「…まさか、綱道さんの娘さんだったとは…!」


「…おいお前!…どこまで知っている?」


「ど、どこまでって……」


「惚けるな、綱道さんのことだ」


「…さぁ?私たちは何も知らないさ。もしや綱道さんの身に何かあったということか?」


「えっ……」







千鶴の瞳が不安げに潤ませる。それを宥めるかのように秋風は先程ようやく解かれた手のひらで彼女の頭を優しく撫でた。






「…一月ほど前、綱道さんが勤めていた診療所で火事があり、それ以降行方がわからなくなっている」


「焼け跡から遺体は見つかってません。ただ、何らかの事件に巻き込まれた可能性はあります」


「そんなっ……」


「俺達新選組も綱道さんの行方を追っているところだ。…おい、お前」


「………」







土方の視線が千鶴から秋風の方へと移り変わる。







「お前が昨夜の件をきっぱりと忘れるって言うんなら、お前達二人は俺達が保護してやる」


「心配するな!君の父上は必ず私たちが探し出して見せるとも!」


「…だとさ。どうする、千鶴」


「…え、えっと…あ、ありがとうございます!」






秋風の促しに応えるかのように、千鶴は深々と頭を下げて礼を言った。…つまりはここで厄介になるということだ。







「まぁとりあえずは命が助かってよかったね。とりあえずは、だけど」


「まー女の子って言うんなら手厚くもてなしてやらねぇとなぁ!!」


「新八っつぁん、手のひら返すの早すぎ」


「いいじゃねぇか!これで屯所の中が華やかになるんだしよ」






ざわざわと騒ぎ出す連中に、千鶴はおどおどと戸惑いを見せている。その隣で秋風は威風堂々と言った態度で身動き一つせず、聞き流している。



こうして二人は新選組屯所で、男装を続けながらも置いてもらうことが決まったのだった。