少女Bのひとり言
私がこの世で一番好きなこと…それは食べることだ。食事なんて、皆日常生活で必ずする行為の一つに過ぎないことだが、いっぱいに好きなものを頬張って、沢山味わって…それが何よりの至福の時だ。
何を考える必要もなく、ただただ大好きな食事を堪能していればいい。…いつもは、そうだったのだが。
「オメー、好きな野郎とかいい加減出来ねェんですかィ?」
「〜っぶは!?」
総悟の放った一言により、その至福の時はどこかへ飛んで行ってしまった。突拍子もない発言のおかげで、思わず口に運んだばかりのバナナを吐き出してしまったではないか。
そのくせ吐き出して汚いだのギャーギャー騒ぎ出すし…何だよ、自分が悪いんじゃないか。
「あーもー!せっかくのパフェが勿体ないじゃんか!!」
先程からずっと食べ続け、これで5杯目のパフェだと言うのにすっかり味がわからなくなてしまった。佐菜ははぁ、と小さくため息を零した。
…まぁ、ここの支払いは自分でするわけじゃないのがまだ救いだ。
「んなこと知ったこちゃねェでさァ。勝手に吐き出したのはそっちでィ」
「だっだから、そんな変なことをいきなり聞いてきた総悟が悪いの!だからもう1個奢ってよね!あ、すいませーん」
「……ったく、勝手な女でさァ」
慌てて佐菜は店員にもう一つパフェを注文すると、総悟は呆れた目で此方を見て来た。…呆れているものの、それを止めない総悟の優しさがどこか嬉しく感じたり。
…総悟は、本当に馬鹿だ。ただの幼馴染なだけでこんなずっと一緒にいるわけないじゃないか。
大体、言いだしっぺである総悟はどうなんだ。かなりのサドスティック野郎だが、綺麗な顔立ちしているのだから、一見女の子が騙されるも仕方がないだろうし、何より彼と釣り合うくらいのドMな女の子なら、フラリと好きになってしまうんじゃないのか。
そう思って彼に聞いてみたものの、「さぁねィ」とか言って教えてくれなかった。…何だよ、もう。自分は教える気ないんかい。
「…何でィ、その目は。まだチェリー食っちまったことを恨んでるですかィ?あーあ、これだから女って言うのは執念深くて困りまさァ」
「別にそんなんじゃないもんっ!!」
ファミレスから屯所への帰り道、じぃっと総悟の方を見ていたら、総悟に嫌味を言われてしまった。…くそう、悔しいけど口では絶対敵う気がしない。…いや、違うか。
「ほら、膨れてねぇで帰りやすぜ」
やれやれ、と言った感じで手を差し出してくる総悟に、ますます敵わないと思った。だって、彼の何気ないそんな動作にきゅんっと胸を高鳴らせてしまう自分がいるのあから。
「……ぶー」
「何でィ、そんなにメス豚になりてぇんですかィ?だったら俺が今すぐにでも調教してやりますぜ?」
「〜っ違うよ!馬鹿総悟っ!」
と、口では言うものの、握った彼の手を離す気には当分なれそうにない。
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