たまには脱走を
久々に地球に来た海賊春雨。闇取引やら仕事があるのはわかってはいるが、月白の頭の中にはそんなことなど残っていない。
「やっぱ地球のご飯が一番美味しいんだよなぁ…。服とかもお洒落だし」
元々地球に住んでいた月白。他の仲間たちより地球には詳しい。また、地球には宇宙のいろんな星々にはないものがたくさんある。……なので、
「…仕事に抜け出したのバレない程度に、すぐ船に戻れば大丈夫だよね……!」
…そう、月白は神威やらに黙って抜け出してきたのだった。
「まずが甘いものでも食べよう!ケーキ好きなんだよねっふふ……!」
楽しげに笑いながら月白は江戸の町をふらふらと歩いて行くのだった。……が、もちろん月白が抜けだしたのがバレていないはずがなかった。
「月白がいなくなったって、どういうこと?」
「だから、そのまんまの意味っすよ団長」
ポリポリ、と顎を指で掻きながら報告する阿伏兎の言葉をにっこりと聞き直す神威。
「久々の地球ってことであの子も嬉しそうにしてましたからねぇ〜…まさか抜け出すとは思わなかったけど」
「あーあ、俺を置いて勝手にどこか行っちゃうなんて殺したくなるほど憎いよね、月白って」
「まぁ落ち着いてもらおうか、団長」
「自分が一体どんな存在か、月白は全然わかってないんだよ。」
にこにこ笑いながらそう告げる神威だが、決して機嫌がいいわけではない。
「自分が野郎が眠り持っている獣の血を騒がせる…いい獲物だっていう存在だってことにさ」
仕方ないなぁ…なんて言いながら神威は上着を被り、傘を手に取る。
「今回は特別に俺が迎えに行ってあげるよ、月白。」
帰ったらどうしてあげようかな…なんてケラケラ楽しげに笑っている神威を見て、阿伏兎は心の中で月白に同情したのであった。
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