奇術師との邂逅


「ねぇ、アンタ今度の日曜日暇?」
「ちょ、園子」
「…俺?」

昼ごはんも食べ終わったお昼休み。俺は早速コナンくんから借りたナイトバロンシリーズの最新作を読みふけっている。漸く事件解決が佳境を迎えたところで先程の言葉だ。せっかくこれから楽しみだったのに…てか誰だったっけ…?

「…ああ、鈴木か」
「ああ、鈴木かじゃないわよ!クラスメイトの名前忘れてたわね!?」
「そ、園子!それより本題!というより夜守くんにわざわざ頼まなくったっていいじゃない」

きゃんきゃん怒鳴る鈴木に内心で謝りつつ、毛利の言葉にクエスチョンマークが頭を飛び交う。てか、ほんとになんの用事だろうか。鈴木と話すことなど連絡事項以外では初めてではないだろうか。毛利と一緒にいるのはよく見かけるけど。

「そうだったわ。アンタ今度の日曜日暇?ちょっと子守してほしいんだけど」
「子守…俺にできると思うの?」

なんて無理難題を突きつけるんだこいつ。現世でも俺の身近に子供がいるわけでもなければ(コナンくんは別だ。あの子手かからないし)、前世でも子供の相手などしたことない。そんなのは子供好きが率先して対応してたし。答えはノーである。

「子守っていってもコナンくん見ててくれたらいいのよ。あのガキンチョ、うちの展覧会に来るって聞かないんだから困ってたのよ」
「だから、いつもどうり私が見てるってばー…」
「なんで蘭を誘ったのにあのガキンチョとも回らなきゃいけないのよ。たまにはあの子抜きでキッド様を思う存分めでたいじゃないっ」
「キッド?」
「アンタまさかキッド様まで知らないの!?」
「どっかの美術館に展覧してある宝石を盗みに行きますかなんとかってマスコミに予告状出してたやつだっけ?」

なんでそれに鈴木が関係あるのだろうか?なんて顔に出ていたのか、アンタバッカねぇと呆れたように言葉をこぼす鈴木。

「それ、うちで今やってる展覧会だから!予告状来てる当日は関係者以外は立入禁止。でも、キッド様が来るとなれば行かないではないじゃない!で、お爺様に頼み込んで入らせてもらう事になったのよ」
「へー…」

鈴木の祖父と関係者各位、お疲れ様です。

「ていう話を蘭にしてたらあのガキンチョ付いてくるって聞かなくて。もうこの際一人も二人も増えても変わらないから子守役でガキンチョと仲いいアンタに頼もうと思って!」
「頼もうとかなんとか言ってるけどそれ決定事項だよね?確か予告状て明後日じゃなかったっけ?ねえ?」

俺には否定権はなかったです、はい。

そんなこんなで翌日午後六時。キッドから来ていた予告時間は午後八時とのことだが、まぁ、どうせなら人がいないときに展示品を見るという贅沢をしているわけである。俺を含め高校生三人、小学生一人。特に俺は若い男だからか美術館に入る前の"検査"が誰よりも長かった。顔をグニグニされたのは流石に応えた…何だったのあれ。

無事に検査も通過し、鈴木から手渡された関係者証を首から下げ、ちらりと周りを見やる。警備関係でバタバタしている美術館職員や警察官からはジト目で見られつつの少々居心地が悪いのはもう無視するより他にない。だって鈴木は俺の意見は聞き入れてくれないし。コナンくんは意気揚々と警察官の人に話しに行くし…君なんで警察官に指示出してんの?

「あ、これ?」
「そうよー。卵くらいの大きさのダイヤでこの深い色の鮮やかさと透明度。ブルーダイヤモンドでここまでのものは今これが一番よ」

規制線を張られネックレスから一メートルほど離れたところからそのダイアモンドをまじまじと見つめる。確かに、宝石にさして興味のない俺でもきれいだと感じるこの宝石は見る人から見れば喉から手が出るほど欲しいものなのだろう。これが数百億円…それを展示会に出せる鈴木財閥恐ろしや。

「キッドどうやってくるんだろうね?」

きょろりと周りを見渡せば警察、警察、警察…etc.俺ならこんなところに突っ込んでこない。捕まる危険性が高い。まぁ、予告状出してる時点で策は持ってきてるんだろうけど。

