白群の星雲


DC混合 もし、空は蒼いか主人公がMHAに転生せずDC世界に転生したならば。
最近のゼロの執行人に乗っかってみました。管理人映画見ていなければアニメ漫画ともに知識ありません。付け焼き刃です。
なんでも許せる方はどうぞ。






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スマホ片手に見慣れない景色の中を歩いていく。やや車通りの多い道が続くが歩道が整備されているこの街では車との接触等の心配はなさそうだ。住宅街とオフィス街の真ん中のようなこの町並みを見上げ、小さくため息を漏らした。

ずしりと肩にかかるカバンの重みにズレ落ちそうなそれをしっかりと掛け直す。本日、俺こと夜守かなめは東京の高校へと転校する。

理由はなんてことはない。両親、主に母の仕事の都合上だ。昇格に伴い本部へと呼ばれたらしい。らしいというのは守秘義務のなんたらで話せないのだと苦笑いされたのでそれ以上は突っ込むことを憚られたのである。うん、ややこしいことには首を突っ込むまい。それはもう前世で嫌というほど学んだ。

もうお察しかとは思うが俺は前世の記憶がある、ようである。前世の俺は所謂異能者でありその使命を全うするように中学の頃から裏家業に足を突っ込んでいた。おかげで学生らしい生活などは送ったことがなかったのだが。いつの間にか前世での生を終え、何故かわからないが4歳の頃この体に突如として前世の記憶が戻ってきたのだからもう受け入れるしかないだろう。現に俺は受け入れて今に至る。

そして、今現在を生きるこの世界。驚くとこに何もない。

以前のように何か異能が年齢とともに発現するのかと思えば特にそんなこともなく。世間も何か異能があるのかと思えば、前世のごく普通と言われる生活を送っている。

そろそろつくはずなんだけど、と地図アプリを開いていたスマホをサイド起動させる。が、目的地の高校へ行くための道を一本奥へと進みすぎたらしい。…そりゃあ行く高校の制服着た学生が目の前にいなくなるわけだよ。ちなみに俺はまだ採寸とかもしてないから前の学校の制服のままです、はい。学ランだから学校いったら目立ってやなんだけど仕方ない。

とりあえず今は学校に行かねばならない。地図アプリによるとこの先にある商店街を抜けても最初辿ろうとしてた道に出るみたいだしこのまま突っ切っていこう。

朝早めの時間にもかかわらず賑わいを見せる商店街に少しテンションが上がる。大きめの書店もあるようだし学校帰りによるのもいいかもしれない。きょろきょろと周りを見渡しながらも足は早足で学校への道を歩く。なんせ今日は登校初日。まず職員室に行かなきゃいけないけどどこかもわからないから早めに行くに越したことはない、うん。

商店街の終わり、交差点が見えてきた。あそこを超えて右に曲がったら学校があるのだなとスマホの画面で確認して、スマホをポケットへとつっこ、。

「いやーっ!!!!」
「…ん?」

つんざくような悲鳴にスマホを持った手が止まる。なんかずいぶん近くで聞こえた気がしたんだけど。雑音に溢れかえった商店街がざわりと揺れる。声がした方へと振り返れば割れる人の波とその中から猛進してくる一人の男。

「誰かその男捕まえて!!!」
「え、え、え?」
「そこどけや!!」

頭が混乱する中男の後ろにいる女は蹲り何やら手を抑えて叫んでいる。俺の方に向かって猛進してくる男の手には似つかわしくない女性モノのカバンと鈍く光るナイフ。どう考えても逃走経路上にいる俺が一番今危ない気がする。いや、だからといってねぇ。

「えいやっ」
「ぐふっ!」

このまま俺にぶつかるのではないかというくらいの勢いで走ってきていた男に向かってもう鉄アレイでも入っているのではないかというほど重量のあるそれをもう遠慮なく投げつける。

ちょうどいい具合に男の顔に命中したらしいカバンの勢いに男の足が止まる。男にとって予想外だったのであろう、よろけた男のナイフを持っている方の手首を掴み取り足払いをして勢いをつけて地面のアスファルトへと投げつける。受け身を取らなかった男は背中をしたたかに打ち付けごほりと咽ているが構わずうつ伏せにしてから腕を捻り上げその背中に遠慮なく乗っかかる。ついでに危ないナイフは落としたところで蹴飛ばし、アスファルトを滑っていった。

