※幕間ネタ
特異点の旅を始めてからというもの、大なり小なりのトラブルに巻き込まれたことは数知れず。おかげさまでそれなりに経験値を積んできたつもりではあったが、今回起こってしまったトラブルは度し難い程未曾有のものであった。ぐるりと周りを見渡せば敵性生物の残骸が無惨にも散らばっているのが見える。ああ、やはり、彼の強さは桁違いだ──。
それは遡ること数十分前。波琉はサーヴァントの霊基強化に必要な素材を求め、パートナーのマシュや古参のサーヴァント、そしてつい先日召喚したばかりのクー・フーリン・オルタをパーティーに組み込んで、アメリカへのレイシフトを行った。今日も滞りなくノルマを達成できるだろうと思っていたのだが──レイシフト特有の浮遊感から解放されて、いざ閉じていた瞼を静かに持ち上げると、波琉の隣にはいるはずのマシュやサーヴァント達が誰もいない。
「あ、れ?」
一体何がどうなっているのか、と波琉はすぐさまカルデアへの通信を試みる。しかし何かの影響か妨害を受けているのか、通信が繋がらない。今までになかった事態に波琉は無意識にごくりと唾を飲み込んだ。思考が停止し、茫然としたのも束の間、波琉はハッと我に返ると慌てて四方の状況を確認した。周りには建造物や集落らしきものはなく、乾いた大地が延々と広がっている。同行したサーヴァントもいない、カルデアとの通信も繋がらない、おまけに自分がどの辺りに着地したのか全く見当がつかない。そんな状況下で波琉は一人でこの広大な特異点に放り出されてしまったのだ。ただ、今のところ目が届く範囲に敵性生物の姿も気配も感じられないのは不幸中の幸いといったところか。これが敵性生物の蔓延る場所に着地していようものなら、一巻の終わりだっただろう。波琉は自分の悪運の強さにひどく感謝した。
「さて、と」
一つ、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた波琉は腕を組んで考え込む。通信が繋がるまでここで大人しく待機しておく?──もし敵性生物と遭遇してしまった場合を考えると、何処にも隠れられるようなものがない。却下。では、令呪でサーヴァントを強制的に呼び寄せる?──カルデアの令呪は通常の聖杯戦争のそれと違い、絶対命令権を持たない。故に令呪でサーヴァントを強制的にこちらへ呼び寄せることができるか定かではない。試してみようかと一瞬考えつくものの、令呪は戦闘中における大事な切り札だ。1日に一画補填されるシステムとはいえ、むやみに令呪を切ることはできない。となれば単独でここから移動して、街や集落を見つける他ないのだろう。多少のリスクが纏わりつくには変わらないが、この最悪の状況を抜け出すにはまず一刻も早くマシュや他のサーヴァント達との合流、そしてカルデアとの通信を復活させなければならない。魔術師とは言えないものの、多少の魔術──治癒と軽めのガンド程度ではあるが──なら行使できるし、体力も自信はある方だ。
「……よし」
自分の中で結論を出した波琉は気合を入れるために両手で軽く頬を叩く。そうと決まればやるしかない、と太陽の位置から割り出した北の方角に向かって歩き始めた。
適宜に休みながら歩き続けること数時間、幸運にも敵性生物とは遭遇せずにここまでやって来れた。相変わらず照りつける太陽は容赦なく波琉を襲うが、故郷のじめっとした蒸し暑さと比べれば、そこまで暑いとは思わなかった。周りには何もなく、風もなく、ただ自分の砂地を踏みしめる音しか聞こえない。依然として変わり映えのしない砂地をひたすら突き進んでいると何か物音が聞こえたような気がした。波琉は歩く速度を落とし、周りを見やりながら耳を澄ます。金属が擦れるような。──遠くから、何かが、やって来る。
