慰めはいらない
「つーか、名前チャン聞いてんのォ!?」
「聞いてるって…」
アパートでやたらうるさくしているのはここの部屋です。大学も週末、宅飲み…と言う名の荒北の愚痴を聞く会だ。参加メンバーは私と荒北、そうサシだ。
荒北の愚痴は"元カノに振られた事だ"それも数ヶ月も前の事をこう時々お酒を入った際に愚痴り始めるのだ。正直、2人で話せるのは良い…だって私は荒北が元カノさんと付き合う前からずっと好きだったのだから。
荒北が最初に元カノさんと付き合う事を教えてくれたのもおそらくは私だろう。そう、それだけ小ざっぱりとした付き合いの出来る友人としての立場が確立していたのだ。
違うのは私から荒北への気持ちに愛やら恋やらという字が入るだけだった。
だから、私は荒北の気持ちにすぐ気付けるだけなのに。
荒北の部屋は、物が乱雑としているけれど、汚くはない。これもきっと彼女相手なら来ると分かった前日はいそいそと片付けていたのだろう。ただただ女扱いしてくれない荒北なのに私は好きなのだ。
感情を隠すのは得意だ。おそらくは荒北の事、自分に向けられる好意に気付いたら離れていくのだろう。そう思うと一層感情を押し殺して友人と振舞うように努力してきている。
友人で良いから側に居たい…ただそれだけなのに、荒北は今日もこうして私の胸を抉るのだ。
あぐらをかいて、缶ビールを机に乱暴に置く荒北。もう飛び散るほど強く置かないでよ…。
「だーからァ、俺は別れるつもりはなかったんだヨ。つーか、あっち二股とかありえなくねェ…?」
「そうだねー」
あぁ、もう…それ何度も聞いた。荒北に聞こえないようにため息を漏らす。頭をガシガシかきながら、欠伸までしている荒北、これはもう飲み過ぎだな。
でも寝たらタオルケットでも掛けて帰れば女っぽいかなって思う私は下心に溢れている。
「…でもまだ好きなんでしょ?」
「アー…かもなァ…」
我ながらなんて酷い質問なんだろう、自分自身を締め付ける質問をしてしまう。そしてなんて酷い男なんだろう、こんなに好きなのに少したりとも意識すらしてくれないなんて。
「あー、くそ…」
ガクッと肩を落とす様にローテーブルに項垂れる荒北。いつもの生き生きとした背中ではなく、小さく見える背中に胸が痛くなった。
"その背中をなんとかしてあげたい"
体良く言えばそうだけれど、本音は意識して欲しい…私の事を見て欲しいにしかならなかった。
瞬間私の中の何かが弾けて、そっと荒北の背後からしっかりとしている首回りに腕を巻きつけるかのように、抱きしめた。
「…んだヨ」
「慰めてあげようかと」
いつもよりも低くドスの効いた声がした。サラッと言ったつもりだったけれど、ヤケに小さい自分の声に緊張しているのだと気付く。胸を荒北の背中にフニンと押し付ける、私なりの最大の努力だ。
「んな気分じゃねェよ」
「…知ってるって、荒北は寝てればいいからさー」
酔ってるフリをしながら遊んでる雰囲気で…自ら脳内に暗示をかけながら、のしかかる様に荒北を押し倒した。
私は、セックスについてそんなに経験がある訳でもない、荒北を気持ち良くする自信もない。だけれど、少しで良いから女としてみて欲しかったのだ。
唖然とする荒北の身体の上に跨がりながら、上の服を脱ぐ。キャミソールとブラという一気に心もとない感じになってしまった。気まずい空気の中、荒北の鋭い視線が突き刺さる。
そして気付く。
「…期待してんの?」
「ッセ」
お尻の付近に少し膨らんだモノを感じる。それだけで…私で荒北が興奮したかと思うと私は有頂天だった。女として見られているようで他ならない。後ろ手で荒北のご子息様をなぞるとピクッとするのが伝わってくる。
「てめェ、何してんの…」
「…大丈夫だよ、ゴム無いし入れないから」
「それ男のセリフだろ、ボケナス」
