主命とあれば。手打ち、焼き討ち、御随意にどうぞ。

 俺が言うと、やはりおまえは織田の刀だなぁ、なんてしみじみ関心したように言うこの人に、俺はつい膝をつくことをままならなくなった。なんと言ってもこのお方はあの男と同じにおいがする。
俺は主にいかに捨てられないかを考えに考えて、誉を取ることに執心した。すごいなぁ、頑張るんだなぁ、なんて主の声が一つでも聞こえようものなら、頗る素晴らしい気分になる。これ以上のないくらいに胸を熱くさせ、高揚した、頬まで。

 主が、あの主が褒めてくださった! 俺を、このへし切り長谷部を主がお褒めになったのだ! あぁ、主よ、そうです。俺は成し遂げたのですよ。

「っ、この程度のこと、俺にとっては造作もありません。主のために勝利を持ち帰る、主の配下として当然のことをしたまでです」
「なるほどなぁ」

 とゆるりと耳を貸したままの主に己の高まっていた気が恐ろしさのあまり引いていく気がした。首元にありもしないのに刀を当てられているような感覚。彼女はやはりあの男とよく似ていた。

「主よ。主命とあらば、いや、主命でなくとも、俺はあなたのためならばどんなことをしてでも、なんだって犯してもいいと思っています。あなたのためとあればこそ、この身などは惜しくありません」
「どうだかなぁ」

 あなたをお慕い申しております、とは聞き入れてはもらえなかった。俺はその日の夜に、主の近待を外されたことに絶望して、彼女の本丸を出ていった。次はここよりも愛されればいい、そう思って。
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