「…わかった、手伝ってやる。千鶴の頼みなら仕方がないから…」


「ありがとな!千鶴!!頼んでくれてよ…!」


「ううん…このくらいのことしかできないから…」


「で、私は何をすればいい?」






さっさと事を済ませようと用件を聞く秋風。このメンバーでやらなければならないことは大きく分けて三つ。
一つは猫を捕まえること。二つは土方に知られないよう目を見張っておくこと。三つは勝手場を片付けて、新たに食事を作り直すこと。






「…で、材料はどのくらいある?」


「どうだろうなぁ…魚も人数分しか用意してなかったみてぇだし」


「つーか、俺そんな料理とか得意じゃねぇんだが……ま、そのために秋風に来て貰ったんだけどよ」







結局秋風は勝手場の方に回ることとなった。千鶴は平助に引っ張られ、土方の相手をしに行っている。…少し彼女から目を離さなければならないことは気がかりだが、仕方がない。







「大根があるか…葉はおひたしにして、味噌もこれだけ残っているから味噌汁くらいは作れる。大根は具にするとして…後は魚を………」


「…お前って、ほんと顔に似合わず料理とか得意だよな…」


「おい新八!何余計なこと言ってるんだよ!!」


「や、だってよ…!」


「…よく言われるさ」







永倉と原田のやり取りを横目に見ながら、軽く苦笑混じりに答えると二人の瞳が丸まった。






「…秋風、お前…そんな顔も出来んじゃねぇか!」


「…は…?」


「いつものムスッとした顔より、今の顔の方が全然いいぜ?」


「………」







うんうん、と頷く二人に秋風は首を傾げた。…一体今自分はどんな顔をしていたと言うのだろうか。







「…ま、いいさ。さっさと片付けて、作るよ」


「おう、任せとけ!!」


「こっちの方は俺がやるぜ」






ささっ…と秋風の指示で手際よく片付けを終えて、食事の支度へかかる。味加減やら細かい作業は皆秋風が受け持つこととなった。







「…秋風の包丁さばき、すげぇな。板前みてぇだぜ…!」


「長年しているから」


「片付けなんかもささっとしちまうし…将来はいい奥さんなるんじゃねぇか?」


「!」







原田の何気なく放った言葉に秋風は一瞬動きを止めた。…が、すぐに何もなかったかのように再び手を動かした。







「私が家庭を持つなんてことはないさ」


「?なんでだよ…んなことまだわからねぇじゃねぇか」


「…その気がないからだよ」







切り終わった大根を味噌汁の中へ入れ、蓋を閉めた。そして今度は焼いている魚の方へ目をやっていると…







「ちょ、悪い左之!総司達の方が気になるからちょっと行ってくるぜ」


「あ、おい新八!」


「秋風!美味ぇ飯を期待してんぜ!!」


「………」






じゃ、と手を振り、猫探しに出ている沖田、斉藤の方へと去っていく永倉。…要するに食事の準備を押しつけたかったわけだ。







「あんにゃろー…ありゃ絶対戻ってくる気ねぇぞ…」


「わかりやすい男だな、永倉は」






はぁ、と今日何度目になるかわからない溜息を零しながらも、秋風は食事の準備を続けた。