「…い、今女って……!」





千鶴もバレたことに驚きを隠せないようで、口をあんぐりと開けている。…が、秋風はここでも冷静だった。







「…バレていたか」


「やっぱりな。そりゃ見りゃわかるだろ。二人とも細ぇ割にどこか丸みある女みてぇな体つきしてるしな」


「………」






原田の言葉に自分の体を見直す。…少し鍛え足りないのかもしれない。後日もっと絞らなければ…と一瞬思った…が、今は体つきのことなど後回しだ。






「まぁ、それなら話が早い。私たちが何故このような格好で京の町をうろついていたのか…私たちの事情も聞いてもらおう」


「ならば広間へ連れて行く。副長達にも事情を聞いてもらう必要がある」


「わかった」






斉藤の言葉に秋風は素直に頷き、立ち上がる。それを茫然と見ていた千鶴にも立ち上がらせるよう促すと、彼女も慌てて立ち上がり、後を追ったのだった。









「…これは驚いたな、まさか二人が女性だったとは…!この近藤勇、一生の不覚…!!」


「どう見ても女の子じゃないですか?…まぁ一人は別として。」


「しっかし…そう言われると、本当にそうとしか見えなくなんのな!」


「そ、そうは言っても女だって証拠はねぇだろ!?」


「何だよ、まだ疑うのかよ新八。だったらいっそこの場で脱がせちまうか?」


「えぇ!?」






未だ二人を女なのかと疑いをかける永倉に、原田が提案すると、千鶴がビクリと体を揺らし、敏感に反応した。






「…ご要望とあらば、私が脱ぐが?」


「!?だ、駄目ですっ秋さん!そんなことを軽々しく…!!」


「いかん!いかんぞ!!嫁入り前の女性にそのような真似をさせるなんて…!!」


「……そ、そうか…」






顔色一つ変えず、軽く着物の襟元を緩め、腰紐を解こうとする秋風を千鶴と近藤が慌てて止めに入った。二人の勢いに押され、珍しく秋風も戸惑ったかのように言葉を詰まらせた。







「…で、お前ら二人がわざわざ男装してまで成し遂げたいことって…一体何なんだ?」







こほん、とわざとらしく咳をし、話を本題へと戻す土方。そして秋風もそれに頷き、話を進めた。







「…私は辻秋風。そして彼女は…」


「雪村千鶴と申します…」


「…彼女の父が御役目のために、半年ほど前に江戸を離れて京に訪れている。離れてしまってから、いつも文を交わして連絡を取り合っていたのだが…一月ほど前から、文が届かなくなった」






それに心配になった彼女はいてもたってもいられなくなって江戸を飛び出して来たこと、自分はその付き添いでついてきたこと……簡単に今自分達が置かれている状況を秋風が説明すれば、近藤が瞳をうるうる潤ませているではないか。







「ううっ…!何と!!そのような事情があったとは…っ」


「…近藤さん、何も泣かなくても…」


「し、しかしだなぁ…トシ…!」






…なるほど。新選組局長はどうやらこの中で一番可愛らしい性格をしているようだ。その様子を秋風は静かに眺めていた。





「…お伺いしますが、もしや貴方の父君と言うのは、蘭法医の雪村綱道氏ではありませんか?」


「…父を御存じなんですか!?」







山南の問いに千鶴が肯定の言葉を告げると、場の空気が一変した。皆の表情が少し曇りが入る。