切符を手に入れろ!




年上夢主
遠距離カップル
プロと社会人

 工業高校出身の女が一般企業に就職するのは難しいと聞いていたけれど、山王高校バスケットボール部マネージャーという肩書きは案外私の武器になってくれた。念の為と内定を保留にしていた技術職は蹴散らして、私は今『月刊バスケットボール』の出版社で働いている。

「城矢、海外出張したことあるんだっけ?」
「流石にまだないですよ」

 国内リーグ注目選手の取材終わり、遅めの昼ごはん。ズズっとうどんを啜ったところで同行していた先輩に突然そんなことを聞かれた。仕事ができると評判のこの先輩とは研修期間からの付き合いで、気に入られているのか同じ現場を任されることが何故かよくある。
 海外出張。社内でもひと握りの人間が任される誰もが憧れる仕事。その中でも一番手に入れるのが大変なアメリカ行きの切符を恣にしている先輩からの言葉にうずうずしてしまうのは仕方ない。バスケットボールの本場アメリカにプライベートで行ったことはあっても仕事で行くとなると話は別で。

「海外出張したい気持ちはあるんですけど、まだこの歳じゃなかなか機会がなくって」
「じゃあ俺の付き添いで今度アメリカ行かねぇか」
「えっ、本当ですか……!!」
「向こうで活躍してる日本人選手の取材に行くことになったんだけどよ、サポートで一人連れてっていいって言われたからお前どうだ?」

 上にはもう確認取れてるからあとはお前の回答次第だぞ、なんて言われたらもう私の答えはひとつしかない。海外出張とキャリアという二つの切符を一気に手に入れられるチャンス、ここで自分のものにしなくてどうするんだ。

「ぜひ行きたいです!」
「よし、じゃあ決まりな。ちなみに沢北に会えるぜ、後輩なんだろ」

 沢北、その言葉に心臓がドクリと飛び跳ねる。沢北栄治、元山王高校バスケ部のエース。二年のインターハイにて敗北した試合を最後にアメリカに飛び立った男。今やバスケットボール界隈でその人物を知らない人はいないのではないか。
 そんな彼が私の一つ下の後輩であることは社内の大半の人が知っている。ただ、みんなが知っているのはそこまでで。実はマネージャーをやっていた頃から付き合ってることは誰にも言っていない。勿論、仕事の経験としてアメリカに行きたい気持ちも強いけれど、年に一度か二度しかない沢北に会える機会が増えるだなんて正直願ったり叶ったりで。
 まだ先の海外出張に思いを馳せていると、いつの間にか話題は沢北の最近のプレーのことに変わっていて「俺の中で最近一番アツイ男なんだよ」なんて先輩が話すのを中途半端にしか聞いていなかった私はニコニコと受け止めるしかなかった。

 会社に戻ってからは海外出張の申請等、普段の仕事に加えやらなければいけないことが増えていつも以上に忙しかった。それでもやっとこの時が来たんだと、アメリカ行きの準備を進める度に湧いて来る実感が心地よくて。いつか仕事で沢北と会う時まで何の仕事をしているか教えないと決めていたけれど、こんなにも早くその日が来るなんてと浮かれていたのかもしれない。隣のデスクの同僚から「最近のアンタずっとニヤケ面しながら仕事してて怖いんだけど」なんて言われてしまった。



 出張当日。長いフライトを乗り越え、狂った体内時計の針を必死に巻きながら空港の床を踏みしめる。何度かアメリカに来たことはあっても時差ボケに体を蝕まれる感覚にはまだ慣れない。それに今回は仕事で来てる上、スーツケースの持ち込みについても頭に叩き込まなきゃいけなくて正直もう既にパンクしそうで。先輩には「初めての海外旅行じゃねーだろ?」とスーツケースの取り扱いについて怪しまれたけれど笑って誤魔化すしかなかった。沢北の家に服とかその他必要なものは全部置いてあるからいつもアメリカに来る時は手荷物しかいらないんです、なんて言えるはずもない。案の定スーツケースの存在を忘れてゲートを出ようとした私を先輩は慌てて引き止め「マジでやるとは思わなかった」と零していた。

