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臨時休校となった翌日。結局一日の大半を修行で削られた俺は疲労困憊である。絶対母さんと修行したのが原因だし。何なのあの結界、なんであんなに頑丈なのさ。ーーーコテンパンにやられました。流石現役ヒーロー。

「皆ー!!朝のHRが始まる席につけー!!」
「ついてるよ、ついてねーのおめーだけだ」

瀬呂のなんともバッサリと切り捨てた言葉に同意する。チャイムとともに瞬時に席に座ってる高校生ってなかなかいないと思うんだ。流石、相澤先生の恐怖を植え付けられたクラス。

「お早う」
「「「「「「「相澤先生復帰早ぇぇえ!!!」」」」」」」

全身包帯のミイラ人間のような出で立ちで教室に現れた先生に誰しもが奇声を挙げる。先生の教師魂すげえ。

「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねえ」
「戦い?」
「まさか…」
「まだ敵がーー!!??」

ざわめきの起きる教室を見渡し、相澤先生は静かに口を開いた。

「雄英体育祭が迫ってる!」
「「「「「「「「「クソ学校っぽいの来たぁぁあ!!」」」」」」」」」

え、そんな緊迫感込めて言うセリフだった?先生実は遊んでる?いや、真面目に言ってるから俺らも惑わされるのか。先生心臓に悪いからやめて。てか、一昨日敵に侵入されたばっかなのに開催決定してる学校側がすごい。セキュリティ大丈夫?

「警備は例年の5倍に強化するそうだ。何より雄英体育祭は…最大のチャンス。敵ごときで中止していい催しじゃねえ」
「いや、そこは中止しよう?」

峰田が嫌そうに小声で反論する。そりゃあ、あの青髪男の近くで戦いを見てたなら嫌になるわな。

けど。

「ウチの体育祭は日本のビックイベントの一つ!”かつてのオリンピック”に代わるのが、雄英体育祭だ!!」

テレビで見てたアレが今度は自分自身が出れるとなると、楽しみだよね、…てか、親が来るから頑張らざるを得ないんだけど。なんか、母親もその日は休み取ったって言ってたし…。

「時間は有限。プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回、計三回だけのチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ!」

…………………

いつもどうり、ヒーロー関連の教科以外は他の学校と同じように平凡である。セメントス先生の髪ぴょんぴょんしてて可愛い。

そんなことを考えている間に、無事四限目の現代文終了。ぐぐっ、と大きく背伸びをしてあくびが出た。

「あんなことはあったけど…、なんだかんだテンション上がるなオイ!!活躍して目立ちゃプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」

ぐっと、拳を握りながら士気を上げる鋭児郎を中心に人だかりができていた。いいね、若いね皆。さて、俺もご飯さっさと食べに行こう。

教室の前へと足を運んでいけば、麗日がなにやら覚悟決めたようにポツポツと話している。その顔を見て思わずギョッとする。

「デクくん、飯田くん。…頑張ろうね、体育祭っ」
「顔がアレだよ、麗日さん!!?」

うん、緑谷が叫ぶのもわかる。いつもほわほわ女子である麗日が眉間にシワを寄せ、なにやら鬼のような形相を浮かべている。どうした、麗日。

「皆!!!私!!頑張る!!」

ぐっ、と固く握った拳を力強く天へと突き立てた。その空気に押されて思わず俺も拳を突き上げる。いや、なんの儀式だこれ。

そんな変な空気も緑谷たちが出ていけば霧散した。何だったんだ一体。

「なんか麗日おかしかったな、緊張してんのかな?ま、飯食いに行こうぜ」
「うん、お腹減った。鋭児郎たち遅いから先に行こうか悩んでたくらい」
「ひでぇ!」

今でもぐーぐーお腹の虫が食事を欲している。いくら食べても胃袋に収まるって男子高生てすげえよね。まぁ、ちゃんと運動もするからいいんだけど。

「そういえばさ、今更だけど二人って中学からのダチかなんか?」
「んー?幼馴染」
「幼稚園からずっと一緒だな」

改めて考えると幼稚園から高校までずっと一緒ってすごいよね、雄英は鋭児郎の誘いがなかったら入ってるかわかんなかったけど。

本日も激混みのメシ処の長蛇の列にさっさと並ぶ。今日はラーメンな気分。鋭児郎たちは別の列に並びに行ったようだ。さて、何ラーメンにしようかなぁ。

「爆豪じゃん」
「あ?」

金髪ツンツン頭の爆豪も同じラーメンの列に並んでた。爆豪とラーメンて合わない。いや、何が似合ってるかと考えても思いつくものがない。

「てめぇ、なんか失礼なこと考えてんだろ」
「うぇ、そんなことないよ。何食べようかなぁと思って!」

ドキッとしつつ平静を装う。いや、めっちゃ疑われてるけど気にしない。そういや、爆豪と話するのUSJ以来か。

「爆豪は何ラーメン食べんの?」
「…激辛」
「、激辛…」
「何だコラ、文句あっか?!」
「いや、ないよ…」

おう、辛いの好きなんだね。俺無理。香辛料系ただでさえ苦手なのに。すごいな爆豪。

爆豪の前に出されたラーメンにさらに言葉を失う。真っ赤!!麺が赤く染まるほどに真っ赤!なに、そんなに辛さに耐性あるの!?一口食べただけで汗が吹き出しそうなんだけど。ちなみに俺が頼んだのは醤油ラーメン、ノーマルが一番おいしいよね、うん。

なんか、爆豪が汗吹き出しながらそれ食べてるの見てみたい(笑)

