「…この二人が、昨晩の目撃者?なんだ、まだ小せぇガキじゃん」


「お前がガキとか言うなよ平助!」


「だな、世間から見りゃお前も似たようなもんだろ」


「うるさいなぁ!おじさん二人は黙ってなよ!」






千鶴に対しても、自分に対してもジロジロ視線が向けられているのが感じられる。それを不快そうに眉を寄せながらも秋風は堂々と広間に腰を下ろした。その後に千鶴も秋風の隣りに腰を下ろした。






「…で、どうするんです?土方さん」


「………」






土方、と呼ばれた男の方に視線をやるとその男は静かにこちらに視線を向けながら黙っている。千鶴の様子を横目で見れば、不安そうな表情をしていて、ぎゅっと拳を強く握っている。……彼女がそこまで重く考える必要などないのに。






「…それより、本当なのか?こいつらが見たって話は」


「斉藤君、改めて説明してもらえるか?」


「昨晩、不逞浪士と遭遇し、斬り合いとなりましたが我々が処分致しました。その折にこの者達に目撃されました」


「…っ私、何も見てません…!」






壁に寄りかかっている男達の問いに千鶴は身を乗り出して答えた。…先程秋風が指示した通りに。その様子を秋風は静観した。






「本当に?」


「見てません!」


「あれ?総司の話だとお前達が隊士たちを助けたって話だったが…」


「ち、違います…私たちはその浪士から逃げていて…そこに新選組の方々が、」


「少なくとも、この者は何も見ていない。私がずっと、見せないようにと視界を閉ざさせていたのだから」


「…っ秋さん…!」






感情的になり、余計なことまで口走ろうとした千鶴の話に割り込んで、秋風は話を始めた。






「仕える御方の目に触れていいものだとは思わなかったからな」


「…つまり、そっちのお前は隊士たちが浪士を斬り殺している場面を見ちまったってことだな」


「あぁ、そうだ」


「!?秋さんっ…」


「静かに。」


「でもっ……」


「このようなことで、貴方が取り乱す必要はないよ」






慌てふためく千鶴を宥めるように秋風は言葉を続ける。大丈夫だ、と言っているかのように…その瞳はどこか優しく温かいものだった。







「ほら、殺しちゃいましょうよ。口封じするならそれが一番じゃないですか」


「!?そんなっ…!秋さんはっ…」


「……流石は評判の高い新選組。目障りなものは全て排除するってわけか」






冷たい瞳を宿し、総司と呼ばれる男の言葉に秋風も嫌味を口にする。やれるものならやってみろ、とでも言うかのようだ。