「おい起きろ。このままだと眠っている女を抱くクソ野郎になっちまうだろうが」
リヴァイが小さくぽつりと呟くも、なまえは寝息をたててぐっすりと夢の中についていた。
今日の訓練の様子からもなまえが疲れ切っていたのは分かっている事だったし、この幸せそうな寝顔を無理矢理起こす事は出来なかった。
「・・」
はあ、とリヴァイはため息をついた。
自室に帰ろうと、最後になまえの右の手のひらをすくって、ちゅと口付けた。
まるでどこかの王子のようなその行為に、自嘲気味に鼻で笑った。
すると、ぎゅっとなまえの手に力が込められてリヴァイの手を離すまいと掴んだ。
「や、・・。はなれてか、ないで・・」
「・・起きたか」
まるで起きているかのような寝言にリヴァイは目を丸く開いたが、見つめるも起きた気配はない。
変わらず細い寝息をたてて肩を揺らしているなまえ。
「・・」
リヴァイはするりと手を離し、なまえの横へとベッドに身体をのせた。
手の空いた両手をなまえの細い腰へと回し、ぐっと力をかけ自分との距離を縮めた。
ふんわりと香る石鹸の香りに、リヴァイは心を落ち着かせなまえの頭へ自分の頭を無意識に近づけた。
「・・離れていこうとするのはどっちだ」
リヴァイの頭の中は、“戻りたい”と涙ながらに伝えてきたなまえの顔が浮かんだ。
どうも分からない。確かに酒の勢いであったことは後悔した事もあったが、あんなに好きだと伝えてきたなまえにやっと手に入ったと思えば泣きながら戻らせろと言う。
いったいなにがいけなかった。
行為でさえいやだと伝えておきながら欲の満ちた求めるような熱い視線を浴びせてくる。
そんな視線を好きな女から貰って手をださないという選択肢なんてリヴァイには無かった。
「チッ・・生殺しか?」
なまえのさらりとした髪の毛をどかし、白い首筋へとがぶりと歯を立てた。
起こさないようにいつもより噛む力を弱めたが、自分のものだと言わんばかりに赤い跡をぽつりと残した。
制服のシャツで隠れるか隠れないか微妙な場所だが、リヴァイはいっそのことばれてしまえばいいと思った。
「ん、」と痛さからか身じろいだなまえを再び抱きしめた。