「おいこら、蒼乃」
「………」
「蒼乃!!」
「………あ、何ですか平子さん」
「何ですか、やないわ!!お前、飯食うときくらい研究から頭離れや!飯食いながらガチャガチャされる身になれ!大体平子さんやめいって何度言やわかるねん!」
もぐもぐ、と夕食を食べながらも、ペンから手を離さず数式を解き続ける蒼乃。行儀悪く、真子が怒るのも無理はない。
「…そうですね、すみません」
「わかればええんや、ほな、それ片付けてさっさと飯を…」
「それでは失礼します」
「ちょい待てや!」
さっさと食事をやめて、席から離れようとする蒼乃。彼女の考えていることが全く読めない。
「おま、まだそんな飯食っとらんやんけ!何食べんのやめてんねん!」
「優先するべきものを優先しただけですが?」
「阿呆!やでそない体がヒョロヒョロしてんねん!!」
「いつもヘラヘラしてる平子さんに言われたくないです」
「何やと!?」
「うっさいわハゲ真子!!」
「痛ぁああ!?」
蒼乃の挑発するような言葉に真子が声を上げると、ひよ里の蹴りが真子に飛んできた。
「何すんねんひよ里!!」
「うっさいねん!さっきからギャーギャー騒ぎおって!!」
「ほな蒼乃はどうなるんや!!」
「蒼乃はこういう奴やで仕方ないねん!!」
「何やそれ!わけわからんわ!!」
「蒼乃!お前も大人しゅう飯食っとったらええねん!」
「アイツならもうここにいねぇぞ」
「「何やて!?」」
羅武の言葉に真子とひよ里は同時に声を上げる。二人が揉める原因となった張本人はスタスタ…と本を片手に持ちながらそそくさと帰ろうとしているではないか。
「ちょい待て蒼乃!!お前何知らん顔して帰ろうとしてんねん!!」
「…だって私、知りませんから」
ちらり、とこちらに一瞬だけ視線を向けると…再び蒼乃はスタスタと歩いて行く。その後ろ姿に何度も呼びかける真子だったが、一度も振り向くことはなかった。
「…ほんま、可愛くない女やな」
ぽつり、と呟いた真子の言葉も蒼乃には届かなかった。
|