェがジェットコースターに連れて行かれては乗らされて、ブンブン左右上下に振り回されたり、コーヒーカップに乗せられては"靖友の事酔わせてあげるから"と黒い笑みを浮かべたり、とにかく振り回され気がする。が、嫌と言えねェのはなまえがやたら楽しいそうだからだ。

「きもちわり…」
「ご、ゴメン、つい久しぶりの遊園地で…靖友三半規管鋭そうだもんね、酔ったんだね」

賑やかさが落ち着たエリアで、頭をかかえるように木陰のベンチに腰掛ける。少し申し訳なさそうな顔するなまえがオレにベプシを渡しながら、横に座った。

「でもありがとうね、楽しかった」
「そりゃ、良かったネ」
「ふふ、靖友はホント優しいよねー」

"でも今日暑いし、つい風を感じたくなったんだよね"と苦笑いで胸元の服をパタパタしながら風を送っている。玉の汗が身体の曲線を伝うように服の中に消えていくのが見えた。暑ィ、本当どうかしてんなァ…。
横になりたかっただけだ。そう、こいつがやたら酔いそうになるアトラクションに乗らせるからだ。決して腰掛けるなまえの紺色レースのショートパンツから覗く太腿に魅力を感じた訳ではない。
弾力のある白い肌を枕がわりにした。借りた淡い色の濡れたハンカチで顔を隠しながら横になった。

「靖友くん〜〜お金とるよー、高くつくよ〜」
「…」

物騒な忠告なく癖に、手はオレの頭を優しく撫でている。っとにこいつムカつく。擬似的なデートに酔わされる自分にも苛立つし、コレで彼氏がいるっつーなまえにも腹立たしい。つい手のひらで枕がわりの太腿を撫でるとピクリと身体が反応する。ハンカチの下の顔なんて見られたもんにゃ余裕で死ねそうな程、緩んでいそうな事、もちろん気づいて欲しくはない。つーか他人になんてこんなところは見せられたもんじゃなかった。

「なァ、これ浮気じゃねェの?」
「…靖友は幼なじみだし、遊園地付き合ってくれただけじゃん?あと、その他のことは相談…というか、生徒と先生的な感じじゃん」
「そーかヨ」

その言い方の方が余計に卑猥だ。セックスを勉強する生徒と教える先生ってどんな関係だっつーの。白い太腿の上で目を閉じた。