「キッド様はね!いかなる厳重な警備も堅牢な金庫も魔法のように突破し、悠然と夜空に翼を広げて消え失せる白き罪人!その華麗に宝石を盗むさまを例えて月下の奇術師とも呼ばれてるわ!」

熱弁を繰り広げる鈴木の言葉を若干聞き流しながら、もう一度目の前の宝石を見つめる。確かに、キレイなものだけど。てか、怪盗キッドが今まで盗んできた宝石はどれも希少価値が高かったり、王室に保管されているものであったりと様々らしい、が、どれもこれも盗んだ数日後にはなぜか警察官宛に送り届けられているらしい(鈴木情報)。危険を犯してまで手に入れた宝石をやすやすと返還する、しかもちゃんと本物を。てことは、宝石を売り払うのが目的じゃないってことだよねぇ。スリルを得たいから?にしてはリスキーだけど。…もしくは、なにか目的があって、ていう方が納得いくよねぇ。……てか鈴木、そろそろ黙ろうか。後ろにいるちょび髭の警察官の額に青筋が出てるから。警察官ばっかなところで怪盗キッドを称賛しまくるその強固な精神すごい。

流石にまずいと思ったのか、毛利が物理的に鈴木の口を封じたので一息つく。もう、心臓に悪いことしないでよね。体をほぐそうと首をぐるりと回しながら天井を見上げたとき、キラリと光る小さなものを見つけた。一般的に美術品や宝石を展示する際は生活光のように天井からの光をできるだけ抑えたりするように調光してある。今回の宝石のようなものならばこの会場のように天井、側面からの光をできるだけ抑え、宝石自体にスポットを当てた光でその輝きが一番美しく見えるようにしてあるはず。もちろん、その際はシャンデリア等の装飾品も取り除かれることが多いが、小さく光るアレ、なんだろ?

あまりにもじっと上を見すぎたせいか、ちょんちょん、と服の袖を引っ張られる違和感に視線を下げるとこてんと首を傾げたコナンくんがいた。

「かなめさん、上ばっかり見てどうしたの?」
「んー?いや、これだけ調光してあったりシャンデリアの装飾品も取っ払ってるのにあそこの天井でキラキラしてるやつって何かなーって思って」
「!?かなめさん、それってどこ!?」
「え、あそこだけど」

先程まで見つめていた天井を指差す。それをコナンくんも見つめ、なにやらメガネのフレームを押さえたかと思うと中森警部!と叫んで警察官の山に埋もれていった。…え、何だったの一体。コナンくんが何やら叫んだあとにその声より更に大きい声が会場内にこだまし、ズカズカと警察官を引き連れたコナンくんが俺のもとに帰ってきた。…え、何事。

瞬間、暗転。

「来やがったなぁ!」
「え、ナニナニ!?なんで急に暗くなるのよー!」
「…今日はずいぶんと早いな」

各々が声を上げる中、ぱしぱしと目を瞬かせる。光が全くない暗闇、でも、…見えてきた。ぼんやりとしたシルエットだが、きっと周りのコナンくんや毛利たちと比べて俺の夜目は聞いてる方だと思う。

「Ladies and Gentleman.今宵も華麗なるマジックショーにようこそ」
「キッド様よー!」

暗闇の中から、よく通る若い男の声が木霊する。あと鈴木の嬉しそうな声も。次いでパッと淡い光で照らされたその姿に光でなれない目を細めた。暗闇に溶け込めない白いハットに白のスーツ、白いマントが小さく揺れている。黒いモノクルを付けた若いの男、もしかして俺と同じくらいの年齢か?

「今宵はより客が多いようだ。小さなお客と…勘の鋭い男も来ているようだし今日は早々に帰らせてもらおうか」
「そうは行くか!いけぇぃっ!」

ちらりと、怪盗キッドと視線があった気がした。警察官の声に、スポットライトに照らされた姿に虫が群がるように光を得た警察官が駆け出していく。俺の隣では何やら腕時計を怪盗キッドに向かって構えたコナンくんの姿がある。え、何事。それを認識した視界の端で、怪盗キッドが素早く何かを抜くのが見えた。…白銀に輝く、銃口を。

「コナンくんっ!」

思わずその小さな体をこちらへと力づくで手繰り寄せる。パシュッと小さく空気を裂く音を耳に捉えながら銃弾の軌道がそれたことを祈り、カツンと床に刺さった正体を確認して思わず脱力した。ただのトランプかよ!銃弾じゃなくてよかったけど!