"好きにしろよ"という呆れた荒北の声から始めるこの行為。でもそれくらい私はもう捨て身だった、明日には…これが終わったらもう友人に戻れないかもしれない。話すことも出来ないかもしれない、そう思うと今だけを考えたかったのだ。
荒北に馬乗りになりながら、キャミソールを脱ぐ。荒北と会うときはいつだって勝負下着だったので下着の心配はしていなかったけれど、好きな人にこう見られるのは、物凄く恥ずかしい。
ずっとキスをしたかった。でも、いきなり口にする事なんて出来なくて、Tシャツを捲って、胸元にキスを落とす。白く焼けていない肌に痕つけたい衝動に襲われるが嫌われるのは嫌で躊躇われた。
「ん…」
慣れてもないこんな行為だけれど、最初で最後の一回だと思うと手は勝手に動いた。パチンとブラを外せば開放感と共に熱い視線が突き刺さる。
荒北の目の前で両手で胸を揉んでみたりする。自分の手なのに、違う手のかの様に思えてしまう。
「っ…」
私のそんなはしたない行為が目に余るのか腕で顔を隠す荒北。
その隠す手をとって、大きな掌を胸に押し当てる。荒北に触られているかと思うと、嬉しくて堪らないのに、この手で元カノさんの身体も好きに弄ったのだろうと思うと胸が痛くなってしまう。それを隠すように、荒北の手の上から自分の手を押し当てて揉むようにしたのだ。
「んっ…はぁ…」
口から出てくる荒い息も荒北に伝わるといい。そしてこんな形になってしまったけれど、私の気持ちも知って欲しい。きっと私は欲情に溢れたはしたない姿を初めて荒北に見せているのだろう。
胸を荒北の手を使って弄っているだけなのに、ジンジンと熱くなる部分がある。
「荒北ー、腰浮かしてよ」
少し浮いた腰から、ジーンズとボクサーパンツを引き抜く。すると顔を出すカチカチになった男性器、それにホッとするくらい私は必死だった。
お腹に張り付いて硬くなっているところを丁寧に手を添えて、舐め始める。この行為なんてするのは久しぶりだけれど、少しでも荒北が気持ち良くなってくれれば良かった。
「っやめろっ…っーのォ」
「ん…ふぁ…おっきく…してるくせに」
「喋んな、バカっ」
ビクビクと時折荒北の腰が揺れていた。口にほうばる荒北のものから我慢液が出てきていて、気持ちいいらしいその事実に嬉しくなる。あぁ、もしかしたら私は笑っているのかもしれないな。
「っとに…名前チャンなにしてェの?」
「まぁまぁ、偶にはサービスだと思ってさ」
あくまでお遊び風を出して、スルリと下の服を脱いだ。私だけ全裸になって、荒北のお腹の上で足を開く。
…こんな事初めてだ。
荒北から秘部が見えるように開脚しながら、私は自ら手を伸ばして、クリを弄り始めてみた。荒北の視線が突き刺さるみたいで、それだけで溢れてくるものがあった。
「ぁ…っん…、あら、きた…っ」
親指で敏感な突起を弄りながら、膣へ指を挿入する。ぐちゅっと水音を立てて呑み込む事になって、そこの状況を知る。私、荒北の舐めただけなの濡れすぎ…なんでこんなに興奮してるんだろ…。そう思うのに熱い視線に浮かされた指は止まらなかった。
「…ん…っア…あら、きた見てる…?」
「っ…見えンに決まってンだろ」
ヤラシイ所を曝け出しながら、自ら快感に身を委ねた。自分から滴れる愛液が荒北のお腹を汚した。その事実が恥ずかしくもあり、また興奮する材料ともなってしまう。
先程舐めた荒北のペニスに手を伸ばすとビクッとする身体。ここで触られるとは思わなかったのだろう。
「ふふ、可愛いじゃん」
「っざけんな、も、服着ろ服ゥ」
バツが悪そうに言う荒北のペニスの上に腰を下ろす。ギョッとするあらだけれど、私だって入れるつもりはさらさらない。
先程唾液で濡れたペニスと私の濡れた秘部を合わせただけなのに、身体の中心が疼く。
「ん、…硬っ…」
「…」
硬くなった荒北のペニスは、どくどくと波打ちそうな程で先走り汁がお腹に滴れていた。
そして荒北のペニス上で緩々と腰をスライドさせる。擦れる入り口から痺れていくこの感覚。クリがちょうど良くあたり、より一層の快感を呼ぶ。
