見え透いた青

こうして何時間経ったのだろう
空気はむしむしと生暖かく両手には抱えきれないほどのレジ袋
からからに渇ききった喉を潤すために買ったサイダーもこの熱に奪われ温く正直言って美味しいとは言えない

「…暑い」

元はと言えば家の鍵を忘れた自分のせいだ
久々に実家に帰郷してきて東京の友達にお土産を買いに出かけると両親に伝えて帰ってきたと思えば今度は両親がお出かけ中で不在
つまり家は鍵をかけられていて扉は開くはずがない
こういう時に限って鍵を持っていなければ庭のベランダや裏の勝手口を調べても完全閉め切られてて完全にお手上げ
こんな大量な荷物を持ってまた何処かへ出掛けるのもこんな暑い中したくはないから大人しく玄関の前で親の帰りを待っている

「何で携帯見ないのよ…」

数時間前に送ったメッセージは未だに既読はつかない
近くの公園で鳴く蝉が耳障りでやけに煩く聞こえる
家に帰ってきたら学校の課題を終わらせてヴァイオリンの練習をしようとしててやる事は山ほどあるのに本当に運が悪い

「…明日奈か?」

真夏のせいで飛んでいってた意識が戻ってきた
玄関の門の前でこっちを覗くようにして見てるのは見るからに暑そうな真っ黒なジャージを着た同い年の男の子
大地とは家が隣同士のいわゆる幼馴染というものだ
大地は小学生からバレーボールというものにのめり込み、私は幼い頃からヴァイオリン一筋だった

「大地じゃん。おかえりー」
「ああ、ただいま…って、そうじゃなくて!帰ってきてたのか!?」
「うん、つい先週に」

ひらひらと気軽に手を振ってみれば大地はあっけらかんと口をぽかんと開けている

「帰ってきたのなら連絡してくれ…」
「だって大地の家に行ったら部活の合宿でいないって言われたんだもん」
「メッセージ送っただろ?夏合宿のこと」
「うんちゃんと見た。音駒だっけ?」

大地は自分と正反対で何かあればすぐに連絡をくれる
高校でもバレー部に入ったこととか
部長になったこと、高3になって新しく入ってきた1年生が何やら個性的な子達ばかりということ

「春高、頑張ってるんだね」

IH予選で青城で負けたことも勿論連絡がきた
春高の切符を掴んで東京体育館のオレンジコートに必ず立つっていう決意もしっかりとこの携帯に残っている

「明日奈の活躍は嫌でも耳に入るからな。また演奏会に呼ばれてるって聞いたぞ」
「私的にはコンクール前は断りたいんだけど、先生が今が大事なんだから、誘われたものは断ってはダメ≠チて五月蝿くて」

本当に面倒臭いものだ
大きくため息をついて見せれば大地は「期待されてる証拠だろ?」とフォローしてくれる
自分でも頭では理解しているがやはり面倒なものは面倒だ

「その活力をつけに一時の休暇として帰省してきたわけでございます」
「で、鍵を忘れて家に入れないわけか」
「…なんで分かるの?」

「やっぱりか」と当たったことににかりと笑う
その笑顔は幼い頃からまったく変わってなくて昔から私の