「あ、ありがとうかなめさん…。げっ、麻酔銃床に打っちまった」

…なんか腕の中でコナンくんが不穏な言葉を漏らした気がしたけど聞かなかったことにしよう、うん。コナンくんをそっと腕から開放しながらトランプを放った相手を見上げる。相手もどこか腑に落ちない表情を浮かべているがおあいこであろう。

「…今日は探偵くんより厄介な男がいたもんだ。じゃあ、お宝も頂いたし今日は帰らせて頂くとしようっ!」
「おまっ、いつの間に!?それは最新型の電子プログラムで守られ…あーっ!!停電!!」
「……コントなの、これ」

キッドの手の中に輝くブルーダイヤモンドのネックレスを確認した警察官の悲痛な叫びに申し訳ないが呆れる。せっかく最新のシステム入れても電気通ってなきゃそりゃタダのガラクタだよね。せめて予備電源用意しときなよ。

「では、失礼!」
「まて、このっ!」
「!?」

キッドの言葉とともにまた暗闇に包まれる場。光がなくなるその一瞬、堆く掲げたキッドの右手には白い何かが握られていた。それを叩きつけた途端にもくもくと白い煙が舞い上がる。前世での記憶と言おうか、もう脊髄反射のように服の袖で口元を覆い、その煙を吸わないように思いっきり飛び退いた。広い展示会場の一角、警察官やコナンくん、鈴木たちも含めて煙に巻かれたように見えたけど今の暗闇の中ではその視認もなかなか難しい。…ただ、聞こえてくるのが阿鼻叫喚の声である。

「目が、目がー!!!」
「ぶえっくしゅっ!へっーくしゅ!」
「もう、目も鼻も口も痛いー!!」
「…地獄絵図」

展示会場の入り口付近まで思わず逃げてしまったが、煙はどうも重さのあるものであったらしく部屋に拡散されることなくピンポイントに大打撃を与えるものらしかった。…ここでもほんのりと辛味を帯びた刺激臭の匂いが鼻をつく。逃げて正解。

「げっ、取りこぼし」
「うん?」

唐突に、横から声が聞こえたと思えばぼんやりと浮かび上がる白のシルエット。ちゃっかりゴーグルとマスクをしているがこんな奇抜な格好をしている人そえそう見違うまい。んでもって、"取りこぼし"は俺のことだろう。うん、でもあんなの食らいたくないから逃げるよ。

「かなめさんっ…げほっ!キッド捕まえて!」
「逃げ足なら俺のほうが上だと思うぜ、あばよ、探偵くん」
「え?俺が追っかけるの?」

俺、一応ただの高校生なんだけど(現世)。

早く!と小学生にせっつかれながらキッドが消えた方へと足を向ける。展示会場とあって様々な展示品がある中をぶつからないように避けながら走り出した。


(…なんで、この暗闇の中を何にもぶつからずに走れるんだ?いや、それよりキッドの銃を向けられたときとさっきの煙幕の時の危険回避能力。かなめさんは本当にただの高校生なのか?)


非常灯すら灯っていない真っ暗な美術展の中をひた走る。暗闇に慣れてきた瞳で周りを見渡すがもうキッドの姿はない。ほんとに逃げ足早い。

丁度、関係者以外立入禁止の扉が目に入る。

キッドと言えばマジックの達人で変装にも特化している。…でもこの美術館を囲うように観衆がいるなかでのこのこと出口から出てくるわけはないだろう。…捕まっちゃうし。となれば、ギィィと嫌な音を立てながら重たい防火扉を押し上げると上の階へと続く階段があった。じーっ、と上を見上げても物音一つしない。…まぁ、いなかったらいなかったでいっか。別に俺が捕まえたいわけじゃないし。

コナンくんと警察官が聞いたら激怒しそうだから心の中だけでとどめておく。ゆっくりと扉を締め、階段を駆け上がった。





月明かりの差し込む部屋、闇になれためには十分すぎる光があるその部屋にくっきりと鮮明な姿を映し出した。こつり、と音を立てればこちらの存在に気づいていたらしい怪盗キッドがニヤリと笑いながら振り返った。

