爆処組1との邂逅


ifのif。
もし、空は蒼いか主人公がMHAに転生せずDC世界に転生したならば。
管理人映画見ていなければアニメ漫画ともに知識ありません。原作を歪曲させています。何でも許せる方のみどうぞ。管理人の浅い知識からの産物です。





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「…………今何時?」

クライマックスを迎え、大きな一区切りを終えたところでぐぅ、という情けない音を発したお腹の音に反応し、今まで文字の海に落ちていた思考が浮上する。見上げた時計の針が示す時間は昼飯時を過ぎた頃。そりゃあお腹もすくよね。

カチャリと開けたドアからはしんと静まり返った部屋が迎え出てくる。この時間だと誰かいそうなのになぁとぼんやりと考えながら何やらテーブルに置かれているメモ用紙が目に止まる。

"ごはん、冷蔵庫の中にあります。お母さんのお弁当届けに職場に行ってくるね お父さん"

「そりゃあ誰もいないわけだ」

納得し、その上をテーブルの上に置き直し大きな冷蔵庫の中に鎮座しているお皿を見上げ、ちらりと誰もいないことを確認して"印"を結んだ。

「"結"」

ジジッと小さな音を立て足元に形成された結界の上に登り、手の届く距離になったお皿を慎重に冷蔵庫から取り出した。

そう、今更になるが俺夜守かなめは前世の記憶がある。前世では結界師として裏家業に従事し、ことが済んでからは平穏な、でも代わり映えのしない毎日を送っていたはずだが、ある日突然この世界の四歳児のこの体に前世の記憶が戻ってきた次第である。まぁ、詳しいことは聞かないでほしい俺自身もよくわかってないし。

そんな驚き体験から早4年。わかったとこはこの世界では俺のような"異能"を使える人間は周りにはいないこと。両親の観察をしていたが異能らしき異能はなさそうだ。ご近所さんもしかり。妖にも遭遇しないし。

俺は夜守家の一人息子として何不自由なく育ててもらっている。今母は仕事の都合で東京に単身赴任中であり久々の家族団欒である。俺はいつもは父と一緒に県外に住んでいる。

仕事が忙しすぎるのか、生活感をあまり感じないこの大きな家に母は住んでいるらしい。

ブィン、と音を立てながら温め作業をしてくれるレンジをみやりながらこぽりこぽりと麦茶をコップに注ぐ。うん、お茶美味しい。

チンッと軽快な音を立てて終わりを告げたレンジからお皿を取り出す時、タイミングを見計らったかのように静かな空間に電話が鳴り響いた。と言っても俺専用の携帯電話だけど。小学生に携帯もたせますか、両親よ。駆け足で部屋に置きっぱなしにしていた携帯に表示されているのは"お父さん"の文字。何か忘れ物かな?

「はい、もしも…」
『かなめ!今家にいるのかい!?』
「え、うん家だよ」

どこか焦ったような父の声が電話口に響く。周りはお世辞にも静かとは言い難く、父の声も雑踏に紛れそうなほど聞き取りにくい。

『今すぐ家から出て!エレベーターは使わずに階段で!もしくは警察の人がいたら助けを求めてすぐ一緒に外に出て!早く!電話は切っちゃだめだよ!』
「え、お父さんどうしたの?」

父のあまりの動揺ぶりにこちらが逆に冷静になる。家からすぐ出ろって何事?もしかして火事…の時は警報機が作動するし…。

『家のマンションが危ないことになってるんだ。だから、お願い早く出てきて…っ』
「う、うんわかった。なにか持っていくのとかある?」
『かなめと携帯だけでいいから!』

おおう、そんなに緊急事態ですか。全くといっていいほどよくわからないままに急いで玄関へと駆け寄り靴を履いて家から飛び出した。バンっと勢いよく開けすぎたのか、衝撃でなにかに思いっきりドアがぶつかり跳ね返ってきた。それとともにいてぇ!という男の人の声も。

