追わないでね
※5000hit 病弱夢主を見舞う一郎(ひよこ様)
※奇病夢主
トン、トン、トン と軽快な音を立てて階段を降りるそれを待ち構える。
「元気そうだな名前」
「おや、一郎。元気だよ〜」
片手は手摺を持ったまま身体をゆらゆらと揺らし手を振る彼女の周りだけ花畑が出来上がっている。
これは比喩ではなくて、本当に出来上がっているのだ。
「元気だったらこんなとこにはいないはずだけどな」
「本当にねぇ」
「病室帰るぞ」
「えー・・・」
「えーじゃねぇぞマジで。」
やーだーなぁ〜と言いながら先程とは違い、子供のように身体を揺らす名前をひょいっと小脇に抱えて階段を上って行く。
やだなとは言いつつ基本的には無抵抗なこいつの足がついていなければ、花畑はできない。足を離したそばから花畑は枯れ、塵になり風に乗り消える。
「また痩せたな」
「ほんとー?嬉しい」
「褒めてねぇよ。ちゃんと飯食ってんのか」
「うん、食べてはいるよ」
「じゃあ消費される量が多すぎんだろ。だからあんま動くなって言ってんのにお前。」
階段を登りきり左に曲がるとすぐにある部屋がこいつの病室。ベッドに転がし布団をかける。それから寂雷先生に貸し出されたPHSで先生の番号にかけた。
「先生、見つけましたよ。今病室に戻しときました。」
ありがとう、すぐいくね。と一言伝えられ切れ、その数分後に点滴を携えて先生が来た。
「駄目じゃないか名前さん。心配したよ」
「すぐ帰ってくるつもりだったんだよー、」
「私が君を見失ってから2時間、これは『すぐ』とは言いません。」
手際よく名前に点滴を繋げて溜息を吐く先生にこちらが申し訳なくなる。
こいつの所為でどれだけ頭を悩ませているのか想像もつかないが。この神宮寺寂雷であっても手をこまねいているのだからこいつは規格外の問題児なのだ。
先生からちらっと目配せを受け頷き、病室の外に2人で出る。
「・・・それで、どうだったんだい?」
「えぇ。確かに居ましたよ。ギリギリでしたけどね。」
「ギリギリ、というと?」
「俺が会いに行った2日後に亡くなりました」
「・・・そうか」
これは呪いだよ。
1週間前会いに行った青年はそう言った。
彼は名前と同じく足元に物質を発生させる奇病に罹患していた。名前は植物であるが、彼は鉱石だった。
H県の山奥に独りでいた彼にいろいろ尋ねてみたが発症した経緯も治療法も分からないと。ただ、やはり共通するのは物質を発生させるのに体力、生命力を持ってかれることと、感情によって発生するものが違うと。
例えば、先程俺と会った時に名前が生やしていたのは小振りな向日葵だった。先生に説教されている時は苔が発生しており軽く冷んやりしていた。
そして、もう一つは、短命。その青年は24歳だった。
これまで世界で18人発見されているがいずれも短命だった。平均25歳、最高でも32歳。
発生する物質に生命力を持ってかれるのだからそりゃ短命になるわけだ。
そう、つまり、このままいけば名前も同じだ。
先生だっていろんな論文を読んだり治療法を試したりだとかしているがどれも先人と同じく、効果はなかった。
一通り今回の青年から聞いた話と纏めた資料を先生に手渡し、俺は病室に戻った。
ベッドの上でパタパタと足を遊ばせる名前の横に座りワシワシと頭を撫でた。
「うんうん〜、分かるなぁ」
「なにがだ?」
「二郎くんと三郎ちゃんが一郎のコレ好きな理由、こうやってよしよしされると安心するよねぇ」
「ハハ、そうかそうか」
よいしょ、と正座しこちらを見つめる名前になんだか知らないが心臓が五月蝿い。
「ありがとね〜?」
「・・・え?」
「私の為に色々調べてくれてるみたいー?」
「ん、あ、あぁ。先生に頼まれたこともあるが、幼馴染みだからな。」
「ふっふ、一郎のそういうところ変わってないねぇ。カッコいいなぁ。」
いつもと違う、長い付き合いでも一度も見たことない表情を浮かべる名前がそこに居て悟ってしまった。
少し勢いをつけてベッドから降り、素足で床に着地する名前の足元には白い花弁の月下美人の花が咲いた。
「追わないねで私のこと。辛くなるだけだから。」
ーーその言葉に縛られたまま、今もこの世界にいる。
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ひよこ様この度はリクありがとうございました!
山田の兄ちゃん初めて書かせていただいたのでなかやか掴めてないですが 山田の兄ちゃんはやっぱり安心感とか包容力があっていいなッて思います。