「…よくこの部屋だってわかったな。上から逃げるってわかってもここまでは追いつかないかと思ったが…おまえを甘く見ていたようだ」
「まぁ、…勘だよね」

非常階段を登りきった先は、まるで迷宮につながるダンジョンのような風体であった。何が言いたいかというと、部屋が多い。美術品は地下で厳重に保管されているなだろうが、その美術品を展示するときにはそれぞれの趣に沿った装飾ももちろんある。それを保管するための部屋だろうが…なんせ数が多い。

もう下に戻ってもいいかなぁとも思ったが、まぁ、昔の経験を活かして少し頭を使っただけのことである。

キッドが逃げる常套手段としているのはハングライダー。それを使うとなればできるだけ建物の上から飛ばないと浮力がないため落下する。この時点でこの美術館の最上階まで来たわけだが。

わざわざマスコミにまで予告状を叩きつける、マジックを得意とし人の目を惹きつけたがる、夜に活動することが多いくせに闇夜に目立つ白の装い。…これらを勝手に脳内処理し、俺の中で怪盗キッドは"目立ちたがり屋"という結論が叩き出されたわけである。

マスコミや野次馬にも見えるように逃走するには、美術館正面の部屋、かつ、月明かりに照らされた部屋がいいと推測を立てたわけである。…ちなみにこれらの情報を整理するに当たり鈴木情報が大半を占めることをお話しておこう。鈴木が熱心に語っていたことは無駄ではなかった。

「勘、ね。お前に追い詰められると逃げるのに大変苦労しそうだから見逃してくれるとありがたいんだけどな」
「別に構わないけど」
「……………は?」

ぽかんと口を開けたキッドに思わず苦笑いがこみ上げてくる。そりゃあ、ここまで追ってきておいて見逃すってのもなかなか変な話だもんね。

「俺はただの"子守で呼ばれた暇人な高校生"だから別に君を捕まえる必要はないんだよね。ちょっと体裁があったから追いかけてきたけど」
「…変なやつだなお前」
「だからどうぞ逃げていいよ、俺は"追いつかなかった"って言うだけだし」

逆にただの高校生がキッド捕まえたら一大ニュースになるんじゃないだろうか。だって有名な怪盗でしょ?いままで何十回と盗みを繰り返してかつ捕まってない怪盗を一介の高校生が捕まえたらマスコミの体のいい餌になるだけである。勘弁。

「……………」

静かにこちらを見ていたキッドが徐に懐から先程盗んだブルーダイヤモンドを手に取った。月明かりに照らされ、キラリと怪しげな光を放つそれを掲げ、暫く見つめ、小さく息を吐き出した。

「こいつも、違う」
「ん?」
「俺が探してるやつじゃねぇって事だよ。返すわ」
「は?うわっ、投げるなよ!」

ポイッと放物線を描いてこちらに飛んできたのは先程キッドが盗み取った大きなブルーダイヤモンドのネックレス。ずしりと手のひらの中でその存在の重さを示すそれは本物だろう。しかし、なんで急に返してくれることになったのだろう。………探してるやつじゃないってことは、怪盗キッドはリスキーを求めて怪盗をしているわけではなく、ある宝石を探すことを目的としてコレをしているのだろうか。

「逃してくれる代わりに、それ返しとく。…まぁ、もともと返すつもりだったけど。俺が持ち出さなきゃ宝石を守れたって事で世間的にはお前の勝ちだ。…名前なんてんだ?」
「いや、俺は勝ち負けとかどうでもいい。……………夜守かなめ」
「かなめな」

ニヤッと笑った怪盗キッドはバンッと大きな音をたて、背後にあったガラス扉を押し開けた。ビュウッと夜風が部屋へと舞い込み、思わず目を瞑る。

「今日はお前の勝ちだ、かなめ!またどっかで会おうぜー!あばよ!」
「え、ちょ!ハングライダーは!?」

三階バルコニーの高欄の上に立ちそのまま下へと落下する姿に叫び声を上げながら高欄から身を乗り出し落ちる姿に手を伸ばした。ハングライダーどこやったの!?と焦点を合わせた瞬間、わっ!と歓声があがりパンッと布を張ったような音が夜の暗闇に響いた。先程まで地面に落下しようとしていた体はどこに隠していたか不明のハングライダーによって悠然と空を飛んでいる。最後にもう一度目があった気がしたけど口を尖らせる。なんて心臓に悪い…。

