06


結局、上鳴が俺の個性を間違えたように体力テストはほぼ結界の弾性を駆使した。だって、立ち幅跳びはジャンプ力いるし、ーーー思いの外弾性つけすぎてビビったーーー、反復横飛びはなんかぶよぶよ跳ねてた小さい少年の真似したし、なんか少年から絶望したような顔で見られたけど。

あとは、ソフトボール投げと持久走か。


カキーンっ!


『253m』

ソフトボール投げ。いや、この場合はソフトボール打ちか。

なんか、反則っ!て言葉聞こえるけど先生なんも言わないし、八百万、ーー出席番号前だから覚えたーー、だって大砲作ってたからバットも有りでしょ。ちゃんと俺の個性だし。

でも、イマイチパッとした結果出ないよな、俺。全部ほどほどをキープって感じだし。もっと鍛錬しなきゃだめかー。

そういえば、さっきソフトボール投げですごい記録出してた少年。めちゃ指腫れ上がってて見てるこっちも痛いんだけど。あれ、折れてるんじゃない?あーもー、なんで固定すらせずにそのままにしてるの、アホなのあの子。

どうやら持久走の順番を待っているらしい少年に近づく。近くで見れば見るほど変わったうねり方をした髪である。これ毎朝セットしてるんだったら大変だよね。

「ねぇ、そこの少年」
「へ!?あ、夜守くん、どうしたの?!」
「それさ、固定した方がいいと思うんだけど」

痛くない?と腫れ上がった人指し指をさせば困ったように笑みを浮かべた。

「でも、縛るものとかも持ってないから…、あ、これ終わったら保健室に行かせてもらおうとは思ってるんだけど…」
「ふぅん、…じゃあしばらくの間だけどさ」

結、ピンッと張った小さめの長方形の結界で少年の指を覆う。根本から第一関節の上辺りまで、固定する意味を込めて指の先が出るように長さ調整してるから何もしないよりは動きが制限されてマシになるとは思うけど。ついでとばかりに念糸をひょろりと出し、中指と結界の人差し指をぐるぐる巻にしながら軽く結ぶ。これで少しマシでしょ。

「こんなんでもしないよりはマシだと思うから、あんまり動かさないようにね」
「えぇ!あ、ありがとうっ!これ、君の個性!?」
「そだよー。あんまり乱暴にすると耐えれないからまた指折るようなことはしちゃ駄目だよ」

さて、そろそろ前半組の持久走終わりそうだし。俺も準備するかなー。後ろを見ると何やら先程の少年が指の結界を見ながらなにやら呪文のようなものを真顔でブツブツつぶやいているものだから、引いた。え、何あの子怖い。



…………………




「んじゃ、パパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

受験のときもだったけどこういうのってホントに慣れない。まさか最下位ってことはないと思うけど、みんなみたいに突飛でた結果は出してないから微妙だしな。

ドキドキと早鐘を打つ胸を落ち着かせるように深呼吸をした。

「ちなみに、除籍はウソな」
「「「「「「「え」」」」」」」」
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

にやっ、とあくどい笑みを浮かべる先生にしてやられた!と大きく脱力した。あんなのウソに決まってるじゃない、なんて言ってる奴いるけどあの目は本気だったぞ。けど、それを撤回したってことは、なにがあったのか。

自分の順位を確認するついでに、最下位は誰かと視線を走らせる。21、緑谷出久。…だれだ。


とりあえず、俺はクラスメイトの名前と顔を一致させる作業から始めるしかないようだ。


…………………


「なんか初日から疲れたなぁ」
「そうだな、結局俺交流らしい交流してないんだけど」

出遅れた感満載なんだけど。鋭児郎は持ち前の人懐っこさでさっそくクラスに溶け込んでるし、そのスキルくれ。

「平気だろ。人数少ないぶん、これからいくらでも交流なんか深められるだろうし。けど、さすがに明日は遅刻ぎりぎりになるなよ!」
「好きで遅刻しそうになったんじゃないし」
「わかってるって!明日からは一緒に行こうぜ、せっかく学校一緒なんだからよ」
「おー。明日から俺朝も鍛錬するから行くとき絶対教えてね、絶対だよ?」
「鍛錬集中しすぎるのも考えもんだよなー」

けらけら笑いながらも鋭児郎なら絶対大丈夫という確信があるから朝から鍛錬する時間増やそう。みんなにおいていかれないように。




個性把握テスト
14、夜守かなめ





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