「…ちょっとは平子さんに対して優しく接してあげてもいいんじゃないんっスか?」


「そんな必要はないです。それより喜助、隣の棚の瓶取って」


「えーっと、これっスか?」


「そう、それ」





喜助から瓶を受け取ると、蒼乃は夢中になって研究に没頭している。無表情ながらも普段よりもどこか楽しげである。






「大体、平子さんがなんで私に構ってくるのかよくわからない」


「ハハハ、さすがの蒼乃さんもそのことだけは解明できないようっスねぇ」


「…本当に、わからない。方程式などがあるなら楽なのに」






はぁ、と溜息を零す蒼乃。話の中心である平子…全く、彼のことは昔からよくわからなかった。彼は護廷十三隊に所属していたころから、必要以上に関わってこようしていた。…いまいちよくわからなかったが。






「…あ、これは……」


「へ?どうしたスか、蒼乃さ…」


「喜助、逃げて」


「え?」







次の瞬間、ドガーンっと大きな騒音と共に、蒼乃の地下室は散らかり、彼女自身も爆発の影響で全身真っ黒だ。






「……何やらかしたんっスか、蒼乃さん」


「薬の配分を間違えた」


「あーあ…僕まで真っ黒になっちゃったじゃないっスか」


「…眼鏡も割れたから買い替えなきゃ…」


「…それにしても、」


「………何」


「もう少し女っ気があってもいい気がしますがね…蒼乃さん」






はぁ、と溜息をつきながら割れた眼鏡を手にし、辺りを見渡している蒼乃へ喜助は素直な言葉を零す。が、蒼乃はその言葉に不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。






「うるさい」





女扱いされるのを嫌う蒼乃に対してはあまりに失言で、喜助はあぁやってしまったと己の発言に顔をしかめたのだった。