夏の日の鶴丸さんはいっそう死人に見える。真っ白なあの腕が全く惜し気もないかのように、全然素っ気なく晒していている鶴丸さんは、両足を開いたまんまの死んだふりで地面をごろっと寝そべるアブラ蝉のバチバチ言う羽音に一度「うわっ」とおかしい声を上げて、それきりは片手を付いてから、まじまじと膝を折る傘になってアブラ蝉を眺め続けた。

 いよいよ死んだふりでもして皆を驚かせようと思い付いたか、と放って置いたら、鶴丸さんがこっちをぐるりと振り向いて、きみもこんなふうに死ぬのかな、なんてアブラ蝉を蹴飛ばすように指で見下ろしているから、またとんでもないことを言い出したもんだ、と私はぎょっとしたまま「このようなみっともない死に方はしない」と言ってやったら、この人は聞いているのか「もう驚かせるネタがないなぁ」と、一人で言っていたので私は手汗をかいてくる。そのうちそのうち、とかこっちを見て言ってきた鶴丸さんは私の隣に何故か座って「あの蝉はあともって明日で死ぬな。そうだな、明日の早朝に死ぬ」と足を揺らしながら楽しそうに私を見ていた。

 明日には鶴丸さんにあの蝉のところへ、私はいやだと言っているのに腕を掴まれてあれよあれよと連れられたが、本当に鶴丸さんが言ったように蝉が足を閉じて死んでいるところだった。

 驚いたかい? とぬけぬけと聞いてきた鶴丸さんの腕が少し焼けている。
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