cradle


5000hit→独歩は寝袋の中 続き(ゆく様)


出勤早々私の視界に映るのは 自社オフィスの床。
会社にお泊まりコースの観音坂先輩に躓き、転倒したのだ。
というか先輩なんでこんな入口に転がってるの。100%踏むじゃん。どんなトラップですが本当に。

「というかー!観音坂せんぱーい、デスク下とかーなんならソファーとかあるじゃないですか!そっちで寝てくださいよ!」
「ごめん・・・なさい」

しゅん、っと捨てられた子犬のように落ち込む先輩を見てなんだか申し訳なくなった。
恐らくだけど 節電モードの夜中の社内で涼を求めてここまで来たんだろう。廊下結構涼しいし。

「うー、んと、あの、先輩。怒ったわけじゃないんです。ほら、朝ご飯まだですよね?カフェオレと鮭マヨおにぎりあげます。」

私のお昼ご飯だけど。

「苗字さん・・・ありがとう。こんな俺のためにおにぎりをくれるなんて、女神としか言いようがない。とりあえずシャワー浴びてこようかな」

ふあっ、と欠伸をして先輩が寝袋から這い出てきた。そして少しフラフラとしながらシャワールームに行く姿を静かに私は見守っていた。
脱ぎたてほやほやの寝袋がそのままになっていたので回収し仕舞っといてあげようと触れると暖かい。先輩の抜け殻マジで暖かい。それからちょっと抱きしめるようにしながらスーッと、匂いを嗅ぐ。やばいな、いい匂いするじゃん・・・。えぇー、めっちゃええ香りするで先輩。なんなんだろ、フレグランスとかアロマとかそんなんじゃなくて、ムラムラする。多分フェロモン的なやつだ。だって仕方ないじゃないですか、私観音坂先輩のこと好きなんだもん。

「おっぱい揉んでほしかったなー」

と、呟いた瞬間ぽさっというなにか柔らかいものが落ちる音。反射的に振り向くとそこにはまだ髪の毛が乾ききってない観音坂先輩の姿が。烏の行水にも程があるでしょ。5分も経った?!
お互いに5秒くらい見つめ合い、徐々に血が顔に集まる。ぎこちない動きで落ちたタオルを拾う観音坂先輩に混乱した私はそのまま彼に飛びかかった。

「あああああああのあのあのあのあの観音坂先輩」」
「なななななんでしょうか苗字さん!」
「せっ!!!せっ!!!」
「せっ!?」
「責任を取っておっぱい揉んでください!!!」
「ちょっ!待てって!今はヤバイってそろそろ他の人来るから!!!」
「うわぁあぁあん生で!!生で触っていいので!!!」
「良くねぇ!!!本当駄目だって!」

それでもブラウスのボタンを外して左胸だけ露出させようとしたところで廊下から足音がして我に帰る。慌てて服装を正し自分のデスクに座る。
先輩も同じくデスクに行き、私があげたおにぎりを 食べ始めていた。
程なくして穏健派と名高い室長がゆるゆるとした空気を纏いながら「おや、君たち早いねぇ 」と登場したのだった。

「室長おはようございます」

先輩は何事も無かったかのように室長に挨拶を。案外肝が据わっている。私はと言うとまだパニくっててレモンティーを手元と口からびっちゃびちゃに零しながら「おっ、おはやうございます」と挨拶をした。2人からめちゃくちゃ心配された。レモンティー噎せたし。今日はもう一刻も早く退社したい。・・・うぅ、バレた。私の気持ちが観音坂先輩にバレた。1年目のときからお世話になってる先輩、恋愛感情を抱いてるなんてバレてしまったらきっとやりにくいだろうなぁ・・・。転職しよっかな。

魂が半分抜けた状態で仕事を済ませ、帰りながら転職サイトをぽちぽちと眺めていた。電車に乗り込み、扉が閉まる間際ヒュッと目の前になにかがすごい勢いで横切ったので顔を上げてみると息を切らした観音坂先輩がいた。

「先輩?!」
「名前ちゃん!」

・・・名前、ちゃん。

「ゥッごめん、ちょっと待って息整ってからでいい?ハアっ・・・ゲホッ、三十路手前の全力疾走結構堪える。ハアッ、」

荒い息の先輩の背中をさすりながら落ち着かせる。1分くらい。その間も私の心臓は高鳴ったままで。
やっぱりこの人のこと好きだななんて思う。

「名前ちゃん、責任とらせてくれないか」
「・・・ん?」
「今朝の責任」
「ここで?!」
電車内で揉むのはちょっとやばいですよ!?痴漢ですよ?!
「いや、もうちょっと後でだけど。早ければ半年くらい後とか」
「どんだけ心の準備に時間かかってるんですかそれ!?」
「いや、だって結婚するにはいろいろ準備がいるだろ」
「け?!」
「あっ!名前ちゃん、俺と結婚してください」
「観音坂先輩いろいろすっ飛ばしすぎっす」

ずびしっとお戯れ程度にチョップをかます。「あいたっ」と頭を撫でる先輩はなんだか可愛い。
お返しとばかりにふにふにと私の頬に触れる先輩の顔から察するに、きっとずっと前からお互い同じ気持ちだったのだろう。

その夜私はいつもの駅の2駅手前で降りた。知らないベッドに身体を沈めて知らない天井を見上げて。
でもこの匂いは知っているし、この優しさも知ってある。だから安心できた。

「うわ、柔らかっ・・・」
いつもキーボードを叩いているかボールペンを握っているかしているその手は私の胸に触れている。

「せーんぱい」
「なに?」
「たまには、よく寝てくださいね」

先輩は、今私の腕の中。
離してなんかやんないんですからね。

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ゆく様この度はリクエストありがとうございます、
ついったもフォローありがとうございます
迷子の子猫にLove me do!!(完全にこの部分はノリです)
与良の独歩さんあっさり塩ラーメンなのは この先不幸のどん底に突き落としたいから今はまだそこで絶望なんてさせないぞとということです。
というのは嘘なんですけど、好きな子程不幸にしたいのでそのうち迂闊に不幸にしちゃうお話も出てくるかもしれません。それでも宜しければこれからもどうぞよろしくお願いしたいです!この度はありがとうございました!