 不慣れな手つきでガラガラとスーツケースを引きながら先輩の後ろをついて歩く。事前に調べた情報では空港から沢北の所属するチームのホーム会場まで車で約二十分。私たちはロータリーで捕まえたタクシーに乗って今日のスケジュールやインタビュー内容の最終確認をしながら彼の待つ試合会場へと向かった。
 
 渋滞に巻き込まれることなくスムーズに辿り着いた会場付近。試合開始までかなり時間があるからか人の数は疎らだ。スタッフが設置する仮設テントや選手の写真ボードを横目に、タクシーの中で先輩から渡された関係者パスを警備員に掲げ会場の奥へと進んでいく。一歩、また一歩とコート近づく度にダムダムとボールが跳ねる音が大きくなって、それにリンクするかのように私の心音も大きくなって身体中に響き渡った。
 あと数メートル先に沢北がいる。その事実を脳が認識すると仕事前特有の緊張感の他に、久しぶりに彼氏と顔を合わせる緊張感が湧いてきて頭の中はもうグチャグチャになって。ただ、数歩先にいる先輩はそんな私に気付かず、再び警備員に関係者パスを掲げ集合場所となっている選手控え室へと一直線に進んでいった。

 迎え入れてくれたチームの担当者の方は優しい人だった。沢北の影響で少しだけ日本語を喋れるようになったらしい。改めて段取りを確認する直前、チラリとこちらを見た担当者の視線が意味ありげだったことだけ引っかかったけれど、次の瞬間にはもう資料に目を落としていた。
 沢北は今、自主練をしているらしく、案内されるがままコートが近づいていく。仕事の覚悟は出来たけれど、未だダムダムとボール音にリンクする心臓音は落ち着かない。「楽しみだな」なんてワクワクしてますと顔に書いてある先輩に「ソウデスネ」と適当に相槌を打っていたら、目の前にはバスケットコートが広がっていた。ボールが跳ねる音もバッシュの擦れる音もすぐそこで。たまたま私たちの近くを通ったセンターの選手が怪訝そうな顔をしてこちらを見たけれど、何故か私の顔を見た瞬間ニヤケ面になり「エイジ!」と叫んでいた。

「どうした?って、はっ……?えっ……?紗梨さん……!?」
「あー……来ちゃった♡」
「ハァッ……!?!?」

 こちらを振り返った沢北は絵に書いたような驚き顔をしていて。力の抜けた沢北の大きな手からポトリと零れ落ちたボールは情けない音をたてて床に転がった。それと同時に高校生の時より鍛えられたであろう瞬発力を発揮して、一直線にこちらへと駆け寄ってくる。どこからかヒュウ!なんて口笛が聞こえたのは気のせいだろうか。

「えっ、紗梨さん、何でいるの!来るなら教えてくださいよ!」
「ごめんごめん、ちょっとサプライズ的な」
「てか本物ですよね、オレの幻覚じゃないっすよね?」
「はは、幻覚じゃないよ」

 前に見た時よりもまた少し逞しくなったその身体にぎゅうっと閉じ込められ「ヤベェ、めちゃくちゃ嬉しい」なんて言葉が吹き込まれる。やっぱりさっきの口笛は聞き間違いじゃなかったようで今度はハッキリと、一つじゃなく複数ヒュウと音が鳴った。
 まさかこんなにも熱烈な歓迎を受けるとは思っておらず、ジワジワと恥ずかしさが侵食してきて、自分でも顔が赤いんだろうなと言うのがよくわかる。本当はここがバスケットコートじゃなければもっと沢北を堪能したいところだけれど、一応仕事で来てるわけだし、先輩の前だし。一旦離れよう、という願いを込めて大きな背中をトントン叩く。
 願いが通じたのか少し腕の力が緩んで、そこから抜け出すように身を捩り顔を上げたところで、しまったと思った。瞳に映った沢北はこちらを見ておらず、射抜くような視線を先輩に向けている。

