07


鋭児郎に迎えに来てもらい、今日は遅れることなく時間に余裕を持って学校に来ることができた。鋭児郎さまさまである。そして、ようやく上鳴のやつ以外のクラスメイトの名前もわかった。

緑谷て昨日の指もげた子だったのね。今日見たらきれいに治ったみたいだから良かったね。恐るべしリカバリーガール。

昨日みたいな突拍子もない課題が突きつけられる授業の連続かと思いきや、意外と普通。プレゼント・マイクの英語とか前世の高校の授業と変わらないくらい普通。先生のテンションが異常に高いのだけが異常だったけど。

ご飯もおいしいし、言うことないやー。なんて、満腹中枢が刺激されて少し気の緩み始めた時間帯。みんながソワソワと席につき、次の授業を待っていた。

「なぁ、次の授業てなんだっけ?」
「夜守さん…次はヒーロー基礎学ですわよ」

八百万に呆れたような目で見られた。ちゃんとカリキュラム把握してなくて申し訳ない。だからみんなソワソワしてたのか。先生ってだれなんだろ。

「わーたーしーがー!!」

お。

「普通にドアからきた!!!!」

なんか、オールマイトだけなんか画風違いすぎない?あれかNo.1ヒーローはあれくらいの画風がなくちゃ駄目なのか。

「早速だが、今日はコレ!!戦闘訓練!!!!」

BATTLEとかかれた紙を懇親の力を込めてこちらに提示してくる。うん、何もかも熱い人だな、オールマイト。

戦闘訓練と聞いて俄然盛り上がるクラス。確かに座学よりは体動かす授業のが楽しいよねぇ。

「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた…戦闘服!!!」 
「「「おおお!」」」

多くが興奮したように席を立ち上がり、自身のコスチュームの入ったケースを引っ張り出しに向かった。やばい、みんなが新しいおもちゃ与えられた子供にしか見えない。鋭児郎とか椅子ひっくり返してケース取りに行ったし。一体どんな要望書かいたんだろ。

微笑ましく思いながら人の捌けた棚から”21”と番号の振られたケースを取りに向かう。ずしりと重みのあるケースに、そんなに重量あるコスチューム頼んだっけ?とクエスチョンマークが頭の上を飛び交う。まぁ、着ればわかるだろう。

「着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!!!」
「「「「「はーい!!!」」」」」

みんなはしゃぎながら自身のコスチュームを着ていくなか、俺はその布地を握りしめた。…懐かしい。

以前の、着慣れたそれとほとんど変わらない衣装を身に着けていく。変わったところといえば袖も裾も短めにして足元はブーツにしたくらいだろうか。

やっぱり着慣れた和服のほうが落ち着く。いくら世界が違おうと、やはり俺の戦闘服はこれ一択だ。

てか、この腕輪とゴーグルなんだ?



……………………




「始めようか優勢卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」

ホントに様々な装いである。女子の一部が直視しがたい戦闘服なのはわざとなのか、本人たちが気にしていないのか…いや、気にしようか。目のやり場に随分困る。

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

ガンダムがいると思えば飯田か。完全防備なコスチュームだな。

「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!」

屋内戦。
よく考えたら俺って屋内戦したことないよな?前世でももっぱら外ばっかだったし。もしかして結構難しい?

「君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて、2対2、もしくは2対3の屋内戦を行ってもらう!!」

オールマイトがカンペを見ながら状況設定を説明する。覚える暇なかったのかオールマイト。いや、忙しい人だもんな、仕方ないよね。

しかしまぁ、戦闘訓練の設定は至ってシンプルだ。敵チームは核を守れれば、もしくはヒーローを捕まえれば勝ち。ヒーローは敵か核を回収するれば勝ち。それなら俺敵役だと全然訓練にならないなぁ。ヒーロー側のが訓練になりそう。

チームと対戦相手はくじ引き。ある意味運試しだよね。即席チームになるわけだし。

次々チームが公表されていく中で奇数のために余った俺。余り物みたいで悲しいんだけど。最後に先生がAからHのボールを一つ引き、そのチームが三人一組のチームになる。

「三人一組のチームは…Bチームだ!」

と、いうことは。
大柄なマスクしてるやつと、なんか半分コスチュームのやつだな。

………だれだ、君たち。


…………………


「敵チームは先に入ってセッティングを!5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察するぞ!」

さて、みんなどんな戦いスタイルなんだろうかとワクワクした心持ちでモニターを見ていたわけだけど、なんか、一戦目恐ろしすぎないこれ。爆豪が修羅みたいでめちゃ怖いんだけど。え、彼ヒーロー志望で間違ってないよね。あれだけ見ると敵にしか見えないんだけど。

ただ、格闘センスはずば抜けてる。あそこまで自由自在に個性を使えるようになるためにどれくらい努力したのだろうか。


そんな折、突然の轟音と地響き。


少し意識がモニターから外れた間に決着がついてしまったらしい。惜しいことした。

あー、もー。緑谷はぶっ倒れてるし、なんか腕酷いことなってるし。凄いパワーだけど制御できなきゃリスキーすぎるよね、あの個性。

あ、保健室運ばれた。








「さて、二戦目は。お、2対3だね。じゃあ、場所移してはじめようか。ただ、三人のほうがどうしても有利になりがちだから、少しハンデね」
「ん?」

ぽんと置かれたこの手は何でしょうか、オールマイト。






……重い。気が重いとかではなく、物理的に両手足が重い。

「…よろしく」
「ああ…」
「…とりあえず、立てるか?」
「…手伝ってくれたらちょー助かる」

座り込んだまま立ち上がることのできない俺を見かねて障子が手を貸してくれた、イケメンだなお前。んでもって、この状態の俺軽々引き上げるとかどんな腕力してるんだ。

今の俺の状態?んなもん、ハンデと言うなの筋トレだよな。自分の体重の約半分。つまり俺なら30キロオーバーの重りが両手両足にかかっている。一番筋肉なさそうだからとか、オールマイトふざけるな。こちとら鍛えても筋肉にならなくて困ってるんだよ。

「とりあえずそんな状態じゃあお前満足にうごけねぇだろ。二人共外出てろ、危ねえから」

俺たちを一瞥してビルの中へ足をすすめる轟に声をかける。
少年よ、コレチーム戦て忘れてない?

「…せめてさ、轟の作戦くらい教えてくれない?チーム組んでる限りは連帯責任になってくるでしょ。お前が自分に自信があるのはわかったけど、お前が破られたらなにも聞かされてない俺たちは次の手に出れないの。授業だろうが負ける気はないんでしょ?」

まぁ、俺こんな状態だから肉弾戦になったら障子頼りになるんだけど。なんて、へらりと笑えば虚をつかれたように目を丸くした轟と障子が俺を見つめている。
いや、何も変なこと言ってないよね?おれ。

「そうだな、あんたの言うことにも一理あるな」

互いに頭を突き合わせて轟が作戦を述べていく。うん、これこそ、チーム戦って感じ。
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