守ってあげるよ
いるはずのない彼が、今自分の目の前にいる。その事実が、月白を混乱させた。





「いつまで座り込んでいるつもり?」


「あ、だっだんちょ……な、なんでここに……!」


「嫌だな、俺が月白の居場所をわからないはずがないだろ?」


「えっ…」


「あーあ、こんな手錠なんかされちゃってさ〜」





ツカツカ、と座り込んだままの月白のもとへと一歩、また一歩と歩み寄ってくる神威。が、未だ状況を呑み込めずにいた月白。彼女は先ほどと変わらず混乱していて、何度も神威の顔を見ていた。





「ほんと月白って鈍くさいよな〜よくこんなんで春雨にいれるよ」


「そ、それは団長が無理矢理っ……きゃっ!?」





不意に腕を掴まれ、立ち上げさせられる月白。自分で上手くバランスをとれなかったため、ふらふらと不安定に揺れる彼女の体を包み込むかのように神威は抱き締めてきた。






「…ま、そうじゃなきゃ俺がつまらないんだけどさ」


「だ、団長っ!?」


「心配しなくてもいいよー月白。もしまた、鈍くさい月白がこんな目に遭ったとしても、俺がちゃんと見つけてあげるよ」


「…!」


「月白は、俺のものだからね」





ククク…と喉を鳴らして笑う神威の腕の中にすっぽりと収められている月白。…彼女の瞳がゆらゆらと潤み始めた。





「ふぇ、だんちょ……っ、私、失礼な態度をとった、の…に…」






先程まで緊張しっぱなしだったのが緩んで、今頃になって恐怖を思い知らされた。ぐずぐずと泣きながら言葉を紡ぐ月白の様子に、神威は楽しげに笑みを浮かべた。






「あんなの痛くも痒くもないヨ。むしろ、月白があまりにもわかりやすくて、面白かったし」


「………へ?」





さらり、と神威が放った言葉がどうも上手く呑み込めず、月白は神威を見上げた。






「そんなに俺が好きなの?月白って。自分自身を見てほしくて、思わず俺に冷たい態度をとっちゃうほど」


「〜っだ、団長の…馬鹿ぁ!!」





神威の発言に月白は顔を真っ赤に染め上げながらも大声で怒鳴った。思わず先程まで流していた涙が引っ込んでしまうほど。





「…おいおい、てめーら。何再会した途端イチャつきあってんの?発情期ですかコノヤロー」


「…あっ、ち、違うんです、銀さん!これは、そんなんじゃなくて…!!…って、あれ…万事屋の皆もなんでここに…!?」


「全く見てらんないネ!せっかく助けにきてやったって言うのに、呑気にちちくり合ってるって何ヨ!」


「ちょっ神楽ちゃんんん!!その言い方やめよう!皆が勘違いしちゃうから!板はまだ二人ともそんなことしていないから!!」


「やっ、まだとかじゃなくて、一生そんなことないですからっ!!」


「何言ってんの月白。今日から毎晩愛し合うことになるって言うのに」


「なっ、何言ってるんですか団長っ!!そんなことあるはずないですよ!!」





皆それぞれの発言に月白は慌てて弁解を始める。が、そんなものは神威からすれば無意味なものだった。






「まぁ、いいよ。月白がその気になるまで待っててあげる。処女だし、最初はやっぱ大事に…」


「わーわーわー!!!なっなんてことを口走らせてるんですかぁぁっ!!」





神威の発言を遮るかのように、月白は大声を上げたのだった。

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