部下同士で相談事
「阿伏兎さん、どうにかなりませんかね……」


「どうにもなんないだろーね。」


「そんな冷たい一言で片付けちゃわないでくださいよー!!」






海賊春雨の船の甲板で話しているのは月白と阿伏兎。話の話題はもちろん、二人のどうしようもない上司のことだ。






「それにしても団長にしちゃ珍しい子を選んだもんだな」


「珍しい…?え、私ってどこか珍しいんですか?やっぱ、人間の血も混ざってるところが……?」


「ん、あぁ、そういう意味じゃなくてさ。ほら、うちの上司は"強い"ものにしか興味持たないだろ?なのにうちで一番の弱者の君を選んだのが珍しいってだけのこった。」






阿伏兎の言葉に頷きを見せる月白。確かに彼は戦うことしか見えていない。それ以外のことは虫けら同然と言っても過言じゃない。…なのに、





「こんな雑魚に、どうして構ってくるんだろう…団長ってば」


「ケラケラ…月白が俺のいい玩具だからだよ」


「お、玩具ってそんな阿伏兎さん…そこまで言わなくても……」





………あれ?今のって……絶対阿伏兎さんじゃないよね?
だって独特の笑い声が耳に届いたし、"俺"って……







「何してんのさ月白。俺ほったらかしにして阿伏兎なんかとイチャつくなんていい度胸だね」


「…あ!…阿伏兎さん、は……」





先程まで阿伏兎がいた場所を振り向くと……かなり向こうの壁まで吹き飛ばされ気絶している阿伏兎の姿が視界に入った。





「…阿伏兎さんがあそこで眠っちゃってるのってもしかしなくても団長の……」


「あァ、ちょっと目障りだから退いてもらったんだ」





……や、それ退いてもらったんじゃなくて強引に場所奪ったんですよね?…とはいくらなんでも言えなかった。




「駄目じゃない、月白。俺を除け者にして阿伏兎なんかと密会なんか開いちゃって。」


「だ、だんちょを除け者なんかに決してしてないですよぉ!!」





半泣き状態の月白をよそに神威はケラケラ笑う。





「じゃ、行こっか。月白」


「…へ……ど、どこへ…?」


「決まってるでしょ?」







「僕の部屋だよ」なんて言葉、聞きたくなかったよ…



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