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『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!』

あぁ、始まってしまった。

『敵の襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!!?』

プレゼントマイクの仰々しいスピーチをBGMに会場へと足を踏み入れる。先程までの騒ぎ回っていた奴らと同一人物とは思えないくらい静かに、皆が闘志を燃やしている。

競技場を囲むように設けられた観客席は人で溢れかえり、歓声が轟音となり響き渡っている。前世の体育祭と比べ物にならなくて目眩がする。さすが、昔のオリンピックに代わる雄英体育祭。規模が恐ろしい。

いくら将来有望の卵のスカウトに来ているからと言って一年の競技にこんなに注目あつまるもん?アレか、やっぱり先日の敵侵入の時に鉢合わせた俺達がいるからか。いや、あれはオールマイトが頑張ってくれたからだし、俺らほぼ何もしてないし。

『B組に続いて普通科C、D、E組!!サポート科F、G、H組もきたぞー!そして、経営科ー』

A組に続くように続々と現れる一年の人数にも舌を巻く。こんなにもいたのか。てか、俺ら入学式出てないから他のクラスとか全然知り合い居ないよな(発目は除く)。高校の知り合い21人しかいないとか寂しすぎる。

「選手宣誓!」

ピシャンッとムチ片手に空間を切り裂いたミッドナイト先生の衣装がこれまたなんとも言い難い。先生、すごい目の毒です。上着来てください。

「18禁なのに高校にいてもいいものか」
「いい」

真面目な顔で思案する常闇に峰田がグッと力強く親指を押し上げた。きみは揺るがないねぇ。

「静かにしなさい!選手代表!!1-A爆豪勝己!!」
「えー、かっちゃんなの!?」
「え、なんで爆豪?」
「あいつ一応入試一位通過だったからな」

マジか。あの見た目で筆記も出来るのか。なんか見た目で損しすぎじゃない?爆豪。

「せんせー」

だるいです、と隠そうともせず全面に押し出しながらもちゃんと選手宣誓するんだなーと半ば感心していた。が、

「俺が一位になる」
「絶対やると思った!!」

鋭児郎の絶叫が会場に響き渡る。途端に湧き上がるブーイング。いや、そりゃあそうだろ、てか爆豪さらに挑発するんじゃない!こっちに被害が来るでしょ!

「爆豪てホントに我が道を行くよね」

もう乾いた笑いしか出ない。絶対これ、他のクラスから総攻撃くらいそうで恐ろしい。さっきからちょいちょい普通科とB組から嫌味な言葉とか飛んできてるし。てか、ほとんどのクラスからじゃない?こわ。

「さーて、それじゃあ早速第一種目いきましょう!」

突如として目の前にモニターが出現する。ミッドナイトがこれは予選だと説明していく中、巨大なモニターが映し出した文字は。


障害物競争。


「計11クラスでの総当りレースよ!コースはこのスタジアムの外周4Km!我が校は自由さが売り文句!うフフフ…コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さぁさぁ、位置につきまくりなさい…」

何を来たって構わない、と言うことは妨害行為も有り、ということだろう。妨害、受けないように頑張ろう…。

ゲート上の3つのライトのうち、パッと一つが点灯する。

わらわらと皆が小さなスタートゲートの前に集まり始める。…にしてもゲート小さすぎない?なんか、大混雑な、予感。

二つ目、点灯。

絶対これ、混雑に乗じて妨害行為してくるやつとか絶対いるでしょ。さて、どうみんなが打ってでてくるか。

パッ。

「スターーーート!!!!」

ダッと皆がゲートへ向かって走り出す、が、まぁ予想どうり混雑しすぎて押しつぶされそう…!

「初っ端から使いたくなかったんだけど…結っ!」

結界でまず自分自身を押し上げてから宙に結界を形成し、宙を駆ける。もちろんちゃんとゲートを通過。誰も遮るものがない宙を走るほうが絶対早いし。

ピンッと次々飛び石のように結界を形成していくと、突如として空気が冷ついた。

「ってぇー!!何だ凍った!!動けん!!」
「寒みー!!」

轟が先頭を疾走していた。

この冷気はやっぱり轟なのね。緑谷に突っかかってたから絶対初っ端から飛ばしてくると思った。眼下をみればやはり引っかかっているのは他クラスばかりだ。そりゃあ他のクラスの個性なんて把握しきれないもんね。

「甘いわ、轟さん!!」
「そううまく行かせねぇよ半分野郎!!モヤシ!!」
「ちょっ、なんか俺の悪口も入ってなかった!?」

横を見れば爆風で飛ぶ爆豪。棒のようなものを創造し、凍結を避けた八百万。自力で飛びあがる鋭児郎の姿があった。

ひたりと、先程踏み台にした結界に、違和感。横目で後ろを見やれば俺の結界を足場に己の個性で引っ付いている瀬呂の姿が。む。

「夜守の足場もーらっ…!」
「俺の結界消すのも自由だからねー」

そう簡単に使わしてあげるほど優しくありません。

解。

ひでぇ!という声が聞こえてくるが無視。人の個性のものを勝手に使うな。

ようやく混雑もマシになってきたかと宙の結界をすべて解除し、地面に降りる。そのまま轟のあとに続き走っていると突如として出てきたやつ。

「あの時以来だねぇ」

『さぁ、いきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門、ロボ・インフェルノ!!』

やっぱりいつ見てもデカイよね、コイツら。

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