ガシャンガシャンと音を立てながら闊歩するそれは特異点が修復された今もなお、時折この地を徘徊している機械化歩兵だった。波琉が機械化歩兵の姿を捉えたと同時に向こうもこちらを認識したのだろう。波琉に向かって前進してくる。幸運なことに敵は1機のみ。それならばガンドで行動不能にしてしまえば問題ない。波琉は右手で指鉄砲を作り、真正面からやって来る敵を睨みつける。ゆっくりとした足取りで機械化歩兵との距離を縮めていく。ぐっと右手に力を込めてガンドが通用する距離内になるのを今か今かと待ち構えていると、突然、機械化歩兵の姿が分裂した。
「……え?」
──いや、分裂したのではない、先頭の影に隠れていた機械化歩兵が姿を現したのだ。波琉との間合いを詰めながら横広がりになっていく機械化歩兵の数はざっと50機ほど。これではガンドで押さえつけることなど不可能だ。やられた、と波琉は歯噛みする。こんな場所では逃げも隠れもできない。彼らから放たれる無数の銃弾が身体を貫通することを想像すると、胸がキリキリと痛んだ。
「少しでも痛みを和らげてくれないかなーなんて。……ロボット相手に言っても無理か」
プログラミングされた『敵を処理する』という命令を実行するだけの彼らに慈悲などない。波琉は咄嗟に右手に刻印された令呪に触れる。この危機的状況を何としても打開したい。ここで死ぬわけにはいかない。誰か──誰でもいいから、絶体絶命の自分を助けてほしい。
「抉り穿つ塵殺の槍──!!」
低く、唸るような声が聞こえ、波琉は驚いて目を見開いた。刹那、赤い閃光が物凄い勢いで真横を通り過ぎる。それは因果を反転させる呪いの槍。全力投擲することにより攻撃範囲・威力共に倍増された必殺の槍は、さながらボーイングミサイルのように地面を抉って機械化歩兵の群れに一直線に向かっていく。波琉へと放たれた銃弾の雨を蹴散らしながら、そのままの勢いで先頭にいる1機の体の中心を貫いた。劈くような音と共に爆風が巻き起こり、周りの機械化歩兵は悉く機体をバラバラにしながら宙を舞う。風と巻き上げられた砂や小石が波琉の所まで飛んでくる。両腕で顔をガードし、薄っすらと目を開く。と、同時に再び波琉の横を何かが通り過ぎた。吹き荒ぶ塵埃の中で波琉は見た──たなびくマントを、本来の霊基ではあり得ない全身を覆う禍々しい武装を、そしてこの大地を荒々しく疾駆する戦士の姿を。
「オル、タ……?」
こんなだだっ広いアメリカで一体どうやって居場所を突き止めたのか。呆気に取られている波琉を他所に、オルタと機械化歩兵の戦闘が始まる。魔槍の被害を免れた機械化歩兵達は既に波琉からオルタへとターゲットを変更しており、容赦なく銃弾の雨を降らす。オルタは乱射される銃弾を物ともせず、敵との間合いを一気に詰めると、手元に舞い戻ってくる槍を掴み取って右・左と勢い良く薙いで残党を一掃した。その圧倒的な強さと苛烈さで容赦なく敵を壊滅させるオルタに、波琉はこの特異点で狂王≠ニして在った彼を無意識に思い出していた。
「……おい」
声をかけられてハッと波琉は意識を取り戻す。いつのまに近くに来たのだろうか、ゆるゆると顔を上げるとそこには無表情のままこちらを見つめるオルタがいた。見たところ体には目立った傷はついておらず、圧倒的なまま戦いが終わったことを告げていた。オルタの背後に一瞬だけ目線を移すと、機械化歩兵の残骸が無惨にも散らばっているのが見えた。ああ、やはり、彼の強さは桁違いだ──。波琉は自分を見下ろす無機質な赤い目をじっと見つめて、そんなことばかり考えていた。
「あ、あー、えっと……その、助けてくれて、ありがとう」
「当然のことをしたまでだ。礼を言われる筋合いはない」
「……あの、どうしてここにいるって、分かったの?」