「「「「「え」」」」」

恐る恐るドアから覗いてみればやたらと仰々しい透明な盾や黒黒とした防具やヘルメットを装着した男の人が複数人。……え、強盗?いやいやよく見て俺、POLICEてどでかいロゴがついてるからきっと警察の人だよ、うん。

驚いたのは俺だけではなかったらしい、先に意識を取り戻した背中を擦っていた長髪でタレ目の男の人がタバコの煙を吐き出しながら困ったように言葉をつぶやいた。

「まだ住人がいたのか。気づかなかったな」
「ぼ、坊や!今すぐおじさんたちと一緒に下へ行こうか。他にお家に誰かいるかい?」
「俺一人だけ。留守番してたから」
「わかった!」

あとから話しかけてきた男の人が無線でなにか連絡を取り出し始めた。いや、また住人がいたのかってことはこのマンションの住人は何かしらの理由で退避させてて、予想外に俺が残ってたってことなのかな。仕事増やして申し訳ない。

長髪の人の後ろに何やら取り外された鉄板が置かれ、ポカリと空いた中には、何やら仰々しい配線がびっしりとある液晶画面が一つだけついた大きな箱が鎮座していた。あ、察したこれ爆弾では?

「ボウズ、これには触っちゃだめだよ。とーっても危険なやつだからね」
「今から解体するの?」
「そ、よく知ってるな。だから君は警察のおじさんと一緒に先にここから出ててねー」
「うん、頑張ってお兄さん」

爆弾じゃ俺は専門外だし。誰もいないなら結界術で滅することもできるけど…これだけ人目があっちゃ流石にできないな。

「萩原さん、下と連絡がついたので自分が一緒について行ってきます。お願いしててもいいですか」
「いいよー。あとは解体するだけだから俺だけでもいいし………と、松田か」
「じゃあ君はおじさんたちと行こうか」

プルル、と音を立てたのを聞き思わず握りしめていた携帯を見下ろしたがそういえばまだ父と通話がつながってるから俺にはかかってくるはずはなかったなと見てから思い出した。
周りのおじさんに促され、その背中を追いかけようとしたところで靴紐が解けていることに気づき座り込んだ。

きゅっ、としっかりと結び直し、長髪のお兄さんが携帯の電話口からの怒鳴り声をのらりくらりと交わしているのを耳で拾いながら、立ち上がった。一瞬先程まで軽快に紡いでいた言葉が途切れ、目の前のお兄さんの表情が凍りついた。

追った視線の先、先程まで真っ暗だった液晶画面に数字が浮かんでいる。

「っ、逃げろ!!」

お兄さんがつんざくように叫ぶ。次いで、おにいさんが俺の体を抱き上げ、階段の方へと走り出す。

タイマーの指す時間は、0:00:00.87。

「結」

考えるより先に言葉が口から漏れた。

ドカーンッともバーンッとも、この世界に生まれ落ちてからは聞いたこともない轟音が耳を刺激する。とっさに作った結界は爆弾の強度に耐えかねて弾け飛んでしまったようだ。爆風に目が開けられない。叩きつけるような衝撃が体をも襲う。が、どこか柔らかい何かに守られるようにしっかりと頭をホールドされている。

「いて…」
「……ボウズ、怪我してない?」
「………うん、多分」
「嘘付け」

打ち付けた背中の鈍痛に思わず声が出た。ら、柔らかい何かが低音を響かせて喋った。少しタバコ臭い匂い。あ、お兄さんか。どうやら軽口を立たける程度にはお兄さんも無事らしい。

非常階段の踊り場。ちょうどそこに倒れるように折り重なっていたお兄さんの体の隙間から見上げた、先程までいたフロアはここからでもわかるほどに損壊している。いくらとっさに張った結界だからとはいえこれほどの威力とは…現代の科学技術はおそろしい。

運良く階段に逃げ込め、爆風に煽られて階段を転げ落ちて踊り場に落ちてしまったようだ。いや、命あればいいってね、うん。

意識が他へ行っている間に立ち上がったお兄さんにぐいっと体を引き上げられる。目を白黒させていると面白そうに頭をワシワシと撫でるお兄さんに思わず講義の声が漏れる。

「お兄さん、俺歩けるよ」
「一般市民はおとなしくこのまま俺に連行されてくださーい。ついでに、聞きたいこともあるし?」

"結"って、とっさに君は何をしたのかな?

