横たわる少女
…別に、あそこまで怒る必要なんてなかったんや。ただ、なんか気に食わんかってん。…琥珀が、僕に隠し事をするのが気に食わなかった…ただそれだけやった。
「…ただいまー…琥珀、帰ったでー…」
気まずそうにしつつも、帰ってきたギン。呑みに出ていたため、普段より帰りは遅くなったが、まだ琥珀が起きていてもおかしくない時間帯。いつもなら「おかえりーギンちゃーん」と可愛らしい声で出迎えてくれるのだが…今日はそれがない。
喧嘩した後だったため仕方ないのかもしれないが、それがすごく寂しく感じる。
早いうちに仲直りしてしまおうとギンは中へ足を運ぶ。
「琥珀〜…昼間は、僕も大人げなか…った……」
しかし中には誰もいない。琥珀の姿はない。
「…琥珀…どこに隠れとるん…?…なぁ、琥珀!」
部屋の中をあちこち探してみるが、どこにもいなかった。
「…あ、もしもし。僕やけど…乱菊、そっちの方に琥珀行ってへんか!?おらんのや、琥珀が…帰って来てへんねん!!」
『え〜琥珀?来てないわよ…ちょっと、琥珀がいないってどういうことよ!?』
慌てて伝令神機で乱菊に連絡したが、乱菊のもとへも訪れていないようだ。どこに行った?彼女は今、どこにいる?
「琥珀…っ」
『ちょっとギン!?聞いてるの?私も一緒に琥珀を探すから…!』
「堪忍、頼むわ」
『何かわかったらまた連絡して!』
乱菊との連絡を切り、ギンはすぐさま琥珀を探しに部屋を出た。彼女の霊圧を探るも、上手く読めない。
「…どこにおんねん、琥珀…」
瀞霊廷中をあちこち探し回る。琥珀がよく行く場所、気に入ってる場所……全て回ったがどこにもいなかった。
「ギン!」
「…乱菊、」
「琥珀、いた?」
「…おらん」
途中乱菊と合流し、互いの情報を交換するも…手がかりは何一つない。
「…一体どこに行っちゃったのよ、琥珀…」
「…僕が昼にきつく叱ったせいや…あかん、僕のせいや…」
「ちょっと、ギンがそんな弱気でどうするのよ」
しかし、捜索は行き詰ってしまった。これからどうするか、もし彼女の身に何か遭ったとしたなら刑軍に連絡した方がいいが、まだ情報が少なくて判断する材料がない。
そのときだった。乱菊の伝令神機に連絡が入ったのは。
「…はい、あ、隊長、一体どうしたんです?こんな時間に……えぇ!?」
「…何や乱菊、仕事で何かあったんか?」
「…琥珀が見つかったって!隊長が今保護してくれてるんだって!!」
「何やて!?」
予想外の展開にギンまでも珍しく大声を上げてしまった。そして、急いで十番隊の隊舎へと向かった。
「…琥珀!」
「…来たか。」
「琥珀は無事なん!?」
「…今、ソファんとこで寝てるぜ。俺が仕事終えて帰ろうとしたら、廊下んとこでぶっ倒れてたんだ」
「琥珀…!」
日番谷の言葉に慌ててギンは彼女が寝入っているソファのもとへ近寄る。息苦しそうに呼吸を繰り返しながらも眠っている。
「琥珀、熱があるみたいなんだが…」
「…ほんまや、ちょっと熱いわ」
「見つけたときにそのまま四番隊連れて行こうかと思ったんだが、琥珀があまりに嫌がるもんだからここに連れてきたんだが…」
「!…さよか」
琥珀の額に手のひらを乗せると、なるほど、言われたとおり少し熱がある。日番谷から聞いた琥珀らしからぬ態度…四番隊に行くのを嫌がったことを不思議に思いながらもギンはそっと琥珀を横抱きした。
「…迷惑かけてすまんかったな、十番隊隊長さん…それに乱菊も。琥珀は僕が連れて帰るさかい…」
「あぁ」
「そう…わかったわ。」
「ほな、また明日…」
琥珀を抱いて十番隊隊舎を後にするギン。自分の腕の中にいる少女のことがただただ気掛かりで仕方がない。
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