「おっ、こんなところに居やがったか!秋風!」


「……」





秋風は自分を呼ぶ声に一度振り向くが、直ぐに視線を洗濯物が干されている方へ向き直す。秋風の反応に、彼女に声を掛けた張本人である原田は苦笑した。






「何だよ、返事くらいしてくれたっていいんじゃねぇのか?」


「…生憎私は新選組の者達と馴れ合うつもりはない」


「そう言う割には俺達の世話をしてくれてるじゃねぇか」


「勘違いするな、千鶴が望んだことを私がしてるだけさ」





私の意思ではない、とハッキリ言い切る秋風。そのは瞳には一切の迷いが見えない。






「…で、私に何か用があってきたんだろ?」


「ああ、そうだった。これを、渡しに来たんだよ」


「…握り飯…」





原田の手から渡されたのは、三角に握られた握り飯を二つ。…これをどうしろと言うのだ。






「食えよ」


「…朝は食欲が湧かないから食べたくないんだけど」


「千鶴がわざわざ握ってくれたんだぜ?お前が食べてくれるようにってよ」


「…!」





いらない、と返そうとしたが、千鶴の名前が出たことに反応を示す秋風。…彼女が絡んでいるなら話は別だ。






「…いただきます」


「おお、ちゃんと食えよ。お前、ただでさえ細い体してんだからよ!」


「……」





原田の言葉に何も答えず、握り飯を口に運ぶ秋風。…そんな細いか、とふと自分の手首を裾から覗かせた。
すると、本人よりも原田の方が反応を見せた。





「お前、ほんと細ぇな!ちゃんと飯食ってんのか!?」


「…気安く触れるな」


「その割には筋肉はちゃんとついてんのな。千鶴はともかく、秋風は鍛えてそうだしな」


「……」






もうこうなったら好きにしてくれ、とでも言うかのように…秋風は片腕を掴まれながら、もう片方の手で握り飯を食べたのだった。







「……お、ちゃんと食えるじゃねぇか。だったら最初っから皆で食えばいいのによ。お前が手伝った飯はいつだってうめぇんだし」


「…千鶴が握ったと言うから仕方なく、だ。普段なら食べやしないさ」







原田の言葉に秋風は淡々と答えてながら、手を合わせ、食事を済ませた。