耳元で囁かれた言葉にぞくりと背筋が粟立つ。やばい、抱えられていた至近距離だから聞こえてしまったのか。いや、でも見られたわけじゃないしなんとでも言い訳はできる。

「なんの事?俺なんか言ったっけ?」
「俺がタイマーを確認したときはちょうど一秒後に爆弾が爆発する予定だった。爆発は確かに時間通りに起きたが爆風が、来なかった。いや、少し遅れて爆風が俺に届いた。爆発してコンマ数秒のうちに必ず届く爆風がだよ?おかげで階段まで逃げ込めたから命拾いしたものの、間に合わないと思ったもんねぇ」
「お兄さんの気のせいじゃないかなぁ」

へらりとした緩い雰囲気とは裏腹に随分と的確な指摘をするめの前のお兄さんにバクバクと心臓が早鐘をうつ。チラリとあった視線に思わずどぎまぎとする。

「勘違いはないね。俺これでも爆弾処理班の指折りだし。時間感覚はコンマ単位で体に染み付いちゃってるしねぇ。それに君がなにか呟いたとき変な感じがしたし。まぁ、これは俺の感覚だからなんとも言えないけど」
「……」

随分と若いのにおじさんがなんでこのお兄さんに敬語使ってたのかがようやくわかった。なるほど、優秀なのねこのお兄さん。しかし変な感じがしたって、初めて言われたな。時々お父さんたちに隠れて結界術使っているけど何も言われたことないし。…あれか、慣れか。

しかし、にこにこ笑ってるお兄さんをどうするべきか。説明するっていっても説明できるものでもないし、こんなガキの言うことなんて信用するはずないし。中二病の子供ってことにしよう、俺まだ8歳だけど(身体年齢)。

「実はね、俺魔法が使えるんだよ」
「へぇ、それで俺を今回守ってくれたんだ?」
「そうだよー」

てことで何とかレンジャーに憧れてる小学生ってことで今回のことはたまたま運がよかったってことで忘れ去ってくれ、お兄さん。

不毛な会話を繰り広げているとようやく外に出れたのか、救急車にパトカーそして、仰々しいおじさんの群れ、群れ。そしてその後ろから見える野次馬たち。…こんなことになってるなんて思いもしてませんでした、まる。

随分とすごい自体に巻き込まれていたのだと今更ながらに実感し、お兄さん、萩原研二さん(なんか名前教えてもらった)に抱えられたまま救急車へと乗り込んだ。なんか手短に報告だけして一緒に来たんだけどこの人。未だににこにこ笑いながら俺を抱っこしている萩原さんの拘束から抜け出そうともがくがただ体力がゴリゴリと削られただけでそのまま病院へとついてしまった。…何なのこの人、爆弾爆発させた割にめっちゃニコニコしてて怖いんだけど。

病院についたことでようやく開放された俺にこっそりと耳打ちしてきた萩原さんの言葉に思わず耳を塞ぐ。それを見てケラケラ笑いながら別室へと消えていった背中を思わずうらめしげに睨んでしまったが許してほしい。

『じゃあ魔法使いくん。またな。次はちゃんと教えてね?』

そんな不穏な言葉を残していった人なんて俺の中の警戒対象にリストアップである。が、そんな出来事など忘れ去ってしまうくらいの形相で病室に駆け込んできた父を慰めるのに必死すぎて、萩原さんとの出来事など本人がおやつ片手にお見舞いに俺の部屋を尋ねるまですっかりと頭から抜け落ちてしまっていた。


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