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普通に考えて、エレンが自分のことを好きだなんて、なんで?という言葉しか出てこない。
なんと言ってもエレンといえば巨人を駆逐することにしか興味ないような感じだったし、あんなに身近にミカサという美人がいるのだ。そのミカサはエレンのこと大好きなのに。
本当に自分のことが恋愛として好きなのか、少し分からなかった。
もしかして友人として好きの延長線上では、と微かな違和感をぽつりと口にする。
「エレンの好きはさ.......ミカサとか、と同じじゃないの?」
「はあ?何言ってんだよ。確かにミカサとアルミンもまあ、大事だけど...」
「やっぱりそうだよね」
うんうん、と納得いったように首を縦にふれば、エレンが「でも、」と続けて口を開いた。
「こうやって触りてえって思うのはなまえだけだ」
「!」
立っていたままのエレンはなまえを見下ろしながら、するりとなまえの頬に触れた。
なまえのつるりとした頬を撫で、愛しそうに少しだけ目を細めるエレンの初めて見る顔に、なまえの心はひどくぐらついた。
「...」
「...」
吸い込まれるようにエレンを見つめるなまえの心臓の音は、保健室に響き渡るほど大きく打たれていた。
「あ、わるい。今日料理当番だったんだ、俺は行くけど、あとは大丈夫か?」
少し張り詰めたような空気を切るようなエレンの一言に、なまえは驚いた。
「え?」
自分の頬に触れていたエレンの手が離されて、ひやりと冷気を感じた。
先程までの甘い空気感がまるで無かったかのようなエレンに呆然と口を開けた。
しばらく返事がないなまえにエレンは「大丈夫か?」と不思議そうに問いかけた。
「あ...うん、?大丈夫、ありがとうエレン色々と」
「おう!ちゃんと安静にしとけよ」
嵐のように去っていったエレンの背中を見送り、なまえは大きく息を吐いた。
キス、されるかと思った。そう心に思った瞬間に、何もされなかった事になまえは少しだけ物足りなさを感じた。
「うそーー...もう完璧に好きじゃん、こんなの...」
両手を顔に置き、エレンのことだけを考えてしまうこの脳になまえはもう一度溜息をつきたくなった。
どうも肩に力が入っていたらしく、一気にでた疲れからなまえは上半身を倒して、フカフカのベットへと体を沈めた。