ひょこひょこ爆豪の後を付いていけばなにやら嫌そうな顔されたけど四席空いてるところに腰を下ろしたので、便乗して爆豪の目の前に腰掛ける。なんか爆豪て優しいのに言動で損してるよね、本人気にしてなさそうだけど。…いや、気にしてるのか?USJ の時も人気云々の時人気でなさそうって言われたら怒鳴ってたもんね、うん。

「鋭児郎ー、こっちー」

キョロキョロあたりを見渡し俺を探しているだろう鋭児郎達に手を振る。爆豪がいることに驚きも見せたが、まぁそこは気にするな。鋭児郎と瀬呂が席に付けばあとから来たらしい上鳴が、俺の席は!?とかうるさかったので、使ってない椅子を寄せて無理矢理狭いテーブルの上にお盆を載せる。爆豪が更に嫌そうな顔をしたが気にすまい。

「てか、なんで爆豪増えてんの?」


ちょっとした疑問だったのだろう、確かにここに来るまでは爆豪覗いた四人でメシ処に来てたから一人増えたらそりゃあ疑問に思うかもだが、その聞き方すると爆豪の地雷踏むと思うけど。

「だまれ、アホ面」
「ひでぇ!ただ聞いただけじゃん!」

ズルズルと顔色を変えずに真っ赤なラーメンを啜る爆豪に唖然とする。え、それ実は色に反して全然辛くないとか?

「このモヤシが勝手に付いてきたんだよ」

ギロリと睨まれた俺。ん?モヤシって俺のこと?

「モヤシって酷くない!?そんなヒョロくないし!」
「るせぇ、俺に比べりゃひょろひょろだろ」
「うぐっ!」
「あー、言い返せねぇなかなめ」

そりゃあ、肉体派の爆豪とか鋭児郎とかには敵わないけど!瀬呂も上鳴もおんなじくらいじゃん!ぶーぶー言っていると更にギロリと睨まれたので黙る。怒らせたら怖いのは学習済みである。

「爆豪のラーメン真っ赤じゃん。めっちゃ辛そうだから、汗吹き出しながら食るのかなーと思って付いてきた」

ぺろっと本音を言ってのけると前からぶふっ!とラーメンが吹き出された。ちょっ!汚い!!上鳴と瀬呂は腹抱えて笑い出すし、なんなのこいつら。

「てめぇ!そんなんで俺についてきたのかよ!悪趣味だな!」
「えー、いっつもブスーとしてる爆豪が汗かきながら必死に食べてるのとか面白そうじゃん。結局全然辛そうに食べてないけど」
「ちょっまって!夜守ぶっちゃけすぎ!」

ぶひゃひゃひゃ!と変な笑い方をする二人に思わずジト目になる。鋭児郎は新しいお絞りを差し出してくれた、ありがとう。

「ねー、それほんとに辛いの?見掛け倒しで実は辛くないとかいうオチ?」

興味津々にラーメンを覗き込むと、なんか嫌な笑顔を浮かべた爆豪が突然蓮華を口に突っ込んできた。

か・ら・い・っ!!!!!

「ーーーー!!!!」

殺人的な辛さに思わず視界がボヤける。水を飲んでも舌の痛さと口の中の強烈な刺激は抜けきらず、鋭児郎が差し出してくれたらしい水も一気に流し込む。

溢れ出した涙をゴシゴシと擦り、視界の先に現れた爆豪はニヤリとわらっていた。

「ハッ」

鼻で笑い、席を立った。なんなのあいつ、マジでいじめっ子気質だな!

「かなめ、大丈夫か?やっぱりあのラーメン辛かったんだな」
「あーもー、辛すぎ。まだ舌ピリピリする」

うえ、と舌を出す。まだぷるぷる笑いをこらえている二人には実技の時なんかしてやる、絶対。てか、爆豪、この辛さのやつ涼しい顔して食べてたよな。

「味覚崩壊してるんじゃないの、爆豪」

そんな疑惑のでた本日お昼。


………………


そんな日の放課後。早く帰りたいのにこの人垣は一体何だ。

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
「敵情視察だろ、ザコ」

ザコ呼ばわりされた峰田は半泣きになりながら爆豪を指差した。爆豪、変なあだ名付けるのやめようよ、ホントに。

「意味ねぇからどけ、モブ共」
「知らない人の事、とりあえずモブって言うのやめなよ!!!」

いや、ホントに。正論だよ、飯田。そんな爆豪に挑発するように言葉を重ねてくる紫髪の隈の濃い男。そうか、ヒーロー科て枠が少ないから、落ちた人は普通科に入ること多いんだな。で、体育祭で結果が残せれば、転科もありうる、と。

「少なくとも普通科は、調子乗ってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー、宣戦布告に来たつもり」

大胆な宣戦布告だな、君。それに便乗してか、B組の奴までも宣戦布告とも取れる発言をかました。まぁ、そんな奴らを焚き付けた爆豪にA組の非難する目が集まるのは必然的…、てあいつ帰ろうとしてる!せめて火種消してから帰れ!

「待てコラ、どうしてくれんだ!おめーのせいでヘイト集まりまくっちまってんじゃねぇか!!」

よく言った!鋭児郎!

「関係ねぇよ…、上に上がりゃ関係ねぇ」

それだけ言ってさっさと帰っていく爆豪。

「くっ!シンプルで男らしいじゃねえか!」
「上か、一理ある」
「騙されんな!無駄に敵増やしただけだぞ!」

ぎゃいぎゃい騒ぐ中、俺も常闇の意見にちょっと賛同。上に立てば文句は言われないもんねぇ。そう思うと、体育祭も楽しくなりそうじゃん。

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