「無駄に疲れた」

へたりとバルコニーに座り込み、ドタドタと騒がしくなってきた部屋を見つめる。…やっと目と口と鼻が痛いのが収まったのだろうか。

「キッドはどこだー!!!」
「逃げましたよ」
「なにぃ!!??」

あっち、と空を指差すと今日一日キッドキッドと煩かった警察官が高欄から身を乗り出し、今となっては豆粒ほどになってしまった姿を歯をギシギシ言わせながら見つめている。こえぇ。

「くそっ!またあいつに持っていかれちまったじゃねぇか!おい、今すぐ追いかけっ!」
「あ、宝石ならここにありますよ」
「「「「「は!?」」」」」

一斉に何十という目がこちらを向く。ぎょろりと集まった目におずおずと先程キッドこら投げられた宝石を掲げる。恐る恐る触れる警察官に静かに渡しながら小さく息をついた。後から追いついてきたらしい鈴木のお爺さんと宝石の鑑定士が本物であると告げるとこの場が一気に高揚に包まれた。

「でかした、ボウズ!宝石が無事ならこっちのもんよ!おい!今からキッドを追うぞ!」
「いやぁ、よく取り返してくれたな!君には感謝するよ!」
「いや、俺ほんとに何もしてない…」
「ねぇねぇ、かなめさん」
「ん?」

バンバンと背中を叩く老人から開放され、下からの声に視線を下げる。こてんと首を傾げたコナン君にこちらも首を傾げる。

「かなめさん、なんで真っ暗の中何にもぶつからずに走れたの?運動もすごく得意みたいだけどなにかしてるの?」

どこか疑いを持った色を瞳の奥に隠しながら、コナン君が俺に問いかける。なるほど、"普通"は暗闇の中を走るのはできないのか、と今更ながら前世で鍛えさせられた身体能力に辟易とする。結界術が使えなくなった反動なのか、なんなのか、やたらと現世のこの体、身体能力やら感覚が鋭敏である気がしてならなかったのだが誰にも指摘されてなかったので気にしなかったがやはり変らしい。でも、まあ、結界術みたいな異能があるわけでもないし、身体的特徴でゴリ押しできるところが助かるところだよねぇ。

「昔っから暗いところでも平気で動いてたから俺にはわかんないなぁ。運動は好きだよ?」
「ふーん…そっかぁ!かなめさんお母さんが警察官なんでしょ?なにか特訓でもしてたのかと思っちゃった!」
「あれ、俺の母さんが警察官って話したことあったっけ?」
「え"、…ら、蘭ねぇちゃんがいってたよ!あはは…」

思いっきりえ"っていったなこの子。…なんか本当に小学生らしくない小学生だな、コナン君。

「特訓って面白い言い方するね。でも本当に何もしてないよ?ただの男子高生」
「…でも、」
「コナン君、夜守くん!大丈夫?!」

コナン君が更に追撃するように口を開いたが、それに被さるように毛利と鈴木がこちらに駆け寄ってきた。ナイスタイミング。探られて痛い腹はないけど、あまりにも長い質問攻めは精神的に来る。…小学生相手に精神削らされるなよって話だけどコナン君だから仕方ない、うん。

コナンくんの怪しむ視線を背中に受けながらもそれをスルーし、さっさと帰路についた。パタンと部屋の扉を閉じ、暗闇の中にさんさんと降り注ぐ月明かりを見上げ、ポケットに突っ込んでいたケータイを取り出し、何かが視界をヒラリと舞った。それを拾い上げ、思わずゲッと濁音が唇から溢れる。




"君に何かあった際は助けになろう 怪盗キッド"



「…………いつの間に入れたんだよ」

全く気づかなかった仰々しいカードを翳しひくりと口元を引きつらせた。






ーーーーーー

以上、コナン君に訝しまれ、怪盗キッドと仲良くなる回でした。もう毎回のようにうぃきさんとぴくしぶさんにお世話になりつつ…。原作は、原作は…あんなに読む気が起こらない、冊数が多すぎる。
怪盗キッドさんの口調が行方不明ですが大目に見てください。なに、キザな口調とか。わからぬ。

実在するイエローダイアモンドのネックレスを参照に書きました。


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