凍てつく寒さで夢から覚めた
※上記の話の数ヶ月後
付き合ったからとはいえ元々の関係性の為か、甘くなる雰囲気は皆無だった。
思い返しても、好きやらなんやら言ったのはあの時の一回だけだったのではないだろうか?でも、それでも良かった。
変わらず居心地の良い空間、友人の延長戦に近い、だけれどする事はして…程よく付き合っていた。
ただ、友人の心配する一言「それ本当に付き合ってる?」に少し揺らいだ時は、表面上でも"言葉"という拙いものが欲しくなってしまう。
しかしながら私と荒北との間で甘い言葉を交わしてるという事を想像するだけで少し寒くなってしまう程似合わない。
時刻は0時丁度、お風呂から出て髪を乾かし…いつもと変わらない日だった。その瞬間だ。
"ピンポーン"
「…ぇ、」
戸惑いながらも玄関に向かった。しかしこんな夜更け…いや夜中に訪ねてくる人は居ないはず。おそるおそるドアの覗き穴から覗くとそこには、坊主頭…。
「…金城君?」
「あぁ、悪いこんな時間に。みょうじ悪いが開けてくれないか、荒北を連れてきた」
アパートのドアを開けると雪崩れ込んでくる大男達。
「おー!やっとみょうじの部屋辿り着いたのう」
「あぁ、ようやく俺たちのオーダーは終わったな」
やれやれとばかりに私に荒北を押し付けて帰ろうとする待宮君と金城君を慌てて引き止める。
「え、ぇ、これ、荒北どうしたの!?」
「悪いのぉ、飲ませすぎたんじゃ」
「はぁ!?」
悪いと思っていなそうな待宮君が頭に手をやる。そして金城君がそれでも部屋までは運ぶか…とずかずかと荒北を抱えて運んでいき、部屋の床に雑に転がした。
「みょうじ、荒北が俺たちに与えたオーダーは"俺をみょうじの部屋に連れて行け"だ」
「ちゃぁんと遂行したからのぉ、あとは仲良くしとくんじゃ」
「あのね…」
私のため息も消え果てる、まぁまだこの季節ここに転がしておいても風邪はひかないであろう。仮にも彼氏だというのに私の扱いは雑だった。
「みょうじ、ため息吐きたいのはこっちのほうじゃ、荒北のやついつもながらみょうじがかわええだの好きだだのやかましくて敵わん!」
「荒北らしくて良いじゃないか」
「まぁ荒北が言っていた通り寝巻きがかわええのは分かるのう」
「……ぇ、と誰の話をしてるの?」
聞いた事もない話を淡々とする2人に思わず私が横槍を入れると私の顔を見つめてくる2人。
「…もちろん荒北とみょうじの事だが」
「ぇ!?」
「…」
「…」
「…」
顔を見合わせる私達3人。寝耳に水な言葉に言葉を失うと、背後から伸びてきて首元に回される白い腕。
「あー…名前チャン〜やっと会えたァ…、水ー…つかテメェら帰れヨ」
「ちょ、ここまで連れてきた2人に!!」
金城君と待宮君は"これだからバカップルは…後はよろしく頼むな"と呆れたように笑いながらアパートから帰っていった。
「荒北、はい水ね」
コップに水を汲み、荒北に渡すと一口で飲み干した。ゴクリと喉を鳴らして飲む姿をホッとしながら見つめた。荒北がここまで酔い潰れるのなんて初めて見たかも…こちらの眠気もすっかり覚めてしまい目の前の床に這いずり回る珍獣荒北を眺めた。
「荒北、もう寝よう?」
手を差し伸べながら声をかけると私の手を握りながらベッドに入った。2人で横に寝ると少し窮屈になるスペースが安心した。
「…名前チャンのおっぱい触りながら寝てェ」
「は!?」
驚く私の返事を聞かずに、横になった背後から腕を回して両手で私の胸を服の上からフニフニと揉んでくる。今日は珍しく名前で呼んでくる荒北。そしてソフトタッチのその手を解く事もせずに、まぁそのうち寝るだろうと諦めた。
その瞬間首すじにピタッと舌を押し当てられた。
「ひゃっ…!」
「名前チャン可愛いィ…ビクッとしたァ…」
「…っ、酔っ払いが…!」
「寝る時はブラジャーしねェんだな…気持ちィ…」
身体を捻るが、狭いスペース、胸を揉みしだく様に押さえつけられて逃れられない。はぁはぁ…と背後から息荒く首すじやら耳たぶやらを甘噛みしてくる荒北の刺激に鳥肌がたつ。
「あ、荒北…っ!」
「"靖友"がいー…」
「っ、ゃ…」
「呼んでくれねェのォ…?」
「…恥ずかしい…っ」
「その顔も可愛いなァ…もっと見てェ」
「へ…?」
「だぁからァ、もっと名前チャンの顔見てェって言ってんのォ」
グリンと荒北の方に向かされ見つめ合う。聞いた事もない言葉のオンパレードに耳を塞ぎたかった。
「ぁ〜…やべェな…我慢出来ねェ…」
