俺の彼女、名字名前という人はちょっとめんどくさい。
いつもすました顔をして、クールを装って居るけれどその実中身は結構ドロドロしている。

完璧なデキ女を作りあげたスタイリッシュな見た目からは余程想像がつかないそのギャップが、良いと思ってる俺も大概だ。


2月14日、夜通しダンス稽古だったが、世の中恋する人たちにとってはバレンタインデー。
ひと仕事終えて自宅へ帰ると、明らかに名前が来た形跡があった。
そもそも玄関入ってすぐ分かる。俺と同じ香水に、ジョマローンのピオニーを重ねたその匂いが、確信を持てるほど漂っていた。


バレンタインに来るとは思っていなかった。
名前はこちらが何か言わなければイベント事を特にしない。
お互いの誕生日に、ちょっと豪華な食事を奢るだけで、その他は特にない。
たまに出先で彼女に付けさせたいアクセサリーを見つけて買って渡すと、律儀に何かしらのお返しが返ってくる。

香りものだったり、美味い酒だったり。わりかし高価なピアスを渡した時は一瞬躊躇ったが、後日ジャスティンのイヤーカフが返ってきた。

お返しとは言わないし、俺も聞かない。
でもその日のファッションに合わせて、プレゼントしたものの中から選んで付けているところを見ると、多分あれは嬉しいんだろう。


だから名前がバレンタインデーという日を選んでうちに来たことは意外だったが、正直嬉しくもあった。
在宅している日だったら、結構ニヤけたと思う。
仕事でいなかったとしても、うち来たの?もっかい来なよと連絡したはずだし、なんで分かったんだという顔をしながら、名前の再来があっただろう。

でもその日はSixTONESとして気合いの入った一日で、充実感も疲労感も振り切ってしまっていた。
だから彼女のために何か行動を起こそうという、そのパワーが全くと言っていいほどなかった。


「あー…今はちょっとめんどくさいな…」


シャワーも浴びないまま、俺はソファになだれ込む。
起きたら連絡してみようかな。そう思いながら眠りについて、地から貰ったチョコレートについてLINEをしたことはすっかり頭から抜けていた。