「ねぇ、もしかしてそこにいる人と来たんすか」
「そうなの、職場の先輩。今、月刊バスケットボール関係の仕事してて……」
 
 職場の先輩、という私の声は多分聞こえていないだろう。確か昔、似たようなことがあった。初めての試合会場で迷子になった私を道案内してくれた他チームの選手に彼は今と同じような冷たい眼を向けており「ちょっと沢北!」なんて私の声は聞こえていなかった気がする。
 さっきのワクワク顔から一変、表情が固まってしまった先輩を見て頭を抱えたくなったのは仕方のないことだろう。先輩の言葉を借りるなら「最近一番アツイ男」で、これからインタビューする相手に突然冷たい視線を向けられるなんて意味がわからないはずだ。やっぱりサプライズなんて考えずに事前に連絡するか、先輩にだけはこの関係を打ち明けておくべきだったんじゃないか。そんなことを今更悔やんでも後の祭りで現状は何も変わらない。
 最初にこの空気に耐えられなくなったのはやっぱり先輩で、一瞬こちらから目を逸らし「あー……」と呟いたあと何とか言葉を紡いだ。

「えっと、さすが元先輩後輩仲良いね……」
「あー……実は、マネージャーやってた頃から付き合ってまして……はは……」
「……は?マジかよ、えっ、付き合ってんの……?」
「それ話してコネって言われたり良いように使われたりするの嫌で隠してたんです……スミマセン」
「いや、それは別に良いんだけど……じゃあ俺は本人の彼女に沢北の良さ語ってたってことかよ……」

 クソダセェじゃん、と落ち込んでいる先輩と、話についてけず怪訝な顔をしている沢北というカオスな空間に誰しもが一人取り残された気持ちになる。とりあえず取材を始めるなら沢北の機嫌を取ることが先だと、冷たい視線と不機嫌なカオを隠そうともしない男へ意識を戻し改めて先輩を紹介をすることに決めた。

「沢北、ちょっといい?」
「……」
「こちらは私のお世話になってる先輩。この人がいなかったら私は今日ここにいないから感謝すること」
「……うす」
「あと、沢北の大ファンで既婚者。オーケー?」
「……!オッケーっす!」

 自分のファンと既婚者だという情報に気を良くしたのか先輩に自ら握手まで求めに行って。さっきまで先輩を睨んでいた人と同一人物とは思えないくらいの変わりようだ。落ち込んでいた先輩も沢北との握手で気を取り戻したのか、またあのワクワク顔に戻っていた。

 漸くインタビューを始められる環境が整ってからは、滞りなく会話が続いて。やっぱり沢北と話せるのが嬉しいのか、先輩はいつもより声が上擦っていた。一通り話を終える頃には完全に意気投合していて、自分のことじゃないのに何だか嬉しくなった。
 後は紙面を飾る写真撮影を終えたら今日の仕事はもう終わり、という時。半年くらい前に見た時よりまたちょっと逞しくなってるなぁ、昔はもっと線が細かったし試合前から調子にムラっ気があったのに、なんて耽っていると撮影した写真を確認している隙間を見計らって沢北がこちらへと近づいてくる。

「試合、最後まで見てきますよね?」
「もちろん見てくよ、折角来たんだもん」

 私の回答に満足したのか「やベー、めっちゃやる気出るっす」と撮影時とは打って変わって締まりのない顔を晒すこの男は、やっぱりまだ集中力が足りないのだろうか。
 
 結局試合が始まってしまえばそんな私の思いは杞憂に終わって、試合開始から試合終了までノリにノった最高のパフォーマンスを見せていた。そういばアメリカに行ってからは高校生の時のような、集中力に欠けるような場面は見たことないような気がする。やっぱり留学して良かったんだなぁ、なんて呑気に思っている私は知らない。本当は沢北の集中力は留学当初から彼の課題で、最近になって漸く改善されつつあるということを。紗梨がアメリカまで足を運ぶと必ず「紗梨さんにかっこ悪いとこ見せられないっすよ」なんてチームメイトに零していつもの倍くらいの実力を発揮していることを。