「どうやらお前が着地した近くに俺はいたようだ。それで魔力の残滓を辿ってここまで来た」
「あ、なるほど……」
「……」
「……」
会話終了。これまでに数多の──意思疎通がなかなか図れないサーヴァントでさえも相手にしてきた百戦錬磨の波琉でも、ここまでぴしゃりと撥ねつけられるのは初めてだった。素材収集をきっかけに絆を深めようと、今回のパーティーにオルタを組み込んでみたのだが──。困ったなあ、と小さく苦笑いを浮かべていると、今までうんともすんとも言わなかった通信機からノイズ音が流れた。
《──ちゃ……!……ん!》
ノイズの中から自分を呼んでいる声を捉える。ノイズが大きくて上手く聞き取れない。
《聞こえていたら……くれ…!波琉、ちゃ──!》
「あ……ド、ドクター!ドクター聞こえます!こちら波琉!応答願います!」
波琉も同じように通信機に向かって必死に呼びかける。繋がれ!繋がれ!とありったけの願いを込めて。やがて、徐々にロマニの声が鮮明に聞こえるようになっていき──ピピッと短い音が聞こえた。それはカルデアとの通信が安定したことを知らせる音だった。
《波琉ちゃん!ああ、良かった!やっと繋がった!!》
モニターからロマニのホッとしたような表情が現れる。そして彼と同じく管制室でサポートしてくれているスタッフ達の喜びの声が大きく聞こえた。たった数時間の出来事とは言え、彼らの声にひどく心が安堵する。徐ろに込み上げてくる熱い何かを堪えて、波琉は通信機に向かって元気良く返事をした。
《波琉ちゃんの存在はこちらで逐一モニタリングをしていたけれど、こうして顔を見るまでは正直、気が気じゃなかったよ。とにかく無事で良かった……。それから先程の襲撃はクー・フーリン・オルタ、君が迎撃してくれたんだね。ありがとう、君が波琉ちゃんの元に間に合って良かった》
「……フン」
オルタの短い返事にロマニも波琉と同じように困ったような笑みを浮かべるもすぐに表情を戻して、波琉が今置かれている状況とマシュや他のサーヴァントの消息について簡単に説明した。──マシュや他のサーヴァント達も誰一人欠けることなくアメリカにレイシフトできているものの、波琉達のいる座標から随分離れた場所に着地してしまったらしい。何とか徒歩で歩ける距離であるものの、定礎復元したばかりのアメリカでは敵性生物があちらこちらを闊歩している。そんな状況を考慮すれば今日中にマシュ達と合流できるのは難しいだろう。──それがロマニの見立てだった。
《帰還方法は大きく分けて2つだ》
ロマニから提示された2つの方法。危険を伴うが、強引にレイシフトを行いただちにカルデアに帰還するか。それともオルタと共に敵性生物を倒しながらマシュと合流し、安全に帰還するか──。考えずとも答えはすでに決まっている。波琉はゆっくりと己の答えを口にした。
「わたしは、オルタと一緒にマシュ達に合流するよ」
息を呑む音がした。果たしてそれはどちらのものだったか。
《……分かった。今からルートと時間を算出するから少し待っててくれ》
一度通信が遮断され、再び辺りは静寂な空間に戻った。
「何故、後者を選んだ」
今までずっと沈黙に徹していたオルタから不意に声を掛けられ、波琉は驚いて肩を揺らす。
「え、あー、な、なんとなく?その……直感、で」
波琉の返答にオルタは気だるそうに溜め息をつく。
「……朧げな記録でしかないが、俺とお前はここで戦ったはずだ。互いに互いを殺すためにな」
「アンタがマスターか」
忘れもしないあの殺気を。
震え上がるような恐怖を。
「そんな俺をお前は怖くないのか」
狂王≠ニして在ったオルタと戦ったことはまだ記憶に新しい。しかし、今の彼は狂王≠ナはない。波琉の召喚に応じてくれたサーヴァントだ。