お酒に呑まれてるやつがするような据わった目をしながら、私の口に噛み付いてくる荒北。合わさる口、絡む舌からアルコールを飲んだ気分だ。
「ぁ…はぁ…ぁ…ちょ、荒北…っ」
「名前で呼べってェ…」
「はぁ…や、やすとも…っ…」
思わず目を瞑った私の瞼にキスが降ってくる。目を開けると見た事ないような優しい顔した荒北がいた。
「…俺幸せで死ぬかもォ…」
「…ゃ、やすともは死んじゃや…」
荒北の囁きに釣られて滅多に言わない言葉を小声で返したら最後だった。
頭を引き寄せられて、深く舌の侵入を許した。緩い水音が合わさる口から漏れ狭いワンルームに響く様になった。身体を弄る荒北の手を思い出した様に止めようとするが、軽く解かれ、服の中に手が入る。
「ぁ…っ」
「いつもより硬くなってンなァ…ホラァ」
「ぁんっ!ゃ、やすとも…ぉ…」
「すげぇおっぱい気持ちィ…名前チャンのおっぱい好きィ…やわらけェ」
この酔っ払い!と頭の中で突っ込んでも止まる事ない"荒北らしくない言葉"に興奮してしまう私も、先ほどからの荒北からのキスで酔いがうつったのかもしれない。身体に走る甘い刺激と言葉にぎゅっと身体を這う荒北の手を掴んだ。
「入れちゃダメェ…?」
私の掴んだ手を舐めながら、弱々しく聞いてくる荒北にダメなんて言葉は見つからなかった。いつもだったら気の乗らない時なんてダメやら言っていたのに…。いつの間にか絆されてしまっていたようで頷いた。
「入れて良いのォ?」
「…っ、入れて欲しい…っ」
荒北の顔なんて見れなくて首に顔を埋めながらおねだりをする。いつも以上に近い距離に心臓が破れそう…、そして茹だりそうな顔は見られたくなかった。
一心不乱に二人で下のジャージをベッドの下に脱ぎ捨てて、弄り合う。荒北が濡れた秘部に手を伸ばせば、私が荒北の主張している硬い雄を扱く。
「…ぁ。はぁ…っ、」
「名前…っ、すげェ可愛ィ…気持ちィ…」
「ゃ…っ…はぁ…やすとも…っそんなに弄っちゃ…だめぇっ…」
覆い被さる荒北の汗ばんだ顔にキスをする。グチョグチョと水音が双方の身体から放たれて、興奮となり脳内を犯す。いつもの私達でない行為に戸惑いを感じながらも、快感に酔ってしまう。目の前の火花散らしそうな景色に目を瞑る。そして腰を揺らせ、限界を知らせた。
「も……だ、め…っ」
荒北が私の目の端から溢れた涙を掬うように舐める。その優しさから首に手を回して応えた。
「名前…」
「…ん…?」
「…っ」
目の据わったままの荒北が言葉を詰まらせた。下を向いたかと思いきやガサゴソと避妊具を装着して、覆い被さってくる。
「…コレなしで入れたかったンだよ」
「…ぇっ…。ぁ、っん…!!」
"ったく分かれよ鈍チャン"と頭を小突きながら、グチュッと水音をたてながら挿入する荒北。それに思わず声が漏れた。構わず立て続けに腰を振ってくる荒北に腰が引ける。
「ぁ〜…やべェ…名前ン中気持ちィ…」
「ン…っぁ、や、はぁ…っや…」
「ゴムなしは卒業してからにしようねェ…」
「ん…っぁ…分かったから…ぁ!」
耳元でうるさいくらい甘く喋る荒北に頭がパンクしそうだった。この荒北何者!?浮かぶ疑問も激しく突かれる程打ち消されてしまう。
「ぁ…っ、ゃンっ…!」
「名前好きィ…大好きィ…愛してるゥ…」
「ぁ…っ!わ、分かったからぁ…っ!奥だめ…ぇ…っ」
「名前は言ってくれねェのォ…?」
「…っ、ぁ…やすとも好きっ…ン…」
酷く荒い呼吸をしながら吐き出す甘い気持ちなんて、付き合った初日以来なのではないだろうか。涙ながらに吐き出した私の気持ちも明日の朝には忘れられてくれると嬉しいくらいだった。言葉が必要だとかどこの頭が思ったのだろうか。
「…名前…入れたまま寝てェ…」
「え!?」
突然動きが止まったかと思ったらガサゴソと体位を横向きにさせられる。そして横になりながら後ろから挿入し直して、私の身体に纏わり付いてくる白い腕。
そして荒北は絶頂を迎える事なく、穏やかに寝始めた。
「これが拷問か……」
壁に吐き出した私のため息も荒北は知らないのだろう。その、先ほどと一変したその穏やかな寝息では。
挿入されている雄をそっと抜こうとしたら身体を捕まえられて密着させ奥まで満たされる。敏感になってしまっていた身体は物足りなかった。
なんで…っ、これで寝ろっていうの!?引っ叩きたいところだけれど、私を抱きしめて安心してそうな荒北を見るとそんな事は出来なかった。足元から布団を足を使い手繰り寄せて布団に一緒に包まり、そして私は羊を数えはじめた。
朝、記憶がしっかりと残っていた荒北が頭を抱えて唸る。その口にキスをするまであと4時間。