やぁやぁ、とまたあのまんまフグの腹であるようなただの白身的袖の元がいやいや尾ビレのような、ぶらりぶらりとまるで蛸足みたいにやってくるこの男、いや、おまえさまは耳がいいから「そりゃあ、きみ。それは赤だろう」とか、ちょっとその金物か痛い切羽で器用に殴りかかって殺してみてやろうかなとか、きっと思われたであろういやな腰の屈み方をしたから結金が揺れたではないか、この鶴丸国永というヤツ。
“白は良い。きみも着るといいんだ、俺のように。似合うぞ、きみは。”
あぁ、またまた言った。私が「白とはなぁ」ともうずうっ、と言っていると「いやか」とまたまた男も美しい顔のまま、ずうっ、と言ってくる。
「正直な、きみの『ゆくゆく』だとか『いずれいずれ』などは聞き飽いたぞ。たかだか衣装の色地くらい訳ないだろうに。俺はきみのたった一振りの鶴として、こんなにもきみのためにと我が身を削る思いで機を織っているのに、きみもつれないな」
なんて、ポストロックに魚の小尾な袖とくるり回った鶴丸さんが、私の顔色を二次元的に茶目らしく覗きこんできたものだから、暫くこの琥珀色のビー玉のお目目と10秒も私は合わせあったが、鶴丸さんがまるで物恋しい女のような睫毛の揺れ方をしてから、直ぐ擦って来た鶴丸さんの女々しい手だとかと、ちょん、って指が触れたことは驚いて手を袖の中に引っ込めたのになぁ、この人もついてきて恋人みたいになってしまったのはまずいと思う。
「嫌だなぁ、あぁ寒い寒い。身に凍みるようだ」
「……嫌いですか、冬は」
「『嫌い』より、冬はなんとなくつまらんよ。でも、きみが好きだと言ったからな。だから、仕方なく」
「それは、すみません……」
「夏のきみも良かったが、俺は冬のきみも好きだ。より一層、死んでしまいそうで」
もし、俺が退屈で死んでしまったら、きみのせいにしてやる。そのときは、俺が君の元へ祟って、きみが俺のせいで真っ白い死装束で死んだ頃、俺の社へ連れていってあげよう。そしたら、きみに存分に驚いてもらおうかな。
「それで、驚いたか?」
「えぇ、驚きました」
参りました。
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