「あ…っ、ぁ、はぁ…んっ…」
「っ…ぅ…」
僅かに漏れる荒北の声が嬉しくて、腰の動きを早める。クチュクチュと合わさる部分から私の愛液が音をたてる。こんなに濡れてしまって恥ずかしい、でも荒北相手だったらもう迷ってはいられなかった。
「あ、らきた…っぁ、きもちい、っのぉ…す、きぃっ…」
「っ…」
情事に任せてコソッと告白したのはある意味この状況なら言えると思ったからだ。荒北のペニスに濡れそぼった秘部を擦り付けながら、片手は胸を揉みしだく。友人のこんな姿はきっと荒北の想像になかったろう、でも知って欲しかった。私が荒北に欲情するというその事実を。
「…っ、てめェ、そこどけヨ!」
「や…っどかない…っん、…」
だって退いたら終わってしまうもの。快楽、関係全てが終わる、ならこの僅かな時間だけでも繋がってたかったのだ。
「チッ」
緩々と動かす私を尻目に、舌打ちしたかと思ったら荒北はベットの下に手を伸ばしてゴソゴソしていた。その私から逃げそうな手を捕まえると、その手にはゴムが握られてきた。
「え…」
「おー、ようやく言ったなァ名前チャンよォ」
唖然とする私を浮かして、手早くゴムを装着した荒北。
「応えてやンよ」
「…へ?」
そう言いつつ、下から秘部にグッとペニスを押し込まれる。濡れまくっていた私のそこはぐちゅっと音をたてて軽く荒北のペニスを受け入れた。
「あっ…!や…っ…」
「…なーにがヤなんだヨ!散々俺の上で煽りまくりやがって」
「し、知らないっ…」
求めていたものだけど、何か違ってきた。入れたかったけれど、繋がりたかったけれど、まさかの展開に頭が真っ白になる。え、なんで私突然荒北とセックスしてるの!?
意地悪そうな顔する荒北によって突きあがる身体。悔しくもその欲しかった快感は身体を巡ってしまう。ずっと欲しかったその刺激に酔いしれてしまうのだ。
「や…っ、だめっ…」
「だから、何がダメなんだヨっ…」
「…っぁ、荒北の事っ…好きになっちゃう…」
「…てめェの気持ちなんかっ…っ、とうの昔に知ってるっつーのォ」
「っ、」
"分かれよ鈍チャン"と寝ていた身体を起こして繋がったまま荒北の顔と至近距離。荒北の言った事実が理解出来なくて、思わず荒北の細い目を見つめてしまう。そんな私にニヤリと笑う荒北から目が離せなかった。
「だーからァ、名前チャンの事とっくに好きだっつってんのォ」
そう言いつつ、触れるだけのキス。あまりの優しさに驚く私。そして、ガタンと一瞬にして押し倒された。背中に感じるのは私が脱ぎ捨てた服だった。
「っ、ぁんっ…酷いっ!騙した…のっ…!?」
「ヤラシかったねェ、名前チャン、1人で濡れまくってたもんなァ」
「っ…ぁっ…ン…違っ、」
「何がちげーんだヨ、びしょ濡れじゃナァイ!?」
「あ…もう…っやだ、ちがうのっ…」
「カワイーじゃねェの、俺の事想ってヤラシクなるなんてェ」
脚を広げさせられて、濡れたそこを見せつけるが如く、ピストン運動をされると、その快感から抜けるような声がでてしまう。
そして両思いになっていた事実よりも先ほどまでの大胆な行為の方が一気に恥ずかしくなってしてしまう。何を私は荒ぶった事をしてしまったのだろうか。
「名前チャンの視線いつも熱かったからなァ…」
「んっ…ぁ。っ…そんなこと…っない」
「あいつの話すると、切なそうにしちまって余計に堪らなかったンだよねェ」
「酷っ…っ…あらき、た、のバカぁっ」
"襲う前に襲われるとは思ってなかったけどな"
その一言に一気に後悔が襲ってくる。あぁ、もう本当あの時の自分に戻って素直に告白しておけば良かった!そう思うのにもうこの激しい刺激と身体の疼くのは止められなかったのだ。
「あ、あらきたぁ…っ好き…大好きっ…もっとぉっ…」
「わーってンよ」
"苛めた分以上に愛してやるからァ"
そう言う荒北と共に果てるのは幸せだった。