1000年前から
我はずっと、この街を見てきた。
移り変わる人。変わりゆく街。
全てを否定して全てを受け入れて。
我の為に作られた社(やしろ)は
いつの間にか、小ぶりになっていたけれど
住めない訳では無いから
気にせぬ事にした。
ある家の者が、数百年…いや、千を超える年数かも知れぬ
我の社(やしろ)をずっと手入れして、我に捧げ物をしてくれている。
その代わり我はこの街を、その家の者を、守ってきた。
それなのに、この街に住まう悪しき者が、その家の者を、傷付け貶めて、残ったのは
まだ、幼き兄妹であった。
我は、その兄妹を守るべく、悪しき者を追い出した。
誰に感謝されるでもなく、誰に蔑まれることもなく、悪しき者を、この街に二度と近付けぬように、結界を張った。
その時から、なるべく近寄らないように見守るだけにしていたのに、明らかに、その兄妹を守る事にしている。
あの、悪しき者以外の別の悪しき者が近寄らぬように、良き者だけを、あの兄妹に、関わらせるように、力を使った。
…あの兄妹も、あの幼かった頃から比べると、大人びてきた。
一時期は途絶えた、我への供え物も復活していた。
「守り狐様、今回は、稲荷寿司です」
16歳になった妹と
「明後日は、ごま塩の握り飯を作ってきます」
19歳になった兄が、
我の社(やしろ)の前に手を合わせる。
妹の方は、まだ学生だが
兄の方は、仕事をしているようだ。
ようやく、苦しい生活からも逃れ、兄と妹で
昔、家族と暮らしていた家を取り戻して、そこに住んでいる。
この世界では、本来なら、10歳の時に
旅に出るのが習わしなのだが、兄も妹も、
そんな事をしている暇はなかった。
だから、珍しく、この二人は
“ポケモン”を持っていない。
ポケモンと友になってはいるが、
モンスターボールを買えず、ゲットする事は出来ない。
ふとした瞬間に、仲良かったポケモンは、他の誰かのパートナーになっている事もあった。
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