このひとのことは好きでいるだけでいい。じゃないと、きっと傷付いてしまう、律のように。あぁ律、あんなに泣いてしまって。でも、律はいつもそうだった。そうだ、このひとはそういえば酷いひとなのだ。このひどいひとにずっと泣かされているのが、律だった。このひとは律をかわいそうだって言う。律はこのひとをずるいとか、大人ぶって嫌いだとか、でもすきとかもう延々に言っているのだと思う。僕が知らないだけで、律は僕よりもこのひとが好きなのかもしれないのだ。でもそれは、嫌だ。僕が嫌だ。けど、僕はこのひとの言うかわいそうなやつになりたくなんてないから、このひとを「あんた」って言い続けるのだ。僕はこのひとを弟のことで殺めてしまうことが唯一恐ろしい。
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