「怖くないよ。今までにも敵だったサーヴァントが召喚に応じてくれたことだってあるし」
「……そうかい」
何処か呆れを含んだようなオルタの呟きを最後にして、再び会話は終了した。──こうして波琉とオルタのたった2人きりでのアメリカ大陸縦断が始まった。
ぞろぞろと敵性生物がこちらにやって来る。待ち構えるオルタは体を大きく逸らすと空に向かって唸り声を上げる。スキル『精霊の狂騒』。それは大地に眠る精霊を呼び起こし、敵の戦意を喪失させる精神干渉のスキルだった。オルタの声に敵性生物の足が竦む。その隙を逃さず、オルタは敵との間合いを一瞬にして詰めると、魔槍で心臓部を一突きした。──敵性生物を薙ぎ払いながら、カルデアスタッフが算出した最短ルートにできるだけ沿って、波琉とオルタはアメリカを北上していく。オルタの指示のもと、途中で小ぶりな石や僅かに自生している木の根や葉を採取して、ミネラルと水分を補給する。
「うえっ、またジャリって言った……」
「死にたくないなら我慢しろ」
「はーい……」
小石を飴のように舐めることも木の根を齧って水分を摂取することも、もう二度と経験するまいと心に誓いながら、波琉はオルタの少し後ろをついて歩いた。──やがて、日が傾き始めて辺りは少しずつ暗くなっていく。完全に日が沈めば、そこからは獣達が大地を闊歩する時間帯だ。悔しいが、今日の移動はここまでだ。眼前には鬱蒼とした森。結局、この森を見つけるまでの道のりで街や集落といった人里を見つけることはできなかった。
「行くぞ」
《ちょっと!敵性生物がいるかも知れないだろう!?君はもうちょっと慎重に──》
「うるせぇ」
躊躇することなく、森に分け入ろうとするオルタを波琉は慌てて追いかける。森の中は木々に覆われており、微かにしか日が差し込んでこない。獣達が跋扈していそうな物々しい雰囲気があったが、意外にも自分達以外の生き物の気配を感じない。
「あちこちに木の実がなっている。できるだけ多く摘んでおけ」
「あ、うん。分かった」
食べられるものと食べられないものの判断を仰ぎながら、舗装など当然されていない道なき道を歩いていく。随分と奥まで入り込んだところで幾つかの木が倒れて出来た開けた場所に辿り着いた。オルタは即座にその倒木の上に立って、周囲を注意深く観察し始めた。
「敵は……いねぇな。今のうちに火の用意をする。お前はカルデアへ連絡でもしておけ」
倒木から軽々と飛び降りたオルタは早速倒木を槍で割いては薪を作り、周辺の落ち葉を拾い集めていく。一方の波琉はオルタの邪魔にならないように隅っこに腰を下ろして、カルデアとの通信を繋ぐ。今日1日の報告を行い、マシュ達の状況を聞き、明日に向けての段取りを決めた。カルデアとの連絡が終わると、既に薪は組み上げられており、オルタが刻んだルーンによって小さな火がつき始めたところだった。その頃にはすっかり日は落ちていて、空は濃い藍色に染まっている。徐々に大きくなっていくオレンジ色の火、程良い温かさ、そしてパチパチと枝や落ち葉の鳴る音は波琉の心をひどく安心させた。波琉はオルタの隣に移動すると、道中で拾い集めた木の実をゆっくりと咀嚼した。疲れた体にちょうどいい酸味が口の中いっぱいに広がる。オルタにも、と何粒か差し出すものの「必要ない」と撥ねつけられるばかり。渋々ながらも食事を1人寂しく取り終えたところで、火の番に徹していたオルタから「休め」と一言声を掛けられる。
「オルタは?」
「先程も言ったが、全て無意味だ。食事も睡眠もサーヴァントには必要ない」
「……うーん。じゃあ、わたしは後ろで寝るね」
「ああ、見張りはこちらで続けておく」