 試合終了を告げるブザーとともに割れんばかりの拍手がコートいっぱいに鳴り響いた。ホームゲームを制した沢北のチームはそのまま勝利後のセレモニーをして、コートをぐるりと周りファンサービスをしている。選手に向けてアピールする観客の中には、ちらほらと沢北のタオルを掲げている人がいる。その人数は前よりも増えていて何だかムズ痒い気持ちが湧いてきた。ファンが増えて良かったねって思う純粋な気持ちの裏側に、沢北がどんどん世界に見つけられてしまうなぁ、なんて綺麗とは言えない感情がチラついてしまう。そもそもバスケを、沢北を知ってもらうために今の職についたと言っても過言ではないのだからファンが増えることは何よりも嬉しいことのはずなのにどうしても彼女という立場がそれを邪魔をする。きっとこの感情は一生付き纏うのだろう。

 何とも言えない気持ちが身体中を蝕み始めたからこそ沢北に会いたい気持ちと会いたくない気持ちが逡巡して。たまたま先輩も私も試合が見たかったからここにいるけれど、本当はインタビューが終わった後の今は自由時間。一旦気持ちを落ち着かせる為にもホテルに向かおうか、なんて思っていたらケータイに[すぐ行くから外で待っててください!]なんてメッセージが届いた。
 
 一人で待つのはどことなく落ち着かなくて「もう一度沢北に会えるんで一緒に待ちませんか?」の言葉で先輩を巻き込むことに成功し、会場付近で立ち話をして待っている。今日の試合はこうだった。沢北のあのパスがうんたらかんたら。未だ興奮の冷めない先輩の話に付き合って数分。沢北は「紗梨さーん!オレの活躍見てました!?」なんて少し手前から叫びながらバタバタと駆け寄ってきた。思ったより単純にできている私の心はそれだけで、さっきまで体を蝕んでいた感情が溶けていく。

「見てた見てた。カッコよかったよ」
「紗梨さん今日ウチくるでしょ?」
「いや、会社でホテル取ってもらってるからそっち行くつもり」
「えー!何で!せっかく会えたのに!」
「だから、私は仕事で来てるから……」
「先輩からも言ってやってくださいよ!」
「久しぶりに会うんだろ?それぐらいいーじゃねぇか」
「ほら!先輩だってそう言ってる!」
「ちょっと、見捨てないでくださいよ!会社にはなんて言うんですか!」
「あ?何も言わなきゃバレねーよ。あとは好きにしな」

 さっきまで興奮しながら沢北の話をしていた人物はどこへ行ったのかと聞きたいくらいカッコつけた態度をとりながら、ヒラヒラと手を振り「邪魔者は退散するぜ。あとは俺も好きにするから次のスケジュールにはちゃんと来いよ」と言って先輩は人混みへと消えていった。

 結局取り残された私の選択肢は沢北の家に向かう以外なくて、白旗を上げた様子に沢北はパァっと顔を輝かせ私のスーツケースを奪い取って歩き始めた。
 
「いつアメリカ来てたんすか」
「今日ここ来る前、まだ着いたばっかでちょっと時差ボケしてる」
「何で連絡してくれないんすか!オレ迎えに行けたかもしれないじゃん!!」
「一応私も仕事できてるから……」
「業務外ならプライベートだと思うんすけど」

 唇を突き出し眉根を下げて「少しでも多く紗梨さんと過ごしたかった」なんて言う姿に肩身が狭く感じるけれど、その気持ちが嬉しかったから「多分その時間は沢北練習してたよ」って言葉は飲み込んで「じゃあ次はすぐ連絡するね」と返しておいた。

