イズナが、とんでもなくおかしそうに「どこでこさえてきたのさ」とか、ぬけぬけ言ってくる。
「俺の子ではない」
こどもがつたなさでたまに爪を触っている。俺はイズナのからかい顔が止んだのを見ていた。
戦災孤児。あぁ、と俺は言う。
「これを、ここに置くことにする。いいか」
「族長の兄さんが決めたことなら、誰だって何も言わないよ」
「そういうことを言ってるんじゃない」
「わかってるよ」
言って、煤のにおいのする子供服をべろっと捲ったイズナだった。ぎょっとしたのは俺だ。こどもは“あの”瞼の瞬間的まばたきで、ただ葦のように立っている。裸足の二本足。つるっとした白い腹。痩せた二の腕。がぶり、って奥歯をまるまる噛みつけてやりたくなる腕だ、爪だってあるのに。
「女の子だよ、この子」
イズナがこの不健全なままのこどもを、五本指が両手ともしっかり揃えて襟を正したから、ようやく元のこどもになった。
「いい」
「……いいの?」
「いいんだ」
「何か他に理由がありそうだけど……まぁ、兄さんがそう言うのなら……わかったよ」
ねぇ、君は一体どこから来たんだい? あの兄さんに気に入られるなんて、よっぽど、突飛なところから来たんだね、とイズナがぼうっとした横顔のこどもの産毛の髪を指がまるで頬を剥くように、小振りの耳まで病そのものみたいなこどもの黒髪を後ろへ後ろへ、と掛けてやりながら、それから、よしよし、ってこどもの左手を取って、あやしているようだった。こどもは俺にやって見せたときみたいに、微笑み、微笑んだ。
子供のほんの笑みなんか、別に大したこともないのに、イズナはなんだか幸せそうにしている。こいつはイズナにまで何かやったのかと、そんなことを、思っていた。
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