波琉は座り込んだままオルタの背後に回り込むと、制服の上着を脱いだ。汚れを軽く手で払い、何度か折りたたむとそれを枕がわりにして仰向けに寝転がる。眼前に広がる円形の夜空には無数の星が眩いばかりの輝きを放っていて、それはまるで人類史に刻まれた英霊達のようだと波琉は思った。星の色合いや明るさが違うように、カルデアに現界したサーヴァント達も多岐に渡っていた。歴史の教科書に載っているような誰もが知っている著名人、幼い頃に読んだ物語に登場したキャラクターやそのモデルになった人物。また、人々の想いや願いから形作られた存在まで。様々な在り方から英霊の身となった彼らの中でも特に、今の危機的状況を共にしているオルタは《聖杯》と女王メイヴの《願い》によって生み出された異質な存在だった。ケルトの大英雄、光の御子と呼ばれたクー・フーリンの逸話にはない、有り得ない側面を伴った有り得ないサーヴァント。
「本来のクー・フーリンが陽の側面なら、俺は陰だ。気にくわないならいつでも変えるなり、座に返すなりすればいい」
マスターになり始めた頃から共に戦ってくれていたランサーのクー・フーリン、キャスターのクー・フーリンと顔を合わせた後にオルタから言われた言葉がふと頭を過る。あの時は返答に困って、彼に対して何も言うことができなかったが、今ならハッキリと言える。狂王≠ニして在ったあの苛烈さと強さを直接肌で感じたからこそ、サーヴァントとして召喚に応じてくれたことが、こんな未熟な自分にその力を貸してくれることが嬉しいと。それがたとえ、陰の側面を伴っていたとしても。──それに今日一日、共に過ごしてみて分かったことがある。自らをただの使い魔や兵器として認識しているとはいえ『面倒見のいい兄貴肌』という本質が垣間見えるオルタも、やはりカルデアで待機している彼らと同じクー・フーリンなのだ。
ふふふ、と小さく笑みが零れると同時に大きな欠伸が波琉を襲う。どうやら体がとてつもなく休息を欲しているようだ。そう自覚してしまうと最後、瞼が重くなっていき、瞬きの回数が増えていく。混濁する意識の中で波琉は夜空に彩度の低い星を見つけたような気がした。すぐに見つけられる眩い光ではなく、鈍く暗い光。波琉はその星を掴み損ねないように右手をぐっと伸ばして──。そこで波琉の意識はぷっつりと切れた。
◇
背後からどさりと何かが落ちる物音が聞こえて、オルタは即座に振り返った。無機質な瞳が捉えたのは自分を召喚せしめた人類最後のマスターの寝姿。なんと無防備で可笑しな寝相なのか。むにゃむにゃと動く口元はあどけない乳飲み子のよう。
「あまり無防備な姿を見せられると、思わず抉りたくなるだろう?」
物騒なことを呟いてみるも、彼女は安心しきった表情で眠りについている。かつて聖杯を賭けて命のやり取りをした相手に対し、霊基を限界まで引き上げるだけでなく、無防備な姿まで晒すことができるのだろうか。もっと警戒するべきなのでは?──豪胆な性格をしているのかそれとも単に愚かなだけなのか、彼女の考えていることは全く理解ができない。理解できないが、あまりにも善性に寄ったその在り方はきっと彼女の根幹に深く根付いていて、簡単には変えられないのだろうとオルタは思った。
「わたしは、オルタと一緒にマシュ達と合流するよ」
彼女の力強い言葉を思い出して、オルタは深く息を吐き出す。
「全く、とんだマスターの召喚に応じてしまったもんだ」
だがまあ、純粋に己の力を求められているのであれば──と、オルタは魔術師然としない少女に向かって指先一つでルーン魔術を刻みつける。せめて、少しでも長く穏やかな眠りにつけるようにと。
title by エナメル
20180822 - 星や夜にまつわる話
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