君は俺のモノ
「ケラケラ…ほらほら、ちゃんと真剣にやらないと死んじゃうよ?月白」


「ぎゃーっ!!」





神威の拳が月白のすぐ横を擦る。その証拠に彼女の頬が微かに血が滲んだ。





「だ、団長ゥゥ!!なんで私、殺されかけてるんですかァァ!」


「なんでって、俺がわざわざいつまで経っても戦闘力が成長しない月白を鍛えてあげてるんじゃん。」





にこにこ微笑みながらまた拳が振り落とされ、月白はそれをただただ必死に避けた。





「月白ってば攻撃避けるのはずば抜けて上手だよね」


「ひ、ひぃぃっ!こ、これ最早鍛えるとかの問題しゃないですよぉっ!!殺す気満々じゃないですか、殺気ムンムン放出してるじゃないですかぁぁ!!」


「ケラケラ…だって殺す気でやってるし」


「わ、わたしまだ死にたくないですーっ!!」





月白のは泣き叫ぶ声が春雨の船内に響き渡る。




「大体、月白が悪いんだよ」


「へ……っわ、私…!?」


「俺以外の奴の攻撃を食らったんだから、さ!!」


「うひゃあっ!?」





だ、団長以外の攻撃……?あ、もしかして……





「き、昨日の任務のこと…言ってます?」


「ケラケラ…ちゃんとわかってるじゃん」





……昨日、とある星の天人の一族を抹殺すると言う任務があった。月白はそんなの嫌で嫌で堪らなかったのだが"命令"と言われたら仕方がない。神威の右腕とも言える阿伏兎と一緒に戦闘に交ざったのだが……弱い月白が化け物とも言える敵と張り合えるはずもなく怪我を負ってしまった。


…が、人間とのハーフとは言え夜兎族の血も流れている月白は一晩の内に回復した、と言うのに。




「ま、また今夜も寝込む羽目になるじゃないですかァァ!!」


「大丈夫、俺が止めを刺してあげるから」




全然大丈夫じゃないィィ!?





「って、なんで昨日怪我を負っただけで団長に殺されかけなきゃいけないんですかァ!?」


「そんなの決まってるじゃん」





にこにこ笑みを浮かべながら、この人はまたも残虐な言葉を口にした。




「月白を傷つけていいのは俺だけだから」





その言葉に、月白はビシッと動きを止めた。





「…っあ、あのすみません団長、今聞こえたのって幻聴じゃ……」


「他の雑魚が月白を傷つけるなんて気に食わないんだよね、俺」





ケラケラまた笑いながら容赦なく拳を振り落としてくる神威。月白はそれをひいっと怯えながらも避けた。





「月白は俺のモノなんだから、月白を好きに出来るのは俺だけ。そうでしょ?」





…いつから私は貴方様のモノとなったんですか!?なんて、言い返すことも出来ず、月白はただただ必死になって神威の攻撃を避けていたのだった。


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