 そのまま他愛もないお互いの話をし続ける間に沢北の家へと到着し、ガチャリと鍵を回し開いた扉の先にはアメリカの中で唯一見慣れた景色が広がっている。
 
「お邪魔しまーす」
「そこはただいまって言ってくださいよ」
「はいはい、ただいま」
「おかえり、紗梨さん」

 一通り荷物を置いて身軽になった沢北が後ろから抱え込むように抱きついてきて。自分が言わせた「ただいま」という言葉が相当嬉しかったのか「もう一回」だなんて強請ってきた。

「……ただいま」
「はー、最高っす紗梨さん」
「そんな嬉しいもんなの?」

 自宅以外で使うことのない言葉が小っ恥ずかしくてそれを隠すように質問をすると、くるりと体を反転させられてグッと沢北の顔が近づいてきた。
 
「マジで、後数ヶ月は会えないと思ってたんで本当に嬉しいっす」

 それに一緒に住んでるみたいじゃないっすか、なんて囁かれて一気に頬が紅潮する。堪らず顔を逸らそうとしたけれどバスケットボールを一掴みできるくらい大きな手に阻まれ、再び視線が絡まって触れるだけのキスをされた。
 一度だけで終わるはずもなく啄むようなキスが繰り返される。段々とその間隔が短くなって、深くなっていって。そこからはもう、なし崩しのようにベッドになだれ込んで、この身いっぱいに沢北の愛が降って来たのは言うまでもない。ちなみに態々持ってきたスーツケースの中身の出番は殆どなかった。


 
「……どこいくんすか」

 沢北の家に泊まって数日。怠い身体に鞭を打ちながら仕事兼帰国準備をしていると「明日はオフなんです!」と昨夜嬉しそうにしていたとは思えないくらい、ぶすくれた沢北が洗面所の入り口を塞ぐように突っ立っていた。

「どこって、仕事だけど……?」
「せっかく久しぶりに会えたのに全然イチャイチャできなかったじゃないっすか!」
「そりゃ仕事できてるし何ならホテルに泊まるつもりだったんだけどね?」
「なんかオレだけ嬉しかったみたいで悲しいっす……」

 髪の毛のセットは後にして、シュンと捨てられた子犬みたいな顔をする沢北に近寄り「私だって嬉しかったって。またすぐ来れるように頑張るから」と抱きつけばムギュッと抱き締め返されて「うす」と小さい返事が聞こえた。
 再び鏡と向き合い支度を進める傍には未だ沢北がいる。煩い視線には気がつかないフリをしていると徐に沢北が口を開いてポツリと言葉を零した。
 
「チケット、捨てちゃえば紗梨さん帰れないっすよね」
「ハァ!?!?な、何言ってんの!?」
「だって帰ってほしくない……」
「気持ちはわかるけど、流石に親に何も言わずそれはマズイでしょうが」

 少しの間沈黙が流れ、ちょっと突き放しすぎたかな、なんて思っていたら急に弾けたように「わかった!じゃあオレもう腹決めたんで!」と高らかに宣言する沢北が何に対して腹を決めたのか聞く前に、出勤を知らせるアラームが鳴り響いた。
 それじゃあまた今度ね。お互い頑張ろうね。なんて声をかけあって無駄に元気になった沢北にひとつキスを落とされ「行ってらっしゃい」と見送られ私は数日間過ごした沢北宅をあとにした。

 先輩と合流して、無事アメリカでの仕事を全て終わらせ空港へと向かうタクシーの中。そう言えば今日一回もケータイ見てなかったっけ、と思って開いた画面には[次そっち帰る時は結婚のアイサツするから準備しといてくださいよ]なんて連絡が一件。……腹決めたってそういうことだったのか。

「先輩……私もうすぐ仕事辞めるかもしれません……」
「は……?急にどうした……?」
「私、アメリカで暮らすことになりそうです」
「……ハァッ!?」
 
 今はまだ往復切符の復路の途中。アメリカへの片道切符はもうすぐそこだ。


 







おはなし