そんな話聞いてません!
「も、申し訳ございません!神楽さんっ!」
深々と神楽に向かって頭を下げる月白。その隣にはのうのうとソファーに座り、寛いでいる神威の姿がある。
「だっ団長の悪事は部下であるわ、私が…引き受けますのでっ…!どうか、お許しください……」
「なんで神楽に向かって頭下げたりしてるの?月白」
「きゃっ!?」
ぐい…と髪を掴まれ、月白の頭を上げさせる神威。にっこりとほほ笑みを浮かべながら。
「い、痛い痛いです、団長!」
「月白は俺にだけ従ってればいいんだって、いつも言ってるだろ?」
「ご、ごめんなさいぃ!団長ぅ!!」
今度は神威に向かって謝罪の言葉を告げる月白を、銀時は哀れみの目で見つめていた。
「…アンタもこんな上司の下で苦労してんだねェ〜月白ちゃん?」
「…うぅ…」
銀時の言葉に月白は泣きたくなった。
「ねぇ月白、俺お腹減ったんだけど」
「そ、そんなこと言われても…私何も持ってませんよ……!」
「え、月白がいるじゃない」
「………はい?」
次の瞬間、何がどうなったのか自分でさえわからないほど素早く…団長に押し倒されていた。
「…なっ!?だ、だだ団長ゥゥ!?」
「ケラケラ…もっと色気ある声出せないの?月白」
…そんなことを言ってる場合じゃない…!ものすごい殺気がこちらに向けられているのがわかるんだけど…!!団長に似た殺気が……!!
「神威ィィィ!!お前いい加減にするアルぅぅ!!やっぱりお前はあたしが殺してやるねェェ!!」
次の瞬間、夜兎の武器と言える傘が月白のすぐ真横の床へと突き刺さった。
「きゃああああ!?ごめんなさいごめんなさいィィ!!ちょ、団長!退いてくださいィィ!!」
それにびびった月白はバシバシっと必死で神威の胸板を叩いて反抗してみるが、効果はない。神威は退く気配を見せない。
「ほんと月白って苛めがいがあるよね。もっと怖がった顔してよ、可愛いから」
「ひっ!?な、何言ってるんですかァァ!?こんなときに……」
「…おいおいてめーら、イチャつくんなら他当たれやコノヤロー。嫌味か?独り身の銀さんに対する嫌味か?」
「ち、違います!!絶対に違いますからっ!!だ、団長!!いいから退いてくださいいっ!」
「あぁ、人前じゃ恥ずかしいって?仕方ないなー月白ってば照れ屋さんなんだから」
「それも違います…!!」
銀時と神威の言葉を全力で否定する月白。何とか貞操は守り切ることができたのだった。
「…ほんと、騒がせちゃってごめんなさい!お詫びと言っちゃアレなんですけど…よかったらこれ、食べてください」
「おォォ!?すげーじゃん、月白ちゃあん?」
万事屋のテーブルにはたくさんのごちそうが並ばれている。それは全て謝罪の意をこめて月白が作ったものだ。
「やっぱ地球のご飯が一番美味しいね、月白」
「って、団長…っ貴方が食べちゃ意味ないですよ……!」
もぐもぐ…と食欲旺盛な神威を必死で呼びとめる月白。そんな中、万事屋のメンバーも月白の作ったごちそうに箸を入れた。
「…まぁまぁアルな」
「何偉そうに言ってるの神楽ちゃん!?せっかく月白さんが作ってくれたって言うのに……!しかもおかわりしてるくせに!!」
「あ、いいんです新八さん!団長の妹さんである神楽さんの口には合わなくても仕方ないですから……」
神楽や新八の会話に苦笑する月白。そして立ち上がり、春雨に帰る準備をし出す。
「ほら団長…!そろそろ帰りましょ…?阿伏兎さんも首を長くしてお待ちですよ、きっと…!」
神威を引っ張って、連れて帰ろうとする月白だったが…神威の口から出た次の言葉に動きを止めた。
「あぁ、もう船なら行っちゃったよ」
「………へ」
「しばらく月白と地球に滞在するって、阿伏兎には伝えておいたから」
「……え、」
「だからさー、月白もご飯食べなよ、早く食べないとなくなっちゃうよ?」
……団長、なんてことしてくれちゃったんですか…。
「じゃ、じゃあ私たちどうするんですか!?これから…」
「とりあえず1か月ほど旦那のところで世話になればいいだけだよ。ね?旦那」
「ふざけんなァァ!!何勝手に事進めちまってんだよ、このクソガキがァァ!!」
銀時の怒鳴り声が近所にまで響き渡ったのは…言うまでもない。
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