「すみませーん、だれか警察よんでもらえませんか?」

俺と男を囲うように遠巻きに見ていた人々がざわざわと動き始める。携帯で警察を呼んでくれているらしい声に小さく息をついた。なんで東京来て登校初日にこんなことに巻き込まれるかな俺。

男の上に乗っかったままぼんやり思考を巡らせていると視界の端がもぞりと動いた。途端に周りから息を呑む声が耳へと届く。

「どけ、ガキ!!」
「うるっさいなぁ」

抑えていた右手と逆の、左手。ポケットに忍ばせていたらしい果物ナイフを自由であった左手で反撃を試みたようである。


でも、これでも前世では一応死線を掻い潜ってきたんだよねぇ。


カンッと割と軽い音を立て飛んでいったナイフに男は驚愕の表情を浮かべている。まぁ、後ろ手に俺の太ももでもグサリといく予定があっという間にナイフが手から抜けたらびっくりするよねぇ。…おかげでスマホが傷物になったんだけど。てか、え、壊れてないよね、まさか。若干スマホでナイフを弾いたことに後悔を募らせながら下にいる男にニッコリと笑いかけてやる。

「いい加減諦めてよ。ね?」

遠くから聞こえてくるパトカーの音に漸く俺の下にいる男は観念したかのように体を弛緩させた。


ーーーーーー

あれから数分もしないうちに警察官が何人かやってきて俺の下にいた男は現行犯逮捕されていった。いや、まさかこの目で逮捕されるのを見るなんて思ってもいなかった。んでもって事情聴取されてる俺って…。早く学校に行きたい、切実に。

スマホが起動するか確認したら真っ黒の画面からうんともすんとも言ってくれなくて思わず項垂れる。マジか、結構大事に使ってたんだけどコレ。

スマホのこと言ったけど苦い顔されたからたぶんあの男に請求もできないのだろう。なんか、いろいろ損してる気がする。

「じゃあ君はたまたま居合わせた所を捕まえたのね」
「ナイフ持ってて危なかったので、つい」

ついって…、と俺に事情聴取をする若めの男女の警官は呆れたように互いを見合わせた。

「あのね、今回は君も無傷で済んだから良かったけどいつもそうとは限らないからね。君の安全第一に考えなさい」
「はあ、すみません…」
「かなめ!」

腑に落ちず、しかしながら言っていることは真っ当なので素直に謝っておく。俺もできればこんな事に遭遇したくなかったです。商店街を突っ切ろうとした俺のバカ。まぁ、怪我人が出なくて幸いとしておこう。そんなことを思っていれば耳慣れた声が聞こえてくる。

人垣から現れたその姿に知らず知らずのうちに強張っていた体が弛緩する。小さく息を付き、目の前に駆け寄ってくる姿に思わず小さく笑みを浮かべた。それと同時になにやら敬礼をする目の前の男女の警官。……なぜ?

「母さん」
「怪我、してないでしょうね?」

現れた途端ボディチェックをし始める母に、思わず口元が引きつる。いや、心配ゆえの行為だろうから甘んじて受けるけど、けど、ちらりと視線を動かせばぽかんと口を開けたままこっちを見てる警官たちの顔見て。お願い。

満足行くまでチェックしたのか離れた手に今度こそ息をつく。そういえば、と左手に持ったままであったスマホを母の目の前に掲げる。

「ごめん、スマホ駄目にしちゃった」
「気にしなくていいわよ、買ってあげるから」
「ありがと、…そういえば今何時?」
「9時ね、学校始まってるんじゃない?」
「俺今日初日なのに…」

まさかの遅刻。一緒に行ってあげるわよ、と言ってくれる母に後光が指している気がする。さすがに初日から説教とか勘弁。不良認定も嫌だし。

「や、夜守警視…えっと…?」

硬直から解き放たれたらしい男の警官が俺と母を見比べてえ、え…と言葉にならない言葉を口から吐き出している。

そう、俺の母は。

「私の息子です」